プロローグ

「よし…やっぱこいつで間違い無さそうだな…」

ある人里離れた山の中腹、一人の若い男が目の前にある石造りの洞窟と
手元にある幾つかの文書を交互に眺めながらそう呟く。

「ふーん、この遺跡が1600年くらい前にこの地方を治めていたケンオ・リョクカ=シャネの墓ねえ」

彼のすぐ傍で浮遊する小さな人に良く似た姿の女性が確認するようにそう言った。

若者の名は希保志遊世、自称トレジャーハンターであり、
当然ながらこの遺跡へとやってきたのはトレジャーハントが目的である。
そして彼の傍らで浮遊する小さな女性は重力妖精・イオ、遊世の頼りになる相棒だ。

「そしてそいつは自分の墓に財産や秘宝を一緒に収めるように遺言を遺した。
今回はそれを狙うって訳だ。よし、じゃあ探検開始とすっか!」

遊世は気合を入れるように大声を出すとイオを引きつれ遺跡の内部へと歩を進めた
やがてに通路を塞ぐ扉に突き当たると荷物の文書を確認したのち、扉に手をつく

「フフフ……匂うぜ…大発見とヤベえお宝の匂いがプンプンするぜ」
「遊世、アンタそれ探検に行くと毎回言ってるじゃん」

イオは呆れた顔つきで、ため息をつきながら相棒に小言を並べる

「ここへ来る直前なんて散々『最近の探検はイマイチな結果ばっかり』って愚痴を零してたのはアンタ自身でしょ?」
「う、だから…まあ、今回は冒険者の勘が働いてるっていうか…」
「もう!その勘がアテにならないって言ってんのよ。
まあ探検がいい結果に終わるかなるかなんて実際にやってみないと分からない事だけどさ」
「うん、まあそういう事だからさ、兎に角お宝があると信じて頑張ろうぜ!」

イオが再びため息をつき、諦めた表情をするのを見届けると
遊世は腰を落とし、扉にかけた手に力を込める、すると扉は地面を擦る重い音を立てながら少しずつ開いていく

扉の先が僅かに見え始めたとき、遊世たちの背後で何か巨大な物が落下したような
大きな鈍い音が鳴り響き、それと同時に辺りが暗闇に包まれた。

「ふふん、閉じ込められたって訳か。並の探検家ならうろたえる所だが俺にとってこの程度障害ですらないぜ!」

遊世が素早く腰にぶら下げた携帯照明器具の電源を入れ
背負った鞄にくくり付けたヘッドライト付きのヘルメットを取り
帽子を脱ぎ代わりにそれを被り、ライトのスイッチを入れる。

「そんなちっさな事でカッコつけるのやめてよ、
そもそも中が暗いのなんて分かりきってるんだから最初っからそのヘルメットかぶれば良いのに」
「この帽子は俺のトレードマークだから出来る事なら常に被っていたいの!」
「探検物映画の影響で被ってるだけのクセに」
「まあ、良いじゃないかそこんとこはさ」

遊世は扉を開けきるとイオの方を向いて喋りながら扉の先へと進む

「ちょ、ちょっと遊世危ない!前!!」
「え…?うわっと!」

前を向いた遊世は思わず後ずさる、扉から先1mもしないところで足場は無くなり
そこから先は途方も無く深く大きな闇が広がっていたのだ。

「ははあ、さっきの暗闇でうろたえたマヌケはこの穴に真っ逆さまになるっと寸法か」
「まあマヌケでも普通の冒険者は予め自分で明かりくらい点けておくと思うけどね」
「しっかし、まあ…」

遊世はゆっくり辺りを見回す

「どうしたもんかな…ええと左右の幅はこっから大体5mずつの合わせて10mくらいかな
でもって天井は…ええと、これは……」
「アタシが見るから遊世は明かりをお願い」

遊世がヘッドライトのボリュームを上げ頭上を照らすと、イオが天井へと浮遊し高さを確認する。
その後戻ってきたイオからその高さを確認すると遊世はイオに向こう岸を偵察するよう指示し、イオの周囲を照らした。

