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ツマランナーエピローグ


ジャーン!

「聞いて下さい。『糸目射止める』」
「ワン、ツー、ワンツーさんし」

ジャカジャカジャカジャカ

「ワイには一つ下の後輩がいる~ しょっちゅう喧嘩した奴がいる~
ワイが漫研に遊びに行って澤君を誘惑する度に~ 梶ちゃんにどつかれた~」

ジャカジャカジャンジャン

「漫研の男~ 漫拳の漢~ 今日は漫拳使い梶原惠介の~ 必殺技を教えよう~
半年前漫研に遊びにいった時~ 目を細めながら梶ちゃんはこう言った~」

ジャン!

「『おいカマ野郎、漫画世界の糸目って全体的に強キャラなんだぜ』確かにそうだね!」

ジャカジャカジャン

「糸目 糸目 ビバ糸目 糸目のニンジャ(左衛門兄様)
糸目 糸目 ビバ糸目 糸目の超人(ラーメンマン)
糸目 糸目 ビバ糸目 糸目の立海(データテニス)
糸目 糸目 ビバ糸目 そんな糸目で今日もワイは漫研から追い出された~ サンキュー!」

ジャーン!

パチ パチ パチ

「いい曲じゃねえか。この末期がんの身体にも感動が伝わってくるぜ」
「飯田ぁ!よくもヌケヌケとワイの前に出れたなあ!」

再会は突然だった。ツマランナーが次のツアーで発表する新曲を練習している所に突如
拍手と共に飯田トオルが出現した。ツマランナーはさっきの曲で得た力で糸目オーラを纏い
遠慮無しの全力で蹴りかかる。

「死ねや!百戦百勝脚ー!」
「おっと」

飯田トオルはツマランナー渾身の蹴りを片手で止める。

「ひでえな、かつての仲間にいきなり本気の攻撃か?」
「こちとらお前が色々怪しいのはとっくに御存知なんじゃい、ボケ!」

世界標準時計との融合が解除され迷宮時計自身から情報を得る事は出来なくなったが、
本葉柔、そしてワカバウツキとの情報交換はツマランナーに多大な知恵をもたらした。
勉強はロクに出来ない彼だったが、他世界の事情通達の意見からようやく飯田トオルの
存在のおかしさに気付き、飯田トオルが認識操作と時空移動を行いながら迷宮時計争奪戦を
監視しているという結論に至っていた。

「15年以上全然年とらんし、四葉との勝負を当たり前の様に実況するし、マジふざけんなや!」
「お前の知らない世の中にはな、初対面の相手を幼馴染にする魔人もいるんだぜ。
頼れるけど病気のオッサンを演じ続ける能力があってもいいだろ?」
「ドアホ、飯田の能力の原理とかはどーでもええねん?質問するから答えろや」
「よし、この末期がんの俺が答えられる事なら教えてやろう。お前は俺のお気に入りだからな、
三つまでなら許そう」

三十秒が経過しツマランナーの糸目が解除される。漫画的糸目パワーに12ビートを乗せた
連撃を会話の合間に放ち続けていたが飯田トオルにダメージを与える事は出来なかった。
殴るだけムダと考えたのかツマランナーは構えを解き、苦々しい顔をしながら質問タイムに入る。

「そやな、まず絶対聞きたい事一つ目、四葉とウツキとコウ、それから本葉ちゃんには何もしてへんやろな?」
「おやおや、復讐鬼そのものだったツマランナーさんが随分と甘い事言う様になったもんだな」
「ええから答えろや」
「俺が興味あるのは優勝の可能性のある迷宮時計所有者だけさ。四葉の所には一度行って
ドーナツ一緒に食べただけだ。で、この世界に来てからは真っ直ぐお前に会いに行ったから
何の心配もいらないぞ。ボンバーなんてのは知らん」
「そうか、ほなら質問タイムは以上や。こっからは拷問タイムや!」

ツマランナーが両手を大きく振り回すと地面から金属製の糸が舞い上がり飯田トオルの身体に巻き付いた。

「うおっ!?」
「漫拳はフェイント、これが糸目射止めるのホンマの狙いや」

高速の打撃に合わせてベースの弦で糸の結界を作り出す、それがツマランナーの新曲
『糸目射止める』の真の効果だった。
ベーシストだから糸使いのスキルが使えるという展開に無理を感じる読者もいるだろうが、
そういう人は『ピアノ線を手にしたラトン先生』を想像して欲しい。
どうだろうか?ピアノ線を使って相手をバラバラにするラトン先生が容易にイメージ出来ないだろうか?
だったら、相手を一時的に捉える程度の糸技術をツマランナーが使っても問題ないだろう!

