千本桜 明菜

ステータス(評価点数:Lv.700)

  • キャラクター名:千本桜 明菜
  • よみ:せんぼんざくら あきな
  • 性別:女性
  • 体型:普通
  • 学年:高等部3年
  • 部活:剣道部
  • 委員:風紀委員+スポーツ委員
  • 武器:日本刀
  • 初期ステータス
    • 攻撃力: 21 防御力:0 体力:4 精神:5 FS(醜きものへの理解):0
    • 移動力:2
  • アビリティ
    • 『武芸』

特殊能力『刀妖血界 ~桜舞う頃~』(発動率:100%)

効果: 遠距離通常攻撃
効果付属:凄惨な死
範囲+対象:周囲2マス
対象付属: なし
時間:一瞬
時間付属:なし
消費制約:攻撃4消費
非消費制約1:精神攻撃
非消費制約2:
非消費制約3:

能力原理
醜き心の者を美しき花へと華える神速の居合抜き。
この技を使うとき、明菜の全身は張りつめた一本の桜の木となり、周囲には血色の花びらが舞い散る。
この一片(ひとひら)の花弁達はそれぞれが心悪しき者、醜き者、汚れた者を感知する血界であり、一たび触れればたちまち剣華(けんか)と化した明菜の餌となる。
一陣の風と共に獲物の心の臓と脳天を目がけて二連の刃の枝が伸び、捕われた獲物は夥しい量の紅い樹液を撒き散らし、其もまた一本の桜と化す。中央に立つ一本の妖木を愛でるように……。

キャラクター説明

着物姿、黒髪、ポニーテールの和風美人な女の子。
凛々しく、意志の強さを持ち、更には周囲の人間の相談毎にも快く乗ってくれる優しさや面倒見の良さも兼ね備えているため、後輩女子を中心に学内でも高い人気を持つ。
剣道部に所属しているが、剣術以外にも日本の古流武術全般に通じていることから、スポーツ委員に所属して主に武道系部活動の代表となっているほか、風紀委員も兼任して学内の取り締まりも積極的に行っている。

一見すると文武両道の完璧な存在に見える彼女だが、その内心には醜いもの、美を汚すものへの強い忌避感がある。(しかし表面的には決してそれを見せないようにしている)
それは醜いものに心を囚われ少女時代の彼女を凌辱しようとした父親を斬り殺した時のトラウマが起因となっている。(この時に能力が発現した)
武術の師であり憧れであった父親の変貌が、彼女の心の中へ強く美しくならねばならないという己を律する精神を根ざした。
しかし一方で斬り殺した者が美しく無惨に散り逝く姿に恍惚を覚える感情が自らの中に芽生えていることを少しずつ自覚しており、これは醜いのか、それとも美しいのかという疑念を抱くようになっている。

エピソード

妃芽薗学園、剣道場の中央。
静謐が支配し、月の光のみが照らす夜。
木造りの床や壁から独特の匂いが漂う空気の中、一人の少女が凛とした姿勢でただずんでいた。
流麗な黒髪は首の後ろで固く結われ、鮮やかで美しい桜色の着物がその身を包んでいる。
腰には一本の長刀が差されており、少女の手はその柄を強く握っている。
俗に言う『居合斬り』の構え。
少女の瞼は固く閉ざされている。が、その心には既に彼女が斬るべき獲物の姿がはっきりと捉えられていた。

「死ッヒャア……」

少女が構えている位置からどれ程の距離か。
剣道場の外。学園の茂みの中に一つの影があった。
糸のように細い目を持ち、口からは奇声とも嬌声ともつかない呻き声をあげて徘徊している。
その影は茂みを掻き分け、道場へと歩みを進める。
目的は道場に居るであろう少女の血と肉体である。
影の普段の姿は最近妃芽薗学園に赴任してきた男性教員であった。しかしその本性は学園の女生徒達を浚い、凌辱し、惨殺する習性を持った人外の化物。
『狂怪』イトメ属キョウシ科に属する邪妖の類であった。

糸目が目を見開き、光指す道場へと一気に駆け寄ろうとする。
だが、彼の眼には写っていなかった。その道場の周辺が既にある結界に覆われていたことに。
感性の鋭い者であれば、その道場を覆う無数の花びらに気づいた事だろう。その花びらの一つ一つが時折、刃のように鋭く光る様が視えた事だろう。
糸目が桜吹雪の中へ足を踏み入れる。気づく由も無いが、その全身には既に桜の花びらが纏わりついていた。


