裏第一回戦SS・劇場その1


『レクイエム・フォー・ザ・ファントム』



【目次】



第0章:旅立ち
第1章:劇場の出会い
第2章:ファントムの影
第3章:銀幕の死闘
第4章:幻影虎陣形
第5章:冒険の始まり





第0章:旅立ち


AD35000年、アンドロメダ第51星団を滅ぼした宇宙死神デスハールは、

ケンタウロスω星に発生したワームホールを通じ、

遂に太陽系への侵攻を開始した――――!!

その鎌を一振りすれば太陽系に住まう半分の生命はたちどころに死亡するという宇宙死神デスハール。

この脅威に対抗すべく希望崎コロニーのスペース魔人3億5千万人が対デスハールの為の戦線を張るが、

デスハール本体の到着を待つまでもなく、死神の先兵である100億体を超える宇宙魔獣の攻撃により、

8割以上の損害を出す壊滅状態に陥ってしまう。

このまま人類の、魔人の長い歴史は閉ざされてしまうのか――!!

生き残るため、その叡智を結集したスペース魔人、アース魔人達は遂にデスハールに対抗する手段を見つけ出す。

それは太古の昔にとある魔人達が完成させたという超兵器の存在だった。

死神の到着まで刻一刻と迫る中、ようやくその超兵器を起動させることに成功した魔人達。

だが、その超兵器は未完成であり、果たしてどこまでデスハールに対抗できるかは分からない。

最後の希望を乗せ、太陽系の全魔人と未完の超兵器は宇宙死神に立ち向かう。

それは人類すべての命運を懸けた、この歴史上最後のハルマゲドン――。

その結末はどうなったのか。

そして時間は流れ、AD2014年――――。


******


「…………はっ!!」


目が覚めた。
思わず飛び起きた俺は、すぐに時計を確認する。
16時10分。良かった、時間まではまだ1時間以上もある。
戦いの前に、軽く一眠りしていこうと思ったんた。

それにしても酷い夢を見たもんだ。遥か未来の宇宙戦争? 人類の命運を賭けた戦い?
出撃する未完の超兵器?
荒唐無稽にも程がある。今時どんな三文SFや、少年漫画でもこんなの書かないだろう。

よりによって今日この日にこんな脈絡のない夢を見るなんて、どうかしている。
これが、俺の見る最後の夢になるかもしれないってのに――。

「よしっ!」

顔を洗い、腹ごしらえを済ませ、服を着替える。
そして母さんが作ったマントを羽織る。
準備は万端だ。

(いってくるぜ、母さん……)

心の中で独りごちる。
これからは俺は戦いに赴く。
かつて母さんたちが挑んだ、命を懸けた戦いに。
迷宮時計のデジタル表示が『17:30』という時間を表示する。
いよいよだ。俺の体は転送される――――。





第1章:劇場の出会い


気が付くと俺の体は大きな劇場の前にいた。
目の前には白い階段があり、劇場の入り口へと続いている。
迷宮時計の表示から【過去】の『劇場』が戦闘空間だってのは知ってたけど、
外に飛ばされるとは思わなかった。

劇場を夕日が照らしている。ちょうど日が暮れかかる頃か。
周りを見渡す。建物の感じから、どうやらここは日本の様だ。
でも、ちょっと古っぽい。平成……いや昭和ぐらいか?
母さんたちが懐かしんで見ていた映画とかに出てきた風景に近いな。
なんか街の方を見てみたい気分になるけど、劇場の敷地には戦闘領域を示す赤い線が引かれている。
ここから出てしまったら、場外負けになってしまう。

「行くか……」

俺は気合を入れなおして、劇場へと続く階段を上る。
ドアを開け、エントランスへと入る。
しーんと静まり返っている。
人がいない劇場なのか? けど、妙に気配は感じる。
人間……ではない。何か怪しい気配が。

エントランスには劇場の案内図が書いてあった。
この劇場は数階建てて、いくつかの小劇場や中劇場で構成されているらしい。
俺はまず一番近い1階の小劇場へ続くドアを開けた。
すると……。

「ヒャッハーーー!!」

モヒカン頭の男たちがバイクを華麗に乗り回して、劇場の中を闊歩していた。
観客が座る椅子の上を器用にもウィリー走行してる奴までいる。
なんだこりゃ? 何で劇場の中が世紀末になってるんだ? てかバイクどっから運び出してきたんだ?

