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プロローグ


はじまりの巫女は、混沌の中にいた。
混沌は、更なる混沌へと崩壊の一途を辿っており、はじまりの巫女の命もまた混沌に呑まれて潰えようとしていた。
そこに、三柱の神が現れた。
簒奪の女神・クグルイ。
ナマヌシの神・ヤマグチ。
そして、創造神にして武神・トキガミネ。
神々は醜い争いを続けていたが、やがて巫女の呼び掛けに応え、力を合わせてこの世界を造り出したという。

††††

希望崎学園最強の男、時ヶ峰堅一は雲よりも高く、稀薄な大気の中にいた。
足場は大地に突き刺した『魔剣13km』。
国造りの神の血筋を引く時ヶ峰一族でも最強の者のみに与えられる「ケンイチ」の名は手に入れたが、まだまだ「健一」には遠く及ばぬと堅一は考えている。
堅一は、創造の矛である『天沼矛(あめのぬぼこ)』を喚べこそすれ使いこなすことはかなわぬのだ。

遥か下界の樹林の中から、乳白色のレーザー光が五度、迸ったのを堅一は見た。
「ほう、こいつは強い魔人が誕生したようだな」
堅一はニヤリと口元を歪め、新たな剣を召喚して構える。
赤と緑の光を放つ、シンプルな造りのバスタードブレード。
巨大な剣を片手で軽々と操り、堅一は天高くそびえる『魔剣13km』の上で赤と緑の二重螺旋を描くような優美な舞を踊った。

††††

首のない男が、1、2、3、4、5人。
二人が赤毛の少女の両腕を押さえ付け、一人は少女のおっぱいの上にのし掛かり、残りの二人は少し離れた所に立っている。
彼女の白いブラウスはボタンを引きちぎられて開かれ、その大きなおっぱいはあらわになっていた。
そのおっぱいの谷間には、男がフルエレクチオちんちんを無理矢理に挟み込ませていた。
遮光ゴーグルに隠れて見えないが、彼女の瞳には大粒の涙が浮かんでいたことだろう。
そして、おっぱいの先からは、白い煙が立ち昇っていた。
たった今、本葉柔は魔人として覚醒し、必殺の『おっぱいレーザー』を放ったのだ。
そして彼女は、自分の正体がボンバー星出身のボンバーνであることを知った。
もちろんそれは本葉柔の妄想に過ぎないのだが、妄想による世界の上書きが終わってしまった以上、それは既に事実である。
5人の男の首なし死体が、ゆっくりと倒れた。

(殺しちゃった……)
自分を襲ってきた相手とは言え、5人もの人を殺めてしまった。
柔は己の所業に恐れおののき、自らの内側に潜む異形の本性に怯えた。
(なんてこと……私はなんて怖いことを……)
しかし、柔に事態をゆっくりと反芻する時間は与えられなかった。

大きな地響きがして目の前で地面が爆発するように弾けたので、巨大な何かが降ってきたのだと柔は思った。
降ってきたのは一人の人間だった。
だが、身の丈は2mを遥かに越えており、巨大な何かという形容は彼に相応しい。
その手には緑の光を放つバスタードソード。

「俺の名は時ヶ峰堅一。そして、この剣は『スタング』だ。魔力を持った剣だが、あんたにとっては単によく切れる剣に過ぎないから心配しなくていい」
学生服の巨漢は、凶悪な笑顔でそう名乗る。
あの服は希望崎学園――悪名高い戦闘破壊学園ダンゲロスの制服だと察した柔は身を強張らせ、はだけたブラウスの前を合わせておっぱいを隠した。

「大丈夫だ。殺すつもりはない。だが、あんたは俺を殺すつもりで来てくれ」
英雄の行進のような威風堂々とした足取りで、時ヶ峰は近付いてくる。
剣から放たれる緑の光、全身から漏れ出す霸気。

