野試合SS・雪蔵その2


ここは基準世界によく似た世界、もしくは基準世界そのもの。
1人の女が自室の布団から飛び起きた。
「ウワアアアアァッ!あれ?ここは…」
骨を連想させる白い肌と髪を持った女性は法廷派探偵、風月藤原京。
『気が付いたか、藤原京。』
彼女の着る寝巻きからする声は人工探偵、柊時計草の物である。藤原京は基本的に時計草の髪から作られた服しか着ない。柄だって形だって時計草の能力、《オリカミ》で自由に変えられるので不自由は無い。寧ろ他の服を着る必要を感じない。
「時計草…!!私は、シシキリを倒して、いや、殺されて…」
『ああ、そうだ、その筈なのだ。私にもその記憶がある。その後にミスターチャンプに救助された記憶もな。だが、その直後からの記憶が乱れている。』
「一体、何が起こっているのですか?」
『恐らくだが、それの所為だろうな。』
藤原京の腕が自らの意思とは別に動き、枕元にある目覚まし時計を手に取った。彼女にはその時計が何なのか、探偵の直感で理解した。
「迷宮時計!?しかしこれはシシキリと勝負した時に貴方と一体化していたのではないですか。時計草、貴方はこれをどう思います?」
『そうだな。迷宮時計から解放されたから身体が軽い気がする。この現象は私の予想だと敗者復活戦だな。時逆順からのプレゼントだ。ほれ見ろ。』
目覚まし時計の文字盤に《サンプル 太郎》と名が刻まれ、24時間後に近未来都市で闘いが始まる事を告げていた。
「サンプル太郎!彼はあらゆる平行世界で負けを重ね、もう二度とこの闘いには参加できないとニャントロをハッキングした時のデータにはあった筈。時計草の言う通りかもしれませんね。」
一応言い添えておくがハッキングしたのは彼女達ではない。彼女達と繋がりのあるインドア派探偵に報酬を出して基準世界に存在する迷宮時計所有者の平行世界の内容を含む試合結果、その中でも優勝候補をピックアップしたデータを手にしただけだ。
基準世界のサンプル太郎、平行世界のサンプル太郎はその実力を完全に発揮すること無く、次々と敗北していた。運命などといった合理性に欠けた物を基本的に信じない探偵であっても、この死亡率と刻訪の調査中に同時公開された巡真実の死亡率には運命を信じざるを得なかった。

『結果を残していなくても相手が強者であることに変わりは無い。油断するなよ。』
「ええ、今度こそ、時逆順を殺すという目的を果たしましょう。そして全てを終わらせるのです。」

探偵達にはこれから勝ち抜く為の絶対的な力を手にするアイデアを得ていた。ヒントは皮肉にもシシキリとの闘いにあったのだ。

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「ごめんね…お姉ちゃんは…イヤアアアァッ!あれ?」
飴びいどろは寝室で寝ていた。横では小さな弟と妹が寝息を立てて熟睡している。今の声で起きた者は居なかったようだ。
音を立てないようにしてゆっくりと辺りを見回すと、見覚えの無い時計が目に入った。文字盤には《サンプル 太郎》の名前と少しずつ減っていく数字、《地底湖》という文字が書かれていた。
びいどろは既視感を覚え、その正体に思い至ると同時に疑問を抱く。自分が門司秀次に倒された記憶と門司秀次を倒した記憶が混濁していた。ただ、自分が敗れた記憶の方が現実感を伴っていた。
敗北の悔しさと、喪失感が胸を満たす。
この迷宮時計がどうして現れたのかはどうでも良い。
次こそは、手離さない。気持ち良さそうに寝転がる弟妹の額に口付けをすると、彼女は立ち上がり、寝室を出た。

