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ステータス(評価点数:Lv.700)
特殊能力なし必殺技『エナジーフィスト』 (消費MP:5)
効 果 :
必殺技原理
腕を引いた状態で手を広げるとエネルギー弾を生成でき、それを溜めて大きくしたものを掌を突き出し放つ。溜めの動作がいるので、防御はできない。
キャラクター説明
「私の拳は惑星(ほし)の心をも掴む!……といいなぁ」
突如現れた謎の転校生で、転校生同士の争いに巻き込まれた一人。
桜色の髪にヘッドホンを被り、黒地のだぼっとしたシャツに淡黄色のハーフパンツを着用。 右腕の大きなガントレットから、楽しそうにエネルギー弾を放つ。
その正体は、妃芽薗学園中等部の内気な生徒である安藤小夜(あんどう さよ)。
小夜は同じ「中等・高等交流部」に所属する先輩に片思いをしていた。 憧れの先輩に釣り合うようになり振り向いて貰う為には、今の冴えない自分から脱却して凄い存在になることが必要だと考えた。そうしてそれをきっかけとして魔人能力が開花した。
目覚めた能力は願い通り凄い存在になる能力であった。
小夜にとっての凄い存在とは、身体能力が飛び抜けていてどんな困難にも屈しない、ネットゲームの中の自分のキャラクター「仔狐クリス」。 故に能力によって変身した姿は仔狐クリスの姿そのままであり、変身後の小夜は仔狐クリスを自称する。
仔狐クリスとして先輩の前に現れ親交を深めることが出来たはいいが、いざ自身が小夜であると告白する直前に、転校生同士の戦いに巻き込まれてしまった。
もう一度先輩に会う為、そして今度こそ自身の正体を打ち明ける為、小夜は負けられないと意気込むのであった。
変身:
仔狐クリスの姿には任意で変身が可能。 ゲームのログイン画面を脳内に思い浮かべて、パスワードを口にすることで変身できる。パスワードは「anzi-chan」。先輩と知り合ったきっかけのマスコットキャラクターに由来する。 変身解除は脳内でログアウトボタンを押すイメージを思い浮かべることで可能。
戦闘スタイル:
立ち止まった状態で掌を撃ちたい方向に向けることでエネルギー弾を放てる。 エネルギー弾は、数秒間隔で放つことが可能。 エネルギー弾を主体とする戦い方なので、近接格闘はあまり得意ではない。 エピソード
【仔狐クリスエピソード】
◇◇◇
丑三つ時と言われるくらいの時刻。
妃芽薗学園高等部の校舎屋上で。
私――仔狐クリス/安藤小夜(あんどう さよ)は至福の時間を過ごしていた。
憧れの先輩、土星(どせい)先輩と密着して、同じヘッドホンで音楽を聞いてるのだ。
ドキドキしすぎて、聴いている音楽は全然耳に入ってこない。
「~~♪」
思わずといった感じに歌を口ずさむ先輩。
その横顔をそっと私は盗み見る。
あぁ、このまま時が止まってしまえばいいのに――なんて月並みなことさえ思ってしまう。
――『前から気になってたんだけど、そのヘッドホンで音楽聴いたりするの?』
先輩のそんな台詞から、この状況は生まれた。
元々仔狐クリスのアバターにただのファッションとして着用させたヘッドホンだったが、まさかこんな形で役に立つとは思ってなかった。 私は自分のセンスに自信など微塵もなかったが、この時ばかりは自分のセンスに感謝したい。
アバター、と突拍子もない単語が出てきて困惑する人もいるかもしれない。
少し、説明を加えてみようと思う。 現在の私は、桜色の髪に赤い瞳、片腕にはガントレットと凡そ常人離れした見た目をしている。 それもそのはず。 この姿は、オンラインゲームの私の自キャラ「仔狐クリス」の姿なのだ。
私――安藤小夜が土星先輩に恋い慕い始めてから、私は先輩と釣り合う為にもっと凄い存在にならなくてはいけないと漠然と考えるようになった。
そうした思いが天に届いたのか、魔人能力に覚醒し、仔狐クリスと同じ姿に変身出来るようになった。 仔狐クリスに変身している間は変身前より優れた身体能力を発揮できたりする。