「やめて……ください……」
そう言いながらも、本葉柔は右足を後ろに引いて重心を下げ、ゆるく開いた両掌を前に出し、柔術の構えを取った。
幼少の頃から護身のために鍛えてきた柔術。
そして、おっぱいの中で渦巻くM44エナジーが、柔に囁きかけた。
(『今こそ母なるボンバー星のパワーと柔術をひとつにする時! おっぱい柔術は天下無双!』)
どう動くべきかは、おっぱいが教えてくれる。

「ゆくぞ!」
緑の剣が、少女の首筋を狙って水平に振るわれる。
殺意を込めた剣ではない。
第一の太刀は柔の実力を見定めるための、様子見に過ぎないのだ。
回避の型その七「柳」。
柔は上体を後ろに反らし、斬撃軌道から逃れる。
激しい動きに合わせて豊かなおっぱいが揺れ、破れたブラウスからおっぱいが溢れそうになる。
(見込み通り、やはり避けたか。さて……)
時ヶ峰は剣を振り抜いたあと、次にどのような攻撃を組み立てるべきか考えた。
だが、その考えは誤っていた。

緑色の光が、おっぱいの僅か数ミリ上空を通り過ぎようとした瞬間。
「ボンバー!」
ボンバー語の掛け声と共に柔が上体を跳ね上げ、おっぱいで剣を弾いた!
弾力のあるおっぱいによって剣はあらぬ方向へと逸れ、時ヶ峰も体勢を大きく崩す。

「ボンバー!」
その隙を見逃す柔ではなかった。
大地を蹴って時ヶ峰の延びきった右腕に飛び付く。
おっぱいの谷間に手首を挟んでへし折りながら、左脚を頭部に、右脚を脇の下から胴体に掛けて肘関節を極める!
おっぱい柔術・腕ひしぎ飛び関節!
おっぱいの重量によって時ヶ峰の巨体を大地に引き摺り倒そうとする!

剣を弾いた驚くべきおっぱい弾力。
かすり傷ひとつ付いていないおっぱい耐久力。
そして、いま右腕を壊さんとしている圧倒的おっぱい質量。
時ヶ峰の戦闘判断力は、一瞬の攻防でおっぱい柔術の多くを既に見切っていた。
(筋力で応じれば右腕を持っていかれる……!)
柔の動きに逆らわず、時ヶ峰は自ら身を捻りながら飛んだ。

しかし、それでもおっぱい柔術から逃れるには足りなかった。
柔は半ば極りかけていた肘関節に固執することなく瞬時の判断で手放し、空中で体勢を入れ換えておっぱいを時ヶ峰の顔面に押し付ける。
そして両脇で時ヶ峰の腕を制しながら落下。
おっぱい重量をすべて乗せながら、後頭部を地面に叩き付ける!
そのまま上四方固めを決める!

本来、実戦における固め技は、相手の動きを封じることでとどめを刺すための下準備とする繋ぎ技である。
だが、おっぱい柔術の上四方固めは、それ自体が殺人技なのだ。
時ヶ峰が並の魔人であったなら、先ほど地面とおっぱいでサンドイッチされた瞬間に頭部がばくはつして死んでいたはずだ。
そして今、時ヶ峰の頭部は完全にJカップおっぱいで包み込まれていた。
おっぱい重量により頭蓋が圧壊するか、おっぱい密着により窒息するか、おっぱい絞扼により頸動脈の血流が途絶えるか、いずれにせよ待ち受けているのは死だ。

抵抗はできない。
両腕は制圧されて自由度を奪われ、脚の届く範囲に攻撃対象は存在しないが、それ以上に問題なのは抵抗する意志そのものがおっぱいに剥奪されていることだ。
時ヶ峰の視界を覆い尽くす肌色の生おっぱいパラペット。
鼻孔をくすぐる汗混じりの甘く蠱惑的なおっぱい芳香。
(母さん……)
朦朧とした時ヶ峰の意識には、遥か昔に吸った母親のおっぱい記憶が鮮明によみがえっていた。
人は皆、おっぱいによって生かされてきた記憶がある。
かつて、乳呑み子であった頃はおっぱいこそが世界の全てであった……。
そして、時ヶ峰の命は、世界であるおっぱいに包まれながら燃え尽きようとしていた。