次に闘うのが誰であろうと、門司秀次のような相手であっても倒す。殺したって良い。必ず、勝つ。

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「………!!………え?」
リュネット・アンジュドローは寝床から立ち上がり、自分の身体を見下ろした。
彼女は廃糖蜜ラトンに負けた後、踊りの練習を続け、9年と11カ月の時間を費やした筈だった。
その期間での成長は特に身体的特徴に著しく現れてたというのに、その特徴が消え去っている。
彼女の現在の身体は、廃糖蜜ラトンと闘った前後と然程変わらなかった。では、彼女は聖アリマンヌ教会に戻ることが出来たのか?シスターセシルと再会できたのか。その質問に対する答えは残酷だった。アリマンヌ教会の存在は基準世界と間違えるようなそっくりな世界に存在しながら、基準世界には存在しなかった。ここは基準世界、もしくはそれに酷似した平行世界であり、そこにリュネットの知るシスターセシルは存在しなかったのだ。彼女が今寝ているのは踊りの練習に明け暮れている期間利用していたストリートであった。
彼女は不思議と9年の月日が夢の中の出来事だとは思えなかった。身体が幼女に戻っていても、その間で身につけた踊りを再現出来るような気がしたのだ。
ステップを踏んでみる。少し縺れる。しかし、少しずつ練習の感覚が蘇る。
リュネットがふと自らの腕を見ると、見覚えの無い小さな腕時計が巻いてあった。軽くて気付かなかったようだ。
文字盤に《サンプル 太郎》、場所を記してあるような文字、時間らしい記述が並んでいた。
「迷宮時計?」
自分が闘わなくてもラトンが助けてくれるかもしれない。
だが、闘いを続ければラトンの敵も減るし、それどころか今度こそ自力で優勝出来るかもしれない。

(リュネットの知らない所で既に廃糖蜜ラトンは敗北しているが、彼女を救うために探偵、古沢糸子が動いている。リュネットが再び闘いに身を投じて敵が減るのは、古沢糸子にとっても変わらなかった為、間違ってはいない。)

「セシル、危ないことしてごめん。それでも私はあなたの側にいたい。また会うことが出来たら何でも言うこと聞くから。怒られても構わないから。今は闘うの。」

リュネット・アンジュドローの身体は幼かった。
だが9年間の間に育った心は彼女をより強力な戦士として戦場へ送り込むことになるのだった。

ーーーーー

こうして3人は迷宮時計を掛けた戦いへ復帰し、勝利を積み重ね、現在の雪蔵にて邂逅することになるのだった。

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疎らな凸凹や傾斜がある真っ白な床と低い天井、冷たい空気の立ち込める閉塞した空間。この試合に使われる雪蔵は体育館一つほどの大きさがあった。
しかし試合時間になったのに人影か一つも見えない。これはどうしたことか。
と、壁際でダンプカーが正面衝突するような音が放たれると同時に、空に紅い二つの点が現れた。いや、これは探偵、風月 藤原京の眼である。どうやら本来の肌の白さと、柊時計草の作り出した白い服で地形に溶け込んでいたようだ。白い服は非常に暖かそうなジャンバーと鼻から下を覆うネックウォーマの形をしていた。

少し遅れて、もう2つの赤い点が現れる。今度の点は水色の縁に囲まれていた。闘う踊り子、リュネット、アンジュドローだ。彼女は桜並木での闘いの時と同じく、身体を白い花で覆っていた。しかし中は嘗てのノースリーブ戦闘スーツである。寒くないのか?愚問だ。ズワイガニは0~3℃の水中で平然と生活している。リュネットの持つ蟹因子の中には当然ズワイガニも含まれている。雪蔵内の寒さ程度では彼女の活動に何ら影響を及ぼす事は出来ないのだ。