「……ええっと天井が30mくらい、無駄にデカイ!で穴の大きさが20mくらい、ジャンプしても全く届きそうにないな。
それと向こう岸にはさっきよりも大きな扉が一つとその両脇に変な動物みたいな模様が彫られた柱…か」
「柱は天井近くまであって他には特に何もないね」
「そうか成る程…うーん、何か仕掛けとかないもんかな…こっち側には僅かに足場があるだけだが…
床とかノックして調べてみるか?いやしかしそれにしてもこの遺跡は如何にも古代の遺跡でございますって感じで
イマイチ面白みとかワクワク感が無いよな、これなら前に銃を手に入れた歯車の…」
「遊世、話を脱線させないでよ!っていうかアタシ向こうへ行く方法思い付いたよ!」

イオが遊世の話を遮り、両手を上下にぶんぶんと振う

「え、マジ?何?早いな!そこは俺が持ち前のトレジャーハンターのヒラメキでズバっと決めたかったんだが」
「くだらない事言ってないで聞いてよ!向こうの柱を根元からハッパかけて私が引き寄せればさ…」
「架け橋になるって事だな!本当は俺も分かってたさ、トレジャーハンターのヒラメキでな!」
「…あー、まあそういう事でイイけどさ、兎に角それでいってみよう」

イオは遊世に呆れながらも再び向こう岸へと移動し、遊世はその間に
オイルライターとダイナマイトを取り出しイオが柱の根元に到着するのを待つ

「おーい!こっちはスタンバイオッケーだよー!!」
「よっしゃ!行くぞ!」

柱の根元で待機したイオが大声を上げ両手を振るのを確認すると
遊世はダイナマイトの導火線に火を点け思い切り向こう岸へと投擲する。

ファイアインザホー!!

ダイナマイトは導火線にバチバチと火花を立てながら空中を舞い
穴の上を半分ほど過ぎたところで急に軌道を変え、イオの元へと飛んでいく。
イオの重力妖精としての能力によるものだ!

そしてイオは能力を解除し、柱の傍にダイナマイトが落下したのを確認すると
今度は上空へと浮遊する

KABOOOOM!!

ダイナマイトが炸裂!!
柱の下部が殆ど吹き飛び、それより上は徐々に傾いていく
そしてその柱の上部先端に何か……イオだ!彼女が能力によって柱を引き寄せているのだ!

柱はイオの動きに合わせるようにゆっくりと傾きやがて
勢いは無いが確かな重量感のある轟音を鳴らし遊世のいる足場へと架かった。

「よしナイスだイオ!ハイファイブしてやれないのが残念で仕方ないぜ!」

遊世は倒れた柱によじ登ると向こう岸へと向けて駆け出しイオもそれに着いて行く。
やがて扉の前に到着するとイオが遊世を呼び止めた。

「さっきみたい事もあるかもしれないし、慎重にね!」
「ああ、オウケイオウケイ!」

遊世は扉に力を込めゆっくりと開け、中へと明かりを差し込み中の様子を伺おうとする。

その時!!

「っうわ!」

遊世の前方、暗闇の向こうから何かが遊世の顔面目掛けて飛んできた!
遊世は身体を後ろへと傾けつつ腕を眼前でクロスさせその飛来物を防ごうとする。

「……っ!!……あれ…?…上に逸れ…」
「上に逸らしたの!アタシがね」

そう、イオは飛来物に対して咄嗟に能力を使用することにより
軌道を上に逸らして遊世への直撃を防いだのだ!

「まったく俺の小さな相棒は本当に優秀だな!」
「褒めるのは後でいいから、今は先に前のヤツに注意してよ!」
「ああ、そうだな!」

遊世は扉を蹴り開け、鞭を構える。
扉の先が明かりに照らされる、その先には白いローブを着た何者かが立っていた。

「む、お前は一体何者だ!さっきなんか飛ばしてきたのもお前の仕業だな!」
「ここはわが主が眠る墓…墓を荒らす不届き物よ…立ち去れ」
「悪いが俺はトレジャーハンターなんでね!宝の為にはそう簡単に立ち去る訳にはいかないんだよ!」
「ここに貴様にやる宝はない…立ち去らないというならば…消えてもらう…!」

白いローブを着た守護者はそう言うと右腕を振り上げ勢い良く前方へと突き出した。
遊世は横へと飛び込む。すると鈍い音が鳴り響き、先ほどまで遊世が居た場所には
石の塊が地面にめり込んでいる!守護者は右腕から高速で石つぶてを放ったのだ!!