「また成長したなツマランナー。だが、並の魔人ならともかく、こんなんで俺の動きを止めたつもりか?」
「今やコウ!やったれー!」
「はい!」

飯田トオルの背中に衝撃が加わると両手を同時につかみあげられる。
ステルスを解除したコウが飯田トオルをパロスペシャルの体勢でガッチリ固定していた。

「確か・・・ワカバウツキの所持品のコウちゃんか。お前、いつからここにいたんだ?」
「ツマランナーさんが新曲歌ってる時の合いの手、あれ私です」
「なるほどな、だがやめておけ。お前の技は俺には効かない。ボスキャラにデバフやバステが効くか?」
「いや、以前緊急脱出装置で飯田ぶっとんどったやん。コウの技術も普通に効くんちゃうの」


全員しばし沈黙。
やがて飯田トオルが黒幕めいた表情のまま口を開いた。

「やめてくれコウちゃん、その技は俺に効く。というか無力化は既に効いてる」
「・・・」
「・・・」
「やめてくれ」
「・・・コウ、やってまえ。魔人能力無効化とスタンガンと万力の三点セットや」
「了解」

【数分後】

「こんな小汚いのが迷宮時計争奪戦の元凶?」
「おいおい、出会って早々酷いなウツキちゃん。ところでこのパロスペシャル外させてくれない?
手首骨折していて痛みが尋常じゃないんだけどなー」
「お幸、絶対離さないで」

飯田トオルに反撃する力が残って無い事を確認したツマランナーはウツキを呼び寄せて
事情を説明した。戦闘力の無いウツキはもしもの時の為、三メートルほど距離をとりながら
尋問に参加する。

「状況は理解しとるな飯田?三つと言わず知っとる事全部話さんかい。この戦いは誰が仕組んだのか、
誰を倒せば終わるのか、敗退したワイらに出来る事はあるのか、いずれ世界が終わるとしたら
タイムリミットは存在するのか、それからえーと、とにかく全部や!!」
「そんなん知らねー、俺は通りすがりの末期がんホームレスだって」
「無関係なホームレスがどうやって20世紀末の梅田からここまで来るねん!コウ、電撃や」
「アジャパー!わかったよ、説明するから紙とペンくれ。どーせお前もアホだから
紙に書かんと理解できないだろうからな」

ツマランナーはウツキからボールペンを借りると飯田トオルの口に押し込み、
裏返しにした楽譜を地面に置いた。飯田トオルの両手はパロスペシャルで固定されたままだ。
飯田はブツブツと文句を言いながらも口でペンを振り回し、楽譜の裏に器用に字を書いてみせた。


【支配者】迷宮時計完成まで辿り着きその支配権を得た人物(目的は戦いを永遠にを楽しむ事?)
【中間層】俺(支配者からの注文に従い迷宮時計争奪戦を調整する手駒。俺以外にもいるかも?)
【下層】迷宮時計参加者(迷宮時計の力を高める為の器や争奪戦を運営する手駒候補)

【介入者】日本政府、スズハラ、ニャントロ、探偵(迷宮時計を利用しようとしている?俺も詳しくは知らん)

【最終処分場】迷宮時計の力によるループで生じた未来無き滅びた世界。
(かつて最終処分場として滅ばされた世界があったが、争奪戦がループし続ける限り
歪みは増え続け、第二第三の処分場が生まれるだろう)

【迷宮時計裏ルール】迷宮時計所有者は殺意を刺激され多かれ少なかれ戦闘による解決を望む様になる。
(俺の観察では様々な人間がこの効果で戦闘行為に躊躇しなくなった。ツマランナー、お前もそうだっただろ?)