既に彼は『死』に触れていた。


少女の眼が開かれ、その長刀が火花を散らす勢いで鋭く抜かれる。
どのような原理か。刀の先から発せられた風圧は外にいる糸目に届く筈はない。だが。


「儀ッヒャアアアァァーーーーーー!」


糸目の男の胸板は横薙ぎにザクロの様に切り開かれ、巨大な墳血を起こした。
悲鳴とも奇声ともつかない絶叫が響き渡る。しかしその叫びも一瞬のこと。
少女は続けざまに刀を両手で握り直し、頭上高く振り上げると、まるで標的が目の前にいるかのようにその脳天に振り下ろした。
糸目の体は更に頭頂から股間まで大きな裂傷によって開かれ、夜空に向かって噴水のように紅い血が巻き上がった。

少女は流れるような動作で刀を鞘に納め、道場の裏戸を開けて外に出る。
月明かりだけが照らす夜空の中、少女の周りには桜吹雪が舞っていた。
鮮やかな花道が作られる中、少女は歩みを進める。その中心に飾られた真っ紅なオブジェへと向かって。

「やはり、実に醜い……」

少女は近くの花びらに向かって人差し指を伸ばす。その花弁は他とは違い、黒く染まっていた。
黒い花びらは先ほど糸目が触れたものである。そのドス黒さは糸目の男の心の汚なさの象徴と言えた。

「何故このような心の色に染まってしまうのか……全く理解できませんわ」

悪人を、狂怪を、邪なる者をこれまでどれ程斬り伏せてきたのであろうか。
少女、『千本桜明菜』は、こうして醜く染まった桜の花びらを見る度、一つの事を思い出す。

それは彼女の父が死んだ日の事。何よりも気高く、美しく、悪を憎む心を持った明菜の父。明菜にとってはずっと憧れであり、あのようになりたいとその背を追いかけてきた相手。
しかしいつの頃からだったろうか。その父が変わっていったのは。仕事を終え、彼女の知らない何処かで悪を斬る度に父の様子がおかしくなっていったのは。
しかしそれでも父の心は強い。決して折れることは無い。明菜はそう信じていた。
だがある日、全ては崩壊した。明菜の父は豹変し、訳の分からない言葉を並べ立てながら彼女へと襲い掛かった。
純真だった明菜の心はその日、黒く染められ、散らされかけた。だが、その黒に反する強い意思が明菜の心の中にあった。
その日、明菜は一本の桜の木を自分の目の前に植えた。強く、高く、美しい桜の木を。

ふう、と一息つき、彼女は血溜まりの前に立つ。
口が開かれ、顔の皮膚が裂かれ、例えようもない形相で天を見上げるその姿は誰が見ても死体であることが分かる。
だが、明菜はその前で再び構え、チン、と親指を刀の鍔にかけた。

「化ッヒャッアアアァーーーーーーーーーー!!」

突如、糸目の首が起き上がり、明菜へ向けてその両腕を伸ばす。
だが、明菜は素早く刀を抜き放ち、勢い良くその姿を逆さ斬りにした。

ブシャアアア――――――

三度目の血飛沫が上がり、糸目は自らが斬られた事にも気づかないのか、よろよろと歩きながらその血を最後の一滴まで出し尽くしたかのように倒れた。
糸目から沸き上がった最後の血は明菜の体にかかり、その顔が半分赤く染まった。
明菜は意に介すことも無く、倒れた糸目の死体へと歩みよる。

「まったく……散り際ぐらい、美しくあろうと思わないのですか」

明菜は憐れんだ目で男を見下ろすとその身を持ち上げ、近くの大木へと引きずっていった。
そしてそのまま自らの刀で男を突き刺し、大木の幹の上でその身を固定させた。

「明日には学園の方が片付けるでしょうが……」

木に張り付けられた男は既に全身が紅く染まり、身体には何本もの裂傷が入って原型をうかがい知ることはできない。
これを見て、人であったと思うものがどれだけいるのであろうか。

「せめて最後の形ぐらいは綺麗でなければ、ね」

明菜は顔に付いた血をその手で拭った。
真っ赤な手の平を見つめながら、その顔に浮かんだ笑みはとても優しげであった。



最終更新:2015年08月03日 21:03