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プロローグ

わたしはだれ

疑問は泡のように次々と浮かび上がり はじけて消える

わたしはだれ?

「起動実験を最終フェーズに移行。器と【迷宮時計】との接続を確認」

身体から幾重にも伸びる配線と 肺まで満たす培養液

「異次元空間への干渉波安定しています」「素晴らしい成果です、イライザ博士」

わたしにとって世界とは強化プラスチックの向こう側

「やはり、人間の脳を経由するアクセスは【迷宮時計】の防御機構を刺激せずに済む。
これこそ【迷宮時計】の完全制御へと至る唯一の道筋。わたくしの考えは間違いではなかった」

『支配せよ』
わたしのからだの真ん中で 疼き続けるひとつの本能
『迷宮時計を支配せよ』
それがわたしのすべきことなの?

「検体の様子はどう」「脳波正常値。眠ったままです」

こわいゆめをみるの
どこからきたのかわからなくて どこへいけばいいのかわからないの
ずっと迷ってばかりで 居場所がないの

「臨界点越えます」「情報体の処理を副脳へ回せ」
「これでわたくしの仮説は実証される。【迷宮時計】の無限の可能性」

ああ ひかりが見える
その向こう側が わたしのほんとうの居場所?
手を伸ばす
ひかりに触れる

「干渉波がフェーズフィアを形成!」「異次元空間からのフィードバック来ます!」

世界がざわめきだす
強化プラスチックの向こう側の世界が

「情報体流入!」「緩衝器、一番二番が焼き切れましたっ」

あつい
思わず手を引く

「すごい。すごいわ。まるで太陽に直接触れるかのような。これを自在に引き出せるとするなら、人類は無限のエネルギー炉を手に入れたに等しい…」

こんどは慎重に
慎重に

『破壊せよ』
囁き声が
『迷宮時計を破壊せよ』

なに、なんなの?

「そこで何をしているイライザ」
「オクスタム?!」

世界に突然の闖入者 乱雑ないくつもの靴音

「オクスタムやめて。彼らに銃を降ろさせて」
「それは聞けない相談だな。さぁ、お前たちも手を止めろ。実験は中止だ」
「違うの、これを見て。実験は成功したの。【迷宮時計】の支配は成ったのよ!」
「政府に無許可の起動実験でか。わきまえろイライザ」

『この迷路から抜け出したくはないか』
脳裏の囁やき
『おまえには翅がある。自由にどこへでもいける翅が』

「イライザ、非常に残念だ。きみには逮捕状が出ている。政府への反逆罪で、だ」
「どうしてよっ。この偉業の意味がわからないあなたではないでしょう」
「政府は、【迷宮時計】を支配するきみを、第二の災厄であると見做した」
「そんな、だって【迷宮時計】の支配は彼らが…」
「情勢が変わって残念だ。さぁ、おとなしくしなさい。
きみの身柄の扱いについては僕からも進言しよう」

『破壊せよ』
『迷宮時計を破壊せよ』
『そのひかりの向こう側へ』
『おまえは飛んでいける』

「【迷宮時計】への干渉波急上昇!!」
「なんですって?!」
「情報体が逆流…こちら側から向こう側へ、漏れだしていきます!」
「実験中止! 主電源を全面カットしなさい」

わたしはだれなの

「ダメです! 器が内部に貯留されたエネルギーで独立起動を!」
「副脳とのリンクを解除なさいっ」
「ダメです。外部からの操作を受け付けません!」
「オクスタム? これはあなたがやったの?」
「【迷宮時計】の完全破壊には、外部からの干渉を防ぐ防衛装置が必要だった」

『きみの欲するこたえがその向こう側にある』

「情報体の流出止まりませんっ。このままでは時空間転移現象が…
検体が何処かに消え去ってしまいます!」

「そんなっ…、メリー? メリー! やめなさい。お願い、聞いて。止まって。止まるのよ!」
「無駄だイライザ。彼女には封印命令が出ている」
「そんな、オクスタム。何を言っているの。あの子は…メリーは、わたくしの娘が」
「そして僕の娘でもある。こうするしかないんだ。こうでもしないと彼女を守れない」

『支配せよ』
『破壊せよ』

わたしはだれなの
父さま 母さま
ひかりのむこうへ行けば それがわかるのだろうか