【迷宮時計争奪戦今迄の流れ】
1:一人の転校生がバラバラになる
2:欠片になった転校生、復活の為に自分を集めた者の願いを叶える事にする
3:転校生の欠片が揃う、だが集めた人物は願いの力で完成を拒絶し争奪戦のループが始まる。
4:何度目かのループで俺、飯田トオルが優勝手前まで行き真実を知り手駒となる。

「・・・これ本当?」

ウツキの顔には怒りとも呆れともつかない感情が浮かんでいた。
彼女自身迷宮時計の行いには熟知しており、飯田が書いた事の半分以上は既に知ってはいた。
だが知らなかった部分、そのどれもこれもウツキの想像を超える最悪の情報だった。

「俺の想像の部分もあるが、俺が優勝直前で出会った奴が黒幕かそれに近い人物だと考えている。
迷宮時計の目的が全パーツ合体しての復活なんだから、何度もループさせてるのは迷宮時計の意思とは
別の存在であり、その上で迷宮時計の力を自在に使える人物って事になるだろ?」
「お前何が目的やねん?何でそんな奴に従ったんや」
「協力すれば世界を元に戻してやると持ち掛けられた。俺の居た世界は最終処分場に巻き込まれ
滅びかけていたからな。本当は優勝して世界を修復したかった。自分の世界が消える原因になった
あいつをぶっ倒して終わらせたかったんだが・・・今は見ての通り『ホームレス』さ」

ツマランナーは飯田が自分にやたら干渉してくる事の理由にようやく気付いた。
この男は自分と同じ目的で戦っていたのだ。迷宮時計の影響で自分の世界が滅ぼされる可能性を無くす為に
優勝を目指した自分。迷宮時計のループにより消えていく世界で時計の欠片を手にし、
元凶を倒す為に動いていた飯田トオル。
飯田トオルはツマランナーと同じ、いや、遥かに過酷な状況で迷宮時計による危機と戦っていたのだ。

「コウ、パロスペシャル解除して治療してやれ」
「よろしいのですか?」
「私からもお願い、お幸。この人には敵意は無いわ」

偽ギブアップは千里眼。戦闘力が無い代わりに話術に長けたウツキは
飯田トオルの本心を見抜いていた。二人の言葉に従いコウは飯田の拘束を解除する。

「おー、だいぶ楽になった。で、改めて質問はあるか?」
「飯田さん。貴方に命令を下していた人物の名前を聞いておきたいのですが」
「ああそうだな、参加者の中には奴の名を知っているのも結構いるしもったいぶる必要もないな。
あいつはマジもんの戦闘狂でさ・・・」

飯田トオルが黒幕(かもしれない人物)の名を語ろうとしたその時、横からツマランナーが口を挟む。


「そや飯田、さっきの話聞いて気づいたんやけどお前のおったっていう世界、もう救われとるぞ」
「マジでか!?」
「最終処分場やろ?ワイらに勝った本葉ちゃんは復興したそこから来たねん」
「聞いてねえぞオイ・・・よし、ちょっと確認してくる」

飯田トオルは空に向かって手をかざし、カーテンをめくる様に空間を引っ掻いた。

「開け、異界門!」

しかし、何もおこらなかった。

「開け異界門!開けっての!俺は迷宮時計争奪戦調整者飯田トオルだぞ!」
「すみません、何してるんですか?」
「普段はこうやって平行世界を移動してるんだが・・・開けーっ!!お、来たっ!」

空間に亀裂が入り、空が割れ闇が流れ込む。闇の中心には千を超える時計を組み合わせて作った
巨大な龍がとぐろを巻いており、その龍が大きく口を開くと地面に闇色の息が吹きかけられ、
その部分は瞬時にモザイク化して砕け散った。この様子を見たツマランナー、ウツキ、コウの三人は
SANチェックです。

「おいコラ飯田ーっ、何ちゅうもん呼んどるんや!」
「タイミング的に俺が呼んだみたいに見えるけど俺じゃねえよ!」
「で、明らかにヤバイあれは何ですか?」
「時計龍、ループによって生じた歪みをエネルギーにして動き、召喚された場を最終処分場と同じ状態に
するまで暴れ続ける存在で、俺をこき使ってきた奴の切り札の一つだ。平行世界移動が封じられた状況と
合わせて考えると、俺が裏切ったと認識した奴がこの世界ごと俺を切り捨てる為に送り込んで来たんだろうな」
「つまり飯田さんのせいなのですね」
「しゃあない、皆でアレ止めるで」
「頑張れよー」
「「「お前も戦えよ飯田トオル!」」」

飯田トオルに命令し迷宮時計の力で永遠の闘争を楽しんでいたという人物は誰だったのか?
そいつが本当に黒幕なのか?だが、まずはこの世界の危機をなんとかせねばならない。
戦えツマランナー!時計龍を打ち倒しこの世界を救うのだ!

ツマランナー編 終わり