(……違う!)
脱出不能なはずの、おっぱい柔術上四方固めの中にありながら、時ヶ峰は正気を取り戻した。
それは、己が「ケンイチ」であることに対する誇りによるものだろうか。
それとも、最強を目指す強固な意志の力によるものか。
どちらも違う。
そんなものでは、おっぱい天国に背を向けることなどできるはずもない。
それは、完全無欠であると思われたおっぱい天国に生じた僅かな翳りであった。
素晴らしきおっぱい芳香に混じった、微かな異臭が時ヶ峰を正気付けたのだ。
おっぱい楽園に影を投げ掛けた蛇の正体は、先程おっぱいに挟み込まれていたちんちんである。
ちんちんの先から滲み出た我慢汁が、おっぱいの谷間に付着していたため、おっぱい天国の完全性が喪われていたのだ!
パラダイスロスト!

「もごご、もっごもご、もごごむぐ……(これが、おっぱいを上回る……)」
時ヶ峰の左拳に力が込められる。
押さえ込まれて肘から下しか動けぬ状態で、相手に届くはずもない拳をどうするつもりなのか?
「もぐご、むぐぐむぐ!!(俺の筋力だ!!)」
拳を地面に叩き付ける。
大地が打撃点を中心にしてクレーター状に砕ける!
突如として下方に出現した想定外の空隙に、開眼したばかりのおっぱい柔術は対応できず時ヶ峰を取り逃がしてしまう。
死地を逃れた時ヶ峰は、取り落とした緑の剣を回収して一旦間合いを離す。

「あんた、強いな。危なかったぜ」
だが、既におっぱい柔術の底は見えた。
右手首は砕かれたものの、このまま戦い続ければ、間違いなく時ヶ峰の勝利となるだろう。
しかし、時ヶ峰は気付いていた。
本葉柔の中には、まだとてつもない真の力が眠っていることに。
(次の一撃で確実に殺す……下から斬り上げて、その胴体を真っ二つに切り裂く……)
時ヶ峰の殺気がほとばしる。

(下から来る……)
その殺気はあまりにもあからさまで、柔にも殺気の流れから次の太刀筋が目に見えるように判った。
柔は下段からの攻撃に対応するために、前傾姿勢を取る。
防御の型その三「穿山」に近い姿勢だが、両手を広げている点が異なる。
本来の「穿山」は交差した腕で攻撃を受け止めるが、おっぱい柔術ではおっぱいで受け止めるのだ。
緑色に輝く剣を左手一本で構えた時ヶ峰が踏み込んでくる。
柔は下からの斬撃に備えて集中する。
前傾姿勢によって強調されたおっぱいの視覚的破壊力がとんでもないことになっている。

そして、柔の視界に、まぶしい光が飛び込んできた。
太刀筋は、まったく見えなかった。
意識の外、上方から剣が襲って来たからだ。
殺気のみによるフェイントで、無敵の防御力を持ったおっぱいを下に引き付けておいての上段斬り。
時ヶ峰にその気があれば、本葉柔は西瓜のように頭を割られて死んでいた。
だが、緑色に輝く時ヶ峰の剣が斬ったのは、柔の遮光ゴーグルだけであった。
「おそらく、ゴーグルがリミッターなんだろ? 見せてくれよ。あんたの本当の強さをさ」

「あ……あああ……」
まぶしい。……まぶしい!!
目に飛び込んでくる光の渦。
おっぱいの中で渦巻く、M44エナジーの渦。
いけない。私が私でいられなくなる。
私が、本当の私になってしまう。
嫌だ……嫌だよぅ……!
おっぱいが膨らむ。白いブラウスが、弾け飛ぶ。熱い。身体が熱い。
「ボンバァァァア!!」
人間離れした、怪物のような声が自分の口から出てくる。
身体が、どんどん大きく膨れ上がってゆく。

