本屋文の日常


本をたくさん積んだマイクロバスが孤児院目指して道路を走行する。
魔人司書である本屋文が運営する移動図書館だ。
ちなみに移動図書館の本は文の私物から選ばれたものである。

「なんだ?」

目的の孤児院が見えてきたのだが、様子がおかしい。

似つかわしくないヤクザリムジンが孤児院に止められている。
疑問に思った文が様子を確かめるために文も車を止めると、孤児院の入口の方に歩いていく。
そして入口から様子を伺う。

そこに見えるのは角刈りやパンチパーマの男たち。
南無三!地上げヤクザだ!

「そろそろ売る気になったか」
組長がドスを利かした声でシスターにいった。
「何度言われてもお断りするといったはずです」
「いいのか子供達がどうなっても。うちの若い衆は血の気が多いやつが多いからな
 何をするかわからんぞ」
「ヒヒヒヒ」
「やめてください」
「だったら、早くこの契約書にサインするんだな」

シスターに売買契約を強要する親分。
このままでは孤児院の平和が破壊されてしまう!
その時であった!

文の蹴りが一番入口に近い位置にたっていたヤクザの顔面に叩き込まれていた!
錐揉み回転しながら吹っ飛んでいくヤクザ。

「なんだてめえ!!」
「どこから出てきやがった!」
「関係ないやつが横から手を出してくるんじゃねぇぞ!」
「子供を傷つけるやつは嫌いだ」
目の前のヤクザたちを心底軽蔑するように文が吐き捨てるように言った。
「貴様らのようなクズに名乗る名前もない」

「ザッケンナコラー!」
パンチパーマヤクザがナイフを取り出すと文の方へ突進する。
文はナイフを繰り出すパンチパーマヤクザの腕を掴むとそのまま頭から投げ落とす。
投げられたパンチパーマヤクザはピクピクと痙攣している。

「ズッゾコラ……グワーッ!」
拳銃を取り出そうとした角刈りヤクザの手に何かが突き刺さっている。これは!
文の図書館の図書貸出カードではないか!
一流の魔人司書にかかればなんの変哲もない貸出カードも凶器と変わるのだ!

怯んだ角刈りヤクザの腹に掌底!そのまま後方の壁に叩きつけられる!
みるみるうちにヤクザたちが倒されていく。

「ひ、ひぃ~~~~~!」
部下たちがやられた取り乱した親分が、孤児院の入口からヤクザリムジンに向かって逃走する。
親分がリムジンにたどり着くと懐から鍵を取り出す。

「ここまでくれば安心だな」
「一人だけ逃げられるとでも思ってるのか?」
一息ついた親分の背後に文が立っていた。取り乱す親分。

「ま、待て!孤児院からは手を引く!金から必要なら出す!!だ、だからやめろ!」
「それが遺言か?」
「ち、ちがっ!」
文が親分の顔面を掴む。
CLAAAASH!親分の頭部がヤクザリムジンのフロントガラスに叩きつけられる!

「迷宮時計の争いのウォーミングアップにもならんな」
再び孤児院の方に歩き出す文。後には破壊されたリムジンと痙攣する親分が残されていた。

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「怖かったよーおねえちゃん」
後始末を終え、文が再び孤児院に入ると少女が彼女の足に縋り付いてきた。
あのような恐怖にさらされたのだ、無理もない。
文は子供の頭を撫でる。

「ありがとうございます。この度はご迷惑を」
「子供たちのためです。特に迷惑などありません」

本屋文は子供が好きだ。
子供はとても可愛い。悪戯をされたりもするが、そういうものも含めて子供の魅力だと思っている。
金にもならないような移動図書館をしているのも子供たちと触れ合えるというのが大きい。

強すぎる愛情から親しい人間にはロリコンだのショタコンだのと言われるが、別に彼女自身はそれを全く気にしてない。
むしろ、それのどこが悪いのか。
純粋無垢な子供を愛するのは人として自然な感情であろう。

「では図書館の準備がありますので」
そう告げると文はマイクロバスに向かった。

最終更新:2014年10月07日 10:40