「やる気満々みたいだな、ならこっちもやらせて貰うぜ!」
「この距離だとアタシはさっきの攻撃を防げないかもしれない、気をつけて遊世!」

遊世はすばやく身を起こして守護者目掛けて鞭を振るう!
鞭が鋭い音を辺りに響かせながら守護者を打つ!
遊世は更にもう一度、二度、三度と鞭を振い守護者を打ち付ける!!

守護者の着ているローブは鞭打ちによりボロボロになりつつあるが
守護者自身は殆どダメージを受けた様子が無く、今度は左腕を振り上げ始めた!

「何度もやらせねえよ!」

遊世は守護者の左腕目掛けて鞭を振う!守護者は腕を打たれ
ローブの袖から先ほど射出した物と同じ石を落としてしまう。

遊世は守護者のボディに対して更なる鞭攻撃!
やがて鞭のダメージによって守護者の着ているローブが破け散る!
不思議な事にローブは破けると同時にまるで砂のように風化して散らばった。

ローブに覆われていた守護者の身体が曝け出される。
そこにあったのは土くれによって作られた人型のゴーレムだ!

「こんな所でいつまでも墓を守るなんてまともなヤツじゃないとは思ってたけどそんな姿とはね!」
「左手の手首から先が無い、たぶん身体を硬質化させて飛ばしてたんだ!
あと鞭の痕がしっかり残ってる、ダメージを完全に無効化してる訳じゃないみたい!」
「成る程、それは助かるぜ」

そう言いながら遊世は素早く鞭をホルダーに収めるとジャケットに手を伸ばし
素早く二本の投げナイフを連続投擲!
投げナイフは守護者の首にざっくりと突き刺さる。

「よし、こんだけ深く突き刺さればいけるか!」

遊世は腰からぶら下げた大量の歯車が付いた銃型のオルゴール、『クロックワークブランダーバス』を
右手で抜き撃鉄を起こし左腕に乗せ狙いを定め発射する!発射された弾丸は先に刺さった二本の投げナイフの中間に命中!

「こいつでダメ押しだ!」

遊世は素早く銃をホルスターに仕舞い、再び鞭に持ち替え
守護者の頭部に目掛けて鞭を振るう!

鋭い音が鳴り響き、鞭の衝撃がトドメとなり守護者の首がもげる!

「よっしゃ!やったぜ!」
「ちょっと油断しないで!まだ動くみたいだよ!」

守護者の身体は両腕を広げ、遊世に向かって突進を開始する、しかし動きが鈍い。
遊世はそれを直前で回避すると背中を思いっきり蹴り飛ばした!

守護者の身体は重い音を立て、土埃を撒き散らしながら倒れた。

「おい、イオ。これそっちの方やれるか?」
「やってみる!」
「や、やめろお……」

イオは後方の穴へと向かいながら能力を使い倒れた守護者の身体を引っ張る。
遊世の銃型のオルゴールから流れる音楽と守護者の頭部の嘆き声が響く中
守護者の身体は引きずられ、奈落へと落ちていった。

「さあ早速先へと進もうぜ!まあ守護者が居るんだからもうこの先直ぐにお宝はあるんじゃないかな!」
「っていうかそこに扉みたいなのがあるんだけど」
「あ、本当だ。ふんふん?なんだか模様の付いた動かせる石版が埋め込んであるな、何かの仕掛けみたいだ」
「どうして遺跡とかを作るヤツってこんな謎解き要素を作るんだろうね?」

遊世は事前に集めたこの地方に伝わる伝承について書かれた文書の類を広げ
イオと共に扉の開け方について考える。
傍で守護者の頭部が「やめろ」「引き返せ」等と言ってるが無視だ。