足元で、キッチンタイマーが陽気な電子音声で宣言する。
「ピピピピッ! 3分間クッキング、はじまりー!」
本葉柔の姿は、胸甲周4mの巨大な蟹の姿に変貌していた。

――波佐見大洋は、生まれついての強姦魔ではない。
彼は、うみタイプの魔人であり、能力『深海シンカー』は、パントマイムによる錯覚で相手を溺死に至らしめる恐るべき能力である。
身体能力も、並の戦闘型魔人と比べて高い。
だが、偶然手に入れた迷宮時計の戦いで、自分が勝ち残れる可能性はゼロに等しいとすぐに理解できる知性も持ち合わせていた。
そして、死ぬ前に一度でいいから巨乳ちゃんのおっぱいにちんちんを挟みたいと考えて実行に移してしまう無軌道さも持ち合わせていた。
大きなおっぱいにちんちんを挟みながら死ねたのだから、彼は幸せだったのかもしれない。
そして、本葉柔は迷宮時計の新たな所有者となったのだ。

「ピピッ、あと2分だよー!」
迷宮時計の声が響く。

「ボンバァーッ!」
巨大蟹ボンバーνは、鋏を振り上げて時ヶ峰に襲い掛かろうとする。

王たる者の魔法剣『エクスカリバー』。
龍より出でし草薙剣『天叢雲』。
黄昏の神殺剣『ラグナロク』。
武神の青龍偃月刀『冷艶鋸』。
時ヶ峰は次々に伝説の剣を喚び寄せボンバーνへと投げつける。
だが、ボンバーνの二本の鋏は易々と神剣を受け止め、挟み砕いていった。

そもそも、剣などというものは鋏を持たぬ哀れなか弱い人類が産み出した代用品に過ぎない。
蟹の鋏と比べれば、天然物のクルマエビと養殖物のバナメイエビほどの違いがある。
もっとも、養殖だから悪いと言い切れるものではない。
養殖エビの生産性は天然エビを遥かに凌駕するし、乱獲による環境破壊をもたらすこともない。
だが、養殖エビ産業が成立する背景には、安価な賃金で過酷な労働を強いられる発展途上国の人々がいるのだ。
いずれにせよ、エビ消費大国であり、エビ輸入大国である我々日本人は、もっとエビと真摯に向き合う必要があるだろう。

「ピピピピピピッ、あと1分だよー!」

ボンバーνの鋏が、眼が、触角が、口が、暖かみのある乳白色の光を放ち始めた。
そろそろ光線技を出しても良い時間である。
「ボンバァァアアアァアアーッ!!」
咆哮と共に、二本の鋏脚から、二本の眼柄から、四本の触覚から、大小三対の顎脚に囲まれた口から、M44エナジーを収束した殺人レーザー光線が一斉に放たれた!

「ギャアアアアーッ!!!」
乳白色に輝く破壊光線の集中砲火を浴びた「時ヶ峰堅一」は、塵ひとつ残さず
跡形もなく消滅した。

「ピピピピピピピピピピピピ。お料理、できあがりだよー!!」

††††

『魔剣13km』の上に立つ時ヶ峰堅一が手にしていた、赤い色の光を放つバスタードソードが消滅する。
双子刀剣『スタング』によって作り出した自分自身のコピーの動静は、剣を通じて全て伝わってきている。
(死んでも構わないという油断のせいだろうか……戦い方の全てが散漫にも程がある……)
時ヶ峰は自分自身の不甲斐なさに呆れ果てていた。
コピーとは言え、思考も強さも自分自身と全く同じ人物が敗北したのだから、猛省する他はあるまい。
(やはり、まだまだ俺は『健一』の域には程遠い……)
自分の弱さを知ることは、強くなるために必要なことだ。
弱い自分を一人づつ殺してゆくことで、俺はもっと強くなれる。
時ヶ峰堅一は、希望崎最強などという小さな玉座で満足するつもりは全くないのだ。