私がこの仔狐クリスとしての姿で土星先輩と仲を深めることができたのは、先輩をとある危機から救ったことに端を発している――――
◇◇◇
土星先輩は、夜の散歩癖があった。
深夜になるとふらっと寮をでて、近くの公園や丘など見晴らしの良い場所に行っては空を見上げてしばらく佇むのだ。
私が最初に先輩のそうした行動を知ったのは、部室で他の先輩が土星先輩に夜の散歩について注意しているのを見かけたからだ。
最近の妃芽薗学園では不穏な噂もよく聞く。 周りの人が夜に出歩く土星先輩を心配するのは至極当然だった。そして、彼女に想いを寄せている私としてはその話を知ってからその一日、気が気でなかった。
その日の夜、私は何か仔狐クリスに変身し、寮の出口に程近い茂みに隠れていた。先輩が本当に夜出かけるのか確かめる為、そしてもしそうだったならば危ないのでやめさせる為だった。
仔狐クリスに変身したのは、何か危ないことがあっても対応できるようにする為だ。 しばらくじっとしていると、本当に先輩が出てきた。
思わず身を乗り出して話しかけようと思ったが、ここである問題に気づく。
先輩は、仔狐クリスとしての私を知らない。 同じ部活に所属する友達に注意されてもやめずに夜に出かけたのだ。見知らぬ人から注意されても止めるはずなどないだろう。 そして、安藤小夜としての姿で声を掛けるのも躊躇われた。 私が夜に外に出ている理由が話せないからだ。まさか先輩を見張っていたなどとは口が裂けても言えない。
そうして逡巡している内に、土星先輩はどんどん前へと進んでいく。
仕方がないので、せめて危ない事になっても助けられるように、こっそりついて行くことにした。
先輩は見晴らしの良い場所へ着くと、天を見上げしばらく佇んだ。
その表情はどこか遠くへ思いを馳せているようで、悲しそうにも見えた。 そういえば、太陽系の惑星が皆いなくなって寂しくなったから地球に来たのだと以前先輩は言っていた。 いなくなった惑星達のことを考えているのだろうか。 私は離れた場所から見ていることしかできなくて。 その無力感が只々辛かった。
先輩の夜の散歩はほぼ毎晩続いた。私も毎晩寮の出口を見張り、土星先輩が出かける度にこっそりついて行った。
尾行を始めてしばらくの間は、危険なことは何も起きなかった。
これなら見守る必要はないかもしれない――そんなことを考え始めた矢先、事件は起きた。
◇◇◇
それは満月の光が妙に眩しい夜だった。
いつもの様に先輩は空を見上げている。
そして同じく私もいつもの様に、仔狐クリスの姿で先輩の様子を木陰から見守っていた。
ふと、パキッと音がした。
地面に転がっていた木の枝が不自然に折れたのだ。 距離は離れていたが、仔狐クリスに変身することで視力などの感覚器官の機能が向上している為、見逃すことはなかった。
不吉な予感がした。
その瞬間、先輩の後方に白い人影が現れる。
「――危ないっ!」
私は、迷わず走りだした。
その人影が何か刀の様なものを振り上げていたからだ。
仔狐クリスとしての身体能力を全力で振り絞って走った。
――白いフードの女性にまつわる不穏な話は此処数年、妃芽薗で噂になっているという。
「わっ、きゃあっ」
私は先輩の元にたどり着くと、先輩を抱えて白い人影から距離を取った。
白いフードの女性は、空振った赤い刀の様な武器を携え、こちらに歩み進んで来た。
「コレ以上、近づくな……!」
右腕のガントレットから、牽制の意味を込めてエネルギー弾を放つ。
エネルギー弾は、相手の武器に弾かれてしまったが、白いフードを被った女性は歩みを止めた。
こちらを見据える女性と私の目線がかち合う。
「……」
無言の時が続いたが、すぅーっと周りの空気に溶けるように、女性は消えた。
私はしばらく構えを解かずに、周囲を警戒していたが、特にそれ以降人の気配がすることはなかった。
「あの……」
構えを解いたところで先輩に話しかけられた。
そこで気づく。 さて、仔狐クリスの姿で初めて土星先輩の前に姿を表した訳だが、どう説明したら良いのだろう……?