「……よし、これでどうだ!」

遊世が正しい形に石版を動かすと轟音を上げながら扉がせりあがる。
遊世とイオは息を飲み、その先をじっと見つめる

「…あ……こ、これは…!?」

二人は扉の先の様子を見て目を丸くした。

「これって…」
「壁?」

扉の先にあったのはただの一面の土壁であった。

「あ、見て!そこの壁と扉があった場所の隙間に小さな箱があるよ!」
「どれどれ?お、中には布の束…何かの文書みたいだな、なになに?
『黒龍17年 白羊の月 1の日、本日をわが主の墓の建設が開始された記念すべき日としてここに記す
今後墓の建設の進行と共にここに記録を付ける事とする。初日の作業は滞りなく進行した、
このまま計画通りに進めば来年の磨羯の月には我が主が望んだ通りに完成するだろう。』
ここの建設記録か…コイツを読んでけばここのお宝の事も分かるかな」

遊世は布に書かれた文字を読み続ける

「『黒龍17年 白羊の月 25の日、現在入り口の基礎が―――』
……なんだかしばらくは似たような内容が続くなあ」
「あ、でもこのあたりから何かアクシデントが発生するみたいだよ」

イオは遊世が読んでいる物よりも少し先の日付を指差す。

『黒龍17年 巨蟹の月 6の日、建設中の第一の大部屋で落盤が発生。作業員が2人が死亡、軽傷者多数。
あまりに大きな空洞を作った為に発生したと思われる。技師に、より安全な建築方法を考えさせなければ』

『黒龍17年 巨蟹の月 18の日、またも第一の大部屋で落盤が発生。軽傷者多数。
技師曰く、天井の高さが問題だ、こんなに高い必要はないのでは?とのことだが我が主の遺言には逆らえない』

『黒龍17年 人馬の月 2の日、落盤事故―――』
『人馬の月 25の日、落盤対策完了するも転落事故発生―――』
『宝瓶の月 20の日、干ばつとそれに伴う飢饉の発生により、停滞―――』

「……なんだか、工事が難航してるっぽい事ばっか書かれてるんだけど」
「ちょっと飛ばして後ろの方を先に読んでみない?」

『黒龍19年 金宮の月、12の日、ついに第一の大部屋が完成したが遺産の殆どを使い果たしてしまった。
このままでは我が主の秘宝を売って技師や作業員への賃金を捻出しなければいけない』

『処女の月、20の日、もう駄目だ。賃金未払いと
劣悪な作業環境により全ての技師と作業員達がここから逃げ出した。このままでは我が主の墓は完成しない』


『黒龍19年 処女の月、21の日、もうここに作業員達が戻ってくる事は無いだろう
だがしかし私は何もかもを諦めた訳ではない。私にはやり遂げないといけない仕事が残っている
私の力を使ってこの墓を永遠に守り抜くのだ、私にはその力がある。魔人の力が。』

「これで終わりか……」

「……………。」
「……………。」

文書を読み終えた遊世はゆっくりと守護者の頭部の方を振り向く

「……えっと…もしかしてこれ書いたのってあんた?」

守護者の頭部は遊世をにらみつけながら答える

「そうだ…私は千年以上前から独りでここを守り続けている…」
「もしかして、ここには一切お宝とかは残ってない……?」
「だから…貴様にやる宝はないと言っただろう…」

遊世とイオは顔を見合わせるとしばし沈黙したのち、守護者の頭部を見た

「ええっと…、なんていうかごめん」
「貴様ら…謝って済むと思っているのか…!」
「まあ今回の件はなんていうかまあ痛み分け?っていうかまあそんな感じって事で」
「おい…ふざけるな…!貴様はただでは返さんぞ!」

守護者の頭部が僅かずつ周囲の石を砕き吸収し、首から下を生成しようとする。

「うおっと、とっととずらかるぞ!!」


―――数日後、日本 希望崎学園

「あーあ、やっぱ収穫ナシの冒険の後の登校はやる気でねえなあ」
「っていうか前から思ってたけど遊世ってなんでこんな冒険続けながらも高校通ってんの」
「いやホラ、やっぱ高校くらい卒業しとかないとさ?なんか格好つかないっしょ?」
「21歳で高校通ってて格好つくもクソもないと思うけどね、っていうか本当に卒業できんの?」