「リュネット・アンジュドローさんですね」
風月藤原京は先程の衝突を物とせずに言った。あの衝突は海鳥の視力で先に相手を見つけたリュネットの奇襲であった。
しかし探偵に傷一つ付けることが出来ず、彼女は驚いた。踊りの練習をしている内に蟹因子と海鳥因子は人間の身体に馴染み、以前とは比較できない力を手に入れた彼女は今までの試合を奇襲によって有利に進めて来たのだ。
「いやぁ、久々に食らう強力な攻撃でしたね。時計草?」
『中々効いた、良いパンチだ。以前の私が作った服であれば今頃雪蔵内には青汁と生肉が保存される破目に陥っていただろう。』
「だけど私達にはこれがあります。」
時計草が懐から取り出したのは鏡とカミソリ、そして小さな袋だった。袋の中の粉を鏡に少量落とし、カミソリで形を整える。
「法廷派探偵としての地位を用いて司法取引した中でも一番の戦果です。」
スニッフ!スニッフ!
マスク越しに粉を吸う。
リュネットは初撃が全く通じなかったショックから暫くそれを見守っていた。
『良い。スゴく良いよぉ藤原京!』
粉を吸い込み終わると、柊時計草が反応した。
「毎回毎回変な声を出さないで下さい。私が言ってるみたいでしょう。」
風月藤原京の身体が、いや、正確にはその服が細かく震え始めた。
何かがヤバい。リュネットが後ろに身を引いた時、足元から一条の光が放たれた。
「毒りんご!」
光は探偵に直撃し、服を焦がした。しかし身体に傷をつける前に服が修復される。
踊り子と探偵が光源を確認するより早く、地面に大きな穴が開き、中から女が現れ、バックフリップで他の2人と距離をとった。
試合空間に姿を見せていなかった残りの1人、飴びいどろである。寒さ対策として作務衣の上下に白を基調にしたウインドブレーカーやヒートテックを着込んでいる。彼女は基礎身体能力をとにかく底上げし、また自分の記憶に残っていた技を研究していた。しかし、《毒リンゴ》を使える世界と使えない世界の記憶の混濁を起こしていた為、《毒りんご》の威力は本来の物より劣っていた。
「あら、飴びいどろさんですか。人数は揃いました、そろそろ頃合いです。開廷しましょう。」
風月藤原京がリュネットとびいどろに歩み寄る。リュネットは今度こそ敵に傷を与えんと接近した。踊りによって鍛えられた足腰は強靭なステップを踏んだ。足元から雪が巻き上げられる。

ーーーーー《花刑法廷 開廷》ーーーーー

巻き上げられた雪と同時に白一色の世界に有彩色が舞い降りた。
音を立てずふわりと地面に落ちる。
しかし、探偵の視界には黒が一面に映り込んでいた。
水の翼で高速移動したリュネットである。
(よく分からないけど、さっきのビームを食らった服が元に戻るのは見えた。特別なのは服。露出している顔部分さえ叩ければ!)
メガネ=カタと踊りを合わせたようなリズミカルなラッシュを打ち込む。恐ろしい速度の拳が続けて叩き込まれる。
「あのレストランの情報をもっと早く知っていればシシキリにも勝てた筈なのに…」
しかし、踊り子の拳は探偵の持つ刀によって受け止められていた。
「木刀?」
リュネットは敵2人からの攻撃に備え、敵の一人一人と等しい距離を保って下がる。
『桜を元気にしたら木の枝、木そのものまで復元できた。桜の木は硬いからな、コントロールして復元すれば武器にもなる。』
探偵の服から聞こえる声が軽く説明する。
「雪だるまと火かき棒!」
飴びいどろにより、そこに野球ボールサイズの雪玉が投げ込まれて話が中断された。
探偵はそれを《オリカミ》による運動サポートで洗練、強化された動きで撃ち落とす。
雪の中に潜っている最中に大分作ったらしく、探偵が撃ち落とす度に投げ込まれる。
雪玉が粉砕されるたびに粉雪が舞い散る。
それが剥き出しの目に入った藤原京は悶えた。どうやらガラスの粉が混ぜ込まれていたようだ。
『大丈夫か、藤原京。一旦目までカバーする。』
顔が服の一部に覆われ、粉が入り込まなくなる。分厚いジャンバーによって普通の攻撃も通じない。
この絶対防御で自分への攻撃を諦めさせ、他の2人が先に潰し合うことを余儀無くし、適当な所で論破を浴びせて勝つ。これが探偵のだした結論だった。今は他の2人が殆ど話を行っていないため、論破も出来ない。
しかし、一度でもここで文章を口に出してみろ。あらゆる学術的角度から論破する。戦闘が滞り、決着しないと皆自然と口数は増える筈だ。