††††

あれから、2年が過ぎた。

この春に希望崎学園に入った私は、ケンちゃんと再会してビックリ仰天。
だって、殺しちゃったと思ってた人が生きていたんだから。
つまり、ケンちゃんは私の醜い“真の姿”を知って生き延びた唯一の地球人ってわけ。
一度だけ、ケンちゃんに聞いてみたことがある。
「私のアノ姿について、どう思うのか」って。
そしたら、「うーん、あれはあれで可愛いんじゃないか?」とか言いやがった。
ウソつけ。あんなのが可愛いわけないだろ。

……そして、運命の日がやってきてしまった。

「うわあああん! ケンちゃあああん! ついにアレが来ちゃったよおおお!」
三年生のケンちゃんの教室に、半泣きで駆け込んだ。

「ん? 生理が来たんなら良いことなんじゃないか?」
「違うよバカっ! ボンバーっ!」
ふざけたことを言うバカに、二年間特訓を重ねてきたおっぱい柔術のおっぱい居合いを抜き放つ。
だけどケンちゃんは涼しい顔で余裕の回避。
おのれー! おのーれー!
だいたいアンタ、私のこと処女じゃないって思ってるでしょ!
許せない! おーのーれー!

「とりあえず、こいつでも喰って落ち着けよ。来い、『つるぎの山』!」
ケンちゃんがお菓子を一箱召喚して、私にくれた。
でーもー、私は『たての里』派なんだからねー!
剣しか喚べないのは知ってるけど、ケンちゃんが私の好みなんて全然気にかけてくれてない感じなのがむーかーつーくー!
でも、まあ、ビスケット&チョコレートという組み合わせは一緒で、美味しいことは美味しいので戴くことは戴きますけど。
もぐもぐ。

「で、何が来たんだ?」
「迷宮時計が、ついに、来ちゃったの! やっぱり本当に戦わなきゃなんないみたい! どうしようケンちゃああん!」
ケンちゃんに、蟹の形をしたキッチンタイマーを見せる。
MODEボタンを押してゆくと、対戦相手の名前、対戦場所、開始時刻の順に表示される。

「そっかー、いよいよ来たかー。頑張れよ!」
「えええーっ、それだけーっ!?」
「ま、ある意味じゃあ本葉は俺よりも強いからさ、大抵の相手には勝てるんじゃないかな?」
「そんなことないよおおお! 死んじゃうのは嫌だよおおお!」
「大丈夫だって。前にも言ったろ? 迷宮時計が示したルールが正確なら、ヤバイって思った瞬間に降参すればいいんだから命の危険はほとんどないはずだぜ」
「でも……でも……知らない世界に取り残されるんだよ!?」
「ボンバー星から遠く離れて地球に来て、うまくやってるじゃないか。本葉なら、どんな世界に行っても元気に生きて行けるって」
「ううー、そうかなぁ」
「しかし、見知らぬ世界の見知らぬ強敵かぁ。ちょっと羨ましいな。代わりたいぐらいだぜ」

ケンちゃんのバカ。
バカバカバカバカバカバカバカバカ。超バカ。
そりゃさ、私はきっと宇宙空間でも深海でも生きていくことはできるよ。
でもね、ケンちゃんのいない世界で、ただ生き延びたって、なんにも嬉しいことなんかないんだから。

……ケンちゃん。
とっても強くて、いつも上ばっかり見ているケンちゃん。
私の気持ちになんか、ちっとも気付いてくれないケンちゃん。
でも、大好きなケンちゃん。

私は必ず勝って、ケンちゃんの世界に帰ってくる。
絶対絶対帰ってくる。
だから、放課後に別れる時の挨拶は、いつもと同じにした。

「バイバイ、ケンちゃん。また明日ね!」
笑顔でそう言って、くるりとケンちゃんに背を向けた瞬間に涙がどばっとあふれて頬を伝い、おっぱいの上にぽとぽとと落ちた。
泣く必要なんかないのに。
だって、私は絶対に帰ってくるんだから。
大好きなケンちゃん、また明日会おうね。