そうして遊世が駄弁りながらイオと教室へとたどり着くと
周囲の一部の生徒がひそひそ話しをしているのが聞こえる。

「希保志が久しぶりに来てるな」「相変わらずあの格好なのね」「あの連れてる妖精って可愛いよな…」

遊世はため息を吐き小声でイオに話しかける。

「まったくどいつもこいつも人が登校したくらいでザワザワしやがって、
だいたい格好なんてこの学校じゃ制服無視した生徒なんてそう珍しくねえじゃねえか」
「珍しくないって言っても普通に制服着た生徒よりは目立つと思うけどね」

「なあ、そういえば最近あいつが好きそうな噂があるよな」「ああ、欠片の時計とかなんとかってヤツか」
「何でも勝ち続けると時空を超えたり望みをかなえれるとかな」

周囲の生徒達が希望崎で流行の迷宮時計の噂を話すのを聞くと
遊世は不機嫌そうにイオにだけ聞こえる声で呟く

「ったく何も分かってねえな、俺のトレジャーハントってのは
ロマンと夢と秘宝を求めて秘境に冒険するのが良いんだよ、こんな安いオカルト都市伝説なんかと一緒にして欲しくないね」
「まあ、アタシも良くわかんないけどね、遊世のロマンは」

そしてつつがなく授業を終え。放課後

「ああ、それにしても次の探検はどうすっかな」
「流石にそろそろなんか大きい当たりが欲しいよね………あれ?そこになんか…」

イオが校舎の隅に何かを見つけそちらへと飛んで行く

「おいおいどうした?」
「遊世、ねえこれこれ、なんだか光ってるヤツなんだけど」
「光ってる?何が?」

遊世はイオが指差す方向を見るが、イオの言う光るものをみつけられずにしかめっ面をする。

「あっもしかして…」

イオは地面から何かを取るような動作をする

「やっぱり…どう?遊世これ見える?」
「どうって…ただの石ころに見えるけど…ってお前、手に直接もってないか!?」
「そう!アタシが直接持てるって事はこれは本来は物質世界以外の物か、或いは多次元的な干渉を可能な…って!石が!」

イオがその石についての興奮気味に説明してる最中、石が突如イオの手からすり抜け
遊世が首からぶら下げた懐中時計へと入り込み、光を放ち始めた!

「うわっ…これもしかして…」
「噂の欠片の時計ってヤツ…?」
「あ、なんだコレ…?すごい頭になんか色んな情報が入ってきた!うわ、気持ち悪!
ああ、成る程ね…、俺はこれから別の時間軸で他の時計の所有者と戦わなければいけないらしい
でもって勝ち続けることができればなんか望みを叶えられるとか何とか……」

遊世は頭に入ってきた時計迷宮に関する情報をイオに説明すると
大きくため息を吐いた。

「へえ、ちょっと大変そうだけど望みを叶えて貰えるのは凄いじゃない、なんでそんな嫌そうな顔してんのよ」
「いやだって、大変な思いをしてロマンを求めたここ数回の冒険が全部イマイチな結果に終わったのにさ
こんなあっけなく簡単かつ偶然に自分が馬鹿にした都市伝説に巻き込まれるなんて…何か腑に落ちないからさ…」
「まあ、まあ、これに勝って望みを叶えて貰えればもっと色んな冒険とかもできるだろうし頑張ろうよ
それにこれだって一種の異世界への冒険みたいなものじゃない!」

イオは精一杯明るく振舞い落ち込む遊世を励まそうとする

「うーん、まあそっか!一度時計所有者になると死ぬか、戦いで負けるかしないと所有権を放棄できないみたいだしな
うんうん、やるっきゃないよな!」

直ぐに元気を取り戻した遊世を見て、イオは少し口元を緩ませる。
こういうときに直ぐに明るくなるのは遊世の取り柄だな、とイオは思った。

「しかし、この国だと色々と武器の調達にどうしても限度があるのが厄介だな
戦いとなればできればダイナマイトとか手榴弾みたいな爆発物も用意したいところが、一介の高校生には厳しいぜ」
「ようし、それじゃまあ戦いが始まるまでに色々と準備しよっか!」

遊世とイオはお互い目を合わせ、遠足の準備をする子供のように楽しそうに笑った。

最終更新:2014年10月06日 02:45