探偵がこのように考えている時、雪玉が爆発した。
雪玉の核にはビー玉が据えられ、内部には鋭利なガラス片が幾つも混入していた。
《オリカミ》は衝撃には強かったが、斬撃にはどうだろうか。
『ちょっと痛い。待って痛い。』
柊時計草の身体に傷がつき始めた。葉緑体を含んだ緑色の汁が白い服を汚す。
リュネットはガラス職人が暫く自分を狙いそうにない事が分かり、探偵に蔓状の植物を模した水を巻きつけた。
彼女は服から滲み出る緑色の液体や、2人分の声から、徐々に柊時計草の正体に近づきつつあった。
人工探偵は何人もいる。彼女のこれまで倒してきた敵の中に人工探偵が混じっていたという訳だ。
『もぉーうざったい。私がこの身体操るから藤原京は論破に備えていてね!』
探偵が動いた。腕を思い切り振り回し、雪玉が爆発する前に砕き、木刀で蔓状植物を切り裂く。植物は水に戻った。
しかし、リュネットは再び探偵に水の植物を差し向けた。
(馬鹿め、水があれば光合成が楽になるだけだ。)
傷付いた服が元通りに修復される。否、元よりも分厚い。
次々と砕かれる水の植物。しかし、リュネットは水の植物を浴びせ続けた。
『ねえ藤原京、あいつ馬鹿なのかな?』
柊時計草が問いかける。しかし答えが無い。
『藤原京?ふじわらきょおー!』
時計草は藤原京の喋らない原因に気が付いた。窒息だ。布で覆われた口や鼻が水で濡らされ、密閉されたのだ。今、風月藤原京は自分の中で気絶している。
時計草は藤原京の鼻から口の辺りを、覆うのを止めた。幸い、リュネットと戦っている間、飴びいどろの雪玉は切れたようで、「ガラスの靴!」とか言いながらナイフを投げてきている。しかしこれは藤原京の手を纏う手袋を操作して掴み取れば無効化出来る。
やがて藤原京が意識を取り戻すのが分かった。しかしまだ意識が朦朧としているようだ。
『まあ、何にしてもリュネット・アンジュドローの狙いはもう見破った。何も怖くないわ。ウッ』
今度は柊時計草が話すのを止めた。いや、それどころか動きも止まっている。
飴びいどろのナイフが痛覚を刺激し、風月藤原京を覚醒させる。しかし、彼女が気付いた時には柊時計草は枯れかけ、白い服は茶色に染まっていた。何が起こっているのか。

リュネット・アンジュドローは人工探偵相手に一点条件下での必殺メソッドを作り出していた。
単純に言えば、光合成をさせないこと。それだけである。
今回、とあるレストランで手に入れた肥料で元気になった時計草は、元気でない時より活発に呼吸と光合成を行っていた。
光合成に必要なのは水、光、二酸化炭素である。
時計草は藤原京の顔を覆っている間、彼女の肺から排出された二酸化炭素を用いて光合成を行っていた。
しかし、藤原京の異常に気付き、二酸化炭素の供給量は減る。
それでもまだ絶えず新鮮な水(真水)をかけられていた為、体表を真水で塞がれ、二酸化炭素の溶けた水は流れ落ち、二酸化炭素が不足した結果、時計草は枯れてしまったのだ。
『藤原京…もう無理。力貸して…』
藤原京の顔にナイフが突き刺さる。その場でナイフが小爆発を起こす。
「痛っ!時計草!あなたは私の法廷派探偵の地位を使ってその力を手に入れたんですよ!?もう十分過ぎるほど力を貸していますが何か?それなのに私の事を窒息まで追い込むなんて仕打ちを!早く動いて下さい。元気が切れたんですか?しょうがないですね、これが欲しいんでしょうこれが!」
寝起きが悪くてご機嫌斜めな法廷派探偵によって白い粉が人工探偵に降り注ぐ。
『いや、そうなんだけど、そうなんだけど不測の事態が…』

