ディスコ突入五時間前


いやいや、コレないでしょ。
いくらなんでもコレは恥ず過ぎるんですけど!?
なんで、この服こんなに体にぴったり張り付いてるのー!?
こんなの服の上からでもおっぱいの形とか体型とか丸わかりじゃないの!!
やだあああーっ!!

「おーい、本葉ぁー、まだ試着終わんないのかー?」

「あううー、今終わったけど見ちゃダメーっ!」

次の戦闘空間は過去のディスコ。
ツマランナーさんと若葉卯月ちゃんの迷宮時計はとても強力で、戦闘空間の情報は前よりもずいぶんと詳しくわかるようになった。
今度は間違いなくAD1980年代の日本。
(※基準世界等では時ヶ峰紀元のATではなく、ADと書くらしい。なんかヘンな感じだ)
ケンちゃん達と時代考証を重ねた結果、ディスコに溶け込むためには『ボディコンシャス』というタイプの服がベストという結論になったんだけど――

こんなの恥ずかしくて着れないよーっ!!

これ着てってさ、もし図書館の時みたいに服装ミスって回りは普通の服着てたらどうするの?
はっきり言ってこれ完全に痴女だよチジョ!
警察に逮捕されて連行されて即場外負けだよおおっ!
この服ってケンちゃんの趣味なんじゃないの!?
ケンちゃんの変態っ! 変態変態へんたーいっ!


††††


すごく恥ずかしいボディコンシャス服を2着買ってから、フライドチキンを頬張りながら作戦の再確認。
パパとママに迷宮時計のことを説明したので、軍資金はばっちりなのが心強い。
というか、コレって完全にデートだよねデーート!!
この点では迷宮時計に感謝しなくもないね!

「日下景、という人物はこの世界では見つけることができなかった。完全に別世界の人間か偽名だな。能力のヒントもないので怖い」

うん。怖いよう。
もし即死能力とか持ってたらどうしよう。

「図書館では失敗したけど、今回もフラガラッハでサーチ・アンド・アンブッシュでいいんだよね?」

ケンちゃんがうなづく。
ふううー、ケンちゃんが保証してくれると心強いぜー!

「本当は変身して開幕直後にフィールド全体を焼き尽くすのが一番勝率が高いんだが、無関係の人を大量に殺しかねないからそれは出来ない。だが、ヤバいと思ったら即変身するんだぞ」

うん。できるだけ人は殺したくない。
でも、ケンちゃんの所に帰るためならば、いざとなったら殺す。
その覚悟はできてる……つもり。
スパイシーなチキンをがぶりとかじる。
おいしい。
ケンちゃんと一緒に食べると、ただでさえ美味しいチキンが超おいしい!

「ところでさ、前から聞きたかったんだけど、本葉の本名って“堀町”なのになんで“本葉”って名乗ってるんだ?」

おおお、ケンちゃんが私のことに興味持ってくれてる!
これは偉大なる一歩ではなかろうか!?

「ほら、私って孤児だったでしょ。今のパパとママの所に養子に貰われて戸籍は変わったけど、“本葉”ってのは本当の両親の名前みたいなんだ」

だから、もし本当の両親がまた私に会いたいと思った時にすぐ判るように、普段は“本葉”の方を使うようにしてる。
もちろん、堀町って名前が嫌なわけじゃないし、今のパパとママは大好きだよ。
私のことを引き取ってくれて立派に育ててくれたんだから、感謝してもしきれない。

「悪い。立ち入ったこと聞いちまったみたいだな」

あわわわ、ケンちゃんがまた変な気遣いしてやがる!
ケンちゃんならば、どんどん立ち入って来てオッケーだよ!
もっと来なさい! ウェルカム!

「ぜんぜん! ママだって本葉って名前はステキだって言ってくれてるし大丈夫!」

「あー、あの人、草花なら何でも大好きな感じだもんなあ」

「うん。ママの花好きには困ったもんだよねー」

店内には観葉植物がたくさん置かれていて、ファーストフード店にしては緑がやけに多い。
これは、この店に限ったことではなく、ママが住んでるこの街では普通のことだ。
窓から見下ろす街にも、花と緑が溢れている。

ディスコの戦いまで、あと五時間。
今回も私は絶対に勝ってみせる。
そして、ケンちゃんとパパとママが暮らしている花いっぱいの街に、必ず帰ってくるんだ。


(本編に続く)

最終更新:2015年01月07日 21:17