「あのっ、危ない所を助けて頂きありがとうございました!」
90度を越える勢いで腰を折って、礼をする先輩。
……確かに危険な場面を救ったことになるのだろう。 だが、実感としてはあまり大したことをした気はしないので、こうも大仰に礼を言われるとなんだか戸惑ってしまう。
「いや、そんな……頭を上げてください。それより怪我とかないですか?」
「はい、おかげで怪我はしてないです。その、良かったらお名前とか教えていただけないでしょうか?」 「仔狐クリス、です」 「クリスさん、ですね。お礼に何かしたいのですが、何かご希望とかあるでしょうか?」
お礼……うーん悩みどころだ。
目下、先輩にしてほしいことと言えば。
「では、こんな遅い時間に出歩くのをやめてもらえませんか? 女性が一人で深夜に出歩くのはとても危険です」
「それは……ごめんなさい。できません」 「どうしても……?」 「はい。私は家族の様な存在をほぼ全て失いました。こうして夜空を見上げないと、その寂しさを埋めることはできそうにないんです」
成る程。やはり先輩は空を見上げている間、他の惑星のことを考えていたらしい。
私に置き換えて考えてみる。 寮生活なので家族と離れて生活しているが、家族のことを考えてホームシックになることは時々ある。 家族が生きている私でさえこうなのだ。 家族同然の他の惑星を失った土星先輩の寂しさは如何程だろうか。その寂しさを埋める行為を、強く否定することなどできない。
だけど、このまま一人で夜の散歩を続けさせるのも心配で仕方ない。
「では、夜出かける時は私と共に行動してくれないでしょうか? そうすれば、危ない時はすぐに助けられますから」
「わかりました。私としても大変心強いです!」
良かった。
これで毎晩こそこそと隠れる必要がなくなる。
「あと、もう一つだけお願いがあるんですけど、いいでしょうか?」
「はい。内容によりますけど、なんでしょうか?」
さっきから、ずっとむず痒いと思っていたことがあるのだ。
「その……タメ語で話してもらえないでしょうか? あと名前も呼び捨てでお願いします」
「……? わかりまし……わかった。理由は分からないけど、クリスがそういうなら」
再び胸をなで下ろす。
やはり安藤小夜としての私に対しての口調と同じ口調で話してもらえる方がなんとなく気が楽だ。
こうして私達は毎晩一緒に過ごすことになったのだ。
◇◇◇
私達は曲を聴き終わり、雑談に移った。
先輩は、クラスであったこと、部活であったことなどを話してくれる。 最近は仔狐クリスとしてのスペックを上げる為の修行であまり部活にでてないので、部活であった出来事を話してくれるのは大変有難い。 なんて思ってたら。
「うちの部活に小夜って子がいるんだけどね。私に懐いてくれてとても可愛いんだけど、最近あまり部活に顔を出してくれないんだー。ちょっと寂しいなぁ……」
「それは……残念ですね」
先輩は少し悲しそうな表情をしている。
思わず言葉に詰まる。
今この場で、私が安藤小夜であることを打ち明けてしまいたい気持ちに駆られる。
私の正体を知ったらどういう反応をするだろう……? 不安が鎌首をもたげ始める。 それでも今、私が小夜であることと部活に出れない理由を話せば、先輩の悲しそうな表情を和らげることができるのではないだろうか。 そう思って、私は打ち明けようとして。
「あの、実は――」
その瞬間だった。
「……ッ!?」
何かに全身が引っ張られる気配。
あまりに強い衝撃に、思わず目を瞑る。
「……あれ、先輩?」
目を開けると、そこにはさっき居た場所と変わらない風景。
隣に居た先輩だけがいつの間にかいなくなっていた。
――いや、待て。
本当に自分は移動してないのか……?
立ち上がり、周囲の様子を見回す。 目に見える異変はない。けれど、何かがおかしい。 世界がどこかズレているような感じ。そして、何かとてつもなく血生臭いものが待ち受けてる気配。
そして、警戒心から思わず構えをとった私のガントレットの先に、ゆらりと光が浮かんだ。
――ここから、死闘の続く5日間が始まった。
私は、あの時の続きを言うために、生き残らければならない――――
【END】
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