グサッ

限界を迎えた時計草の心身に藤原京の言葉と降り注ぐ花の刃が突き刺さる。

ーーーーー《花刑法廷 休廷》ーーーーー

気付くと降り注ぐ花は消え去り、元通り真っ白な空間に戻っていた。
そして、風月藤原京は白い肌を露出して赤く染めていた。
「時計草!時計草!?」
時計草の弱った心は藤原京の発言を論破と捉えてしまっていた。彼女はあの空間に取り残されたのだ。
「寒いです、時計草!助けて下さい!」
目の前の探偵がもはや戦える状態で無いのを見て、飴びいどろは次の行動をどうするか考えていた。
この探偵に止めを刺せば、次の瞬間にはその隙を突いた攻撃が繰り出されることだろう。
「ごめんなさい、私が悪かったです。だから帰って来て下さい!時計草!」
探偵の死んだ直後に、仕掛けるか。
「とけ…い……そ…………」

風月 藤原京 失血と体温の低下による衰弱死。

刹那、その死体は、リュネット・アンジュドローの身体は、飴びいどろの身体は水の中に飲み込まれた。

《美しきロスマリン》

その出力は桜並木の時とは段違いだった。探偵が死亡する前から少しずつ雪の中に水を溶かしてはいた。だが、最後に一気に放出したり量は体育館程の蔵を水に沈めた。まだ天井までの間に空気は残されているが、水深7メートルはある。

冷たい水の中、リュネットアンジュドローは潜水し、床を強く踏んで一気に飴びいどろとの距離を詰めると、容赦ない一撃を見舞いした。しかし、飴びいどろの服の中にはガラスが敷き詰めてあり、一撃で即死に持っていくことは出来なかった。
リュネットはもう一度潜水し、水底から隙を伺っていた。
(次に隙を見せたら、私の勝ちだ)
飴びいどろは冷たさから痛みすら感じなくなって来ていた。
(門司君は腕を失っても戦意を失わなかった。私だって)
飴びいどろはジャンバーの四肢のある部分のガラスを分解爆破した。
水が赤く染まる
(煙幕のつもり?無駄。体育館一つ分の空間が水で満たされているのよ?すぐに拡散して透明になる。
でも私は自分のタイミングで攻撃出来るのに対してあなたは無理。そもそも水の中が見えてないだろうからね。)

そのように考えていたリュネットのメガネ、《海のメガネ》が分解爆破された。彼女のメガネは飴びいどろの爆散した四肢の肉片に触れていたのだ。
幸い、眼を怪我しただけで致命傷には至っていない。だが、
(呼吸が出来ない。)
《海のメガネ》の特殊効果、水中での戦闘には無論水中での呼吸も可能になるという効果もあった。
リュネットは天秤にかけた。自分と飴びいどろのどちらが最後まで生き残るかを賭けるか、廃糖蜜ラトン(古沢糸子)に元の世界へ帰らせてもらうのに賭けるか。

雪蔵に穴が空いたした。リュネットの破れかぶれのメガネ=カタだ。
白い世界に外の世界の色がなだれ込む。
今度は消え去ったりしない確実な色が。リュネットは試合空間の外へ出て思い切り呼吸し再び愛しの人に会えるよう、不確実な可能性が現実になるよう祈った。

飴びいどろはその景色を見ることなく気絶し、やがて元の世界に戻った。
その顔はすぐに愛しの家族と再び会えたことの喜びに染まった。




















































柊時計草は生存していた。
雪解け水と他の花が腐って出来上がった肥料、元気になる肥料、思い出のみを頼りに愛しの家族の残した物の中で生き続ける事を決めた。

最終更新:2015年01月24日 21:46