【背景】

専制政治を敷く銀河帝国と、民主共和制を唱える自由惑星同盟、および商業を中心としたフェザーン自治領の3つの勢力に分かれていた。
銀河帝国と自由惑星同盟を結ぶ道は広大なフェザーン回廊、近年発見され互いの首都との最短距離であるニューゲート回廊、そして辺境といってよいほど首都から離れたイゼルローン回廊だけである。
3回廊をコントロールしたフェザーンがその経済力と政治工作により勢力を拡張する中、帝国-同盟間では慢性的な戦争状態が150年にわたって続いていた。
自由惑星同盟は大規模艦隊、実に全軍の半数である8個師団をまたしても100年前に発見された新航路ニューゲート回廊へと向かわせていた。
しかし、そこは「専守の戦場」と呼ばれ、両軍が自領に設置した機雷によって侵攻軍が有利になった事は未だかつて無かったのであった。
自軍の機雷を撤去している間に敵に索敵され集中砲火を浴びせられるのだ。結局、再度膨大な機雷を設置しなおして撤退するが常である。
そして辺境の地イゼルローン回廊では10艦隊つまり1個師団による会戦が始まろうとしていた。

フェザーン自治領のとある酒場にて
A「イゼルローンでドンパチが始まりそうって知ってるか?」
B「ああ、あんな辺境に1個師団が都合よく集結するってことは・・・」
A「ま、フェザーンが糸を引いたかとんでもない偶然か、だな」
B「しかし、ニューゲートもどうせルビンスキー執政官が仕掛けたならなぜこちらでも?」
A「おそらくはモモジ副執政官の手引きだろうよ」
B「なるほど、ルビンスキーの動きを利用してさらに商品を売ろうってかい」
A「それだけじゃない、集まった連中は少将とはいえ有能な連中ばかりだ」
B「つまりは情報を与えて恩も売るのか、先行投資ってやつだな」
A「ああ、奴らが辺境に飛ばされているのは中心が腐っているからだからな」
B「普通のエリートはルビンスキーの息がかかっている・・・自分の手駒を増やすために・・・」
A「俺の読みはそうだ、ただ真実は闇だ」
B「どこまで筋書きがあるのやら・・・」

少し時間は遡って自由惑星同盟主星にて
補佐官「ヨブトリューニヒト国防委員長殿!モモジ閣下から入電です!
イゼルローン回廊へ向けて帝国が精鋭1個師団程度の侵攻を確認したのと情報が入りました。
大規模作戦の最中を狙った電撃作戦ではなかろうかと思われます。
イゼルローン要塞司令官として救援を要請をしてきております。
いかがなさいましょう?」
ヨブトリューニヒト「ふむ、奴の情報に誤りはあるまい。救援要請という事は、万が一違った場合はイゼルローン要塞を差し出すという事か・・・」
補佐官「情報が真実ならば国防の武勲を。ガセであってもイゼルローン要塞を占領できれば十分かと」
ヨブトリューニヒト「それで大規模侵攻には絶対に反対するように奴は勧めていたわけか・・・予備遠征予定の少将まで指定して・・・」
補佐官「では、ニューゲート大規模侵攻の追加招集に備えて遠征の準備をさせていた少将を派遣致しますか?」
ヨブトリューニヒト「そうだな、あの大見得を切ったフォーク准将によれば追加艦隊は不必要との事だったからな」

帝国領ニューゲート防衛艦隊にて
ブラウンシュヴァイク公「このモモジの情報が確かであれば我らの領土が危ういではないか」
リッテンハイム侯「イゼルローンを同盟に突破されれば、我らは主力をここに集結させておりますので・・・」
ブラウンシュヴァイク公「あのラインハルト旗下に防衛させるしかあるまい」
リッテンハイム侯「折角、あの武勲狙いの若造がこの勝ち戦に参戦しておらぬというのに・・・」
ブラウンシュヴァイク公「ラインハルト旗下が負けようとも足止め程度にはなるだろう、ここは儂が戻ろう」
リッテンハイム侯「ブラウンシュヴァイク公の分までここで武勲を上げておきますゆえ」
ブラウンシュヴァイク公「うむ、他の諸侯に後れを取る出ないぞ」

イゼルローン要塞(フェザーン領)にて
補佐官「副執政官殿、賊には警備隊のいなくなった惑星情報を本当に渡してよろしいので?」
モモジ「ああ、構わんよ。頃よい所でイゼルローンからは撤退して貰わねばならぬからな」
補佐官「しかし、万一にでも惑星が賊の手に落ちれば我々の立場がマズくなるのでは?」
モモジ「そうはならぬように駐留4艦隊を2つに分けて送ったのだよ」
補佐官「そうなんですが、それならば1艦隊程度の賊のために1個師団が退却するような事にはならないのでは?」
モモジ「賊は3艦隊がそれぞれ別の場所に向かっていると伝えるのさ」
補佐官「え?つまりは駐留2艦隊づつが賊に!?」
モモジ「いやいや、我が駐留艦隊は賊を発見し、後をつけてバラバラになった所で1艦隊だけを殲滅するのだよ」
補佐官「マッチポンプ・・・ですね・・・」
モモジ「善意のセーフティネットだよ。彼らが間に合えば少将どもに武勲を立てて貰うさ」
補佐官「両軍は3方向へ軍を割らねばならない。しかもすでに惑星が占領されていれば3艦隊でも十分とは言い難いですね」
モモジ「そういうことだ。イゼルローン要塞と自領惑星とを天秤に賭ければおのずと答えは出るだろう?」
補佐官「今まで目をかけてきた賊どもをこうも簡単に切り捨てるとは・・・」
モモジ「今日のための先行投資だと思えば安いのものさ」
補佐官「もしも片方の陣営がここへ来なかった場合にも対処されていたのですね」
モモジ「これで安心してくれたかね?」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2015年11月14日 01:19