「ヒャハーーー!! 死ねやーーー!!」

モヒカンの内、数人が俺に気付いてバイクで特攻をかけてきた。
くそっ、仕方ねえ。
俺は母さんから受け継いだ【シールドマント】 でバイクの突撃を防ぎ、
そのまま格闘術で奴らを地面に昏倒させる。

「おいっ、こりゃどうなってんだ!? お前ら何が目的だ!?」

俺はモヒカン共に問いかける。
しかしモヒカン達は次々と「ヒャッハー!!」「ヒャッハー!!」言いながら襲い掛かってくる。
聞く耳持たずかよ、全く。これが噂に聞くモヒカン雑魚って種別か。
劇場内には軽く見ても数十体のモヒカン雑魚がいた。一人一人相手にしてたらキリがない。

「おらあっ!!」

俺は全力で踏み込み、拳を突き出した。
俺の特殊能力『スカッドストレイトバレット』
神速の踏み込みにより猛烈なソニックブームが発生する。
モヒカン雑魚たちは「ヒャハーーー!!」と奇声を上げながら吹き飛んでった。

「これでよしっと。しかし、どうしてこんな状況になったかだな……」

まず考えられるのは、俺の対戦相手の仕業によるものだって可能性だ。
迷宮時計が示したその名は『紅井影虎』。
あかい……かげとらって読むのかな?
紅井家っていうのは俺の世界にもいる魔人一族だけど、調べた限りこんな名前の人物は見つからなかった。
なんで対戦相手の正体は全くの不明だ。こんなことをする奴だとしたら放っておけなさそうだけど。
そもそもこのモヒカン雑魚達はどこからやってきたんだ?

「……ううっ、ひっく……、えーん、えーん」

そこで気付いた。女の子の泣き声が聞こえる。
泣き声は劇場の隅……舞台の裏側から聞こえた。俺はすぐに声の方へ駆けつける。
そこでは9~10歳ぐらいの女の子が蹲って泣いていた。

「お嬢ちゃん、どうしたんだ?」

俺はしゃがみこんで、女の子の肩に手を当てて語りかける。
女の子は顔を上げて答えてくれた。

「わ、わたし、オペラ歌手のお母さんに会いに、この劇場へ来て……。お母さんが舞台に上がるところを見てたの。
  そしたら、仮面の怪人が……」
「仮面の怪人?」
「うん……。急に舞台に上がってきて、変な光を観客に浴びせてきたの。そしたら皆おかしくなっちゃって……。
私は眩しくてすぐに目を閉じてたんだけど、お母さんが「逃げなさい!」って。
でも怖くて震えてたら、仮面の怪人がお母さんを攫って行ったのが見えて、周りの人の姿まで変わっていっちゃって……。
怖くて、怖くて……。ずっとここにいたの……」

女の子は再び「えーん、えーん」と泣き出してしまった。
余程怖い思いをしていたんだろう。無理もない。

「もう大丈夫だぜ、お嬢ちゃん。その仮面の怪人って奴は、お兄ちゃんがやっつけてやるからな」
「ほ、本当に?」
「ああ。で、お母さんも必ず助けてあげるよ。約束だ」
「あ、ありがとう。お兄ちゃん」

俺はその女の子、すみれちゃんと指を繋いで約束をする。
しかし仮面の怪人ってのは何だ? まさか、そいつが『紅井影虎』なのか?
そんな風に疑問に思った時、背後に気配を感じだ。

「ヒャ……ヒャハァ……」

二人のモヒカン雑魚が棍棒を持って立っている。
まずい、仕留めそこなってた奴がいたのか。俺が逃げたらすみれちゃんが狙われてしまう。
俺はすみれちゃんに覆いかぶさり、奴らの攻撃を受ける覚悟をした。
その時。

ザシュッ、ザシュッ――

鈍い音が聞こえた。けど、俺が殴られる音じゃない、
振り向くと、モヒカン二人がドオッと音を立てて倒れていた。
そして、モヒカンの影から一人の少女が姿を現した。

「虎剣術、峰打ち」

その少女は刀を鞘に納めた。
刀の鍔(つば)には、虎の顔が彫られている。
少女は綺麗な長い黒髪で、何故か黒のセーラー服姿だった。

「あんた、何者だ――?」

俺は問いかけた。
すると少女は俺を見据えて、こう応えた。

「寅流(とらりゅう)、紅井影虎(あかい えいこ)」





第2章:ファントムの影


「あー、あれ、『えいこ』って読むのか。『かげとら』だと思ってた」

俺は立ち上がって、気さくに影虎に話しかけた。
ようやく見つけた戦闘相手だけど、何となくこの子とは殺伐した雰囲気になる気がしなかった。

「あなたが『菊池一文字(きくちいちもんじ)』ね」
「あー、その通り。まあ分かるか」
「あれだけ戦闘力を持つ魔人はそうそう存在しない。対戦相手と考えるのが自然」

げ、さっきまでの戦闘を見られてたか。
まあ俺の能力は見られてそんなに困るもんじゃないけど、連続使用が効かないって欠点がある。
今戦いになるのは少しまずいな。

「ふーん、で今やろうってのか?」

俺は内心の動揺を隠して影虎に問いかけた。

「あなたが望むならそうしてもいいけど、今は先に片付けるべき問題がある」
「問題?」
「あなたも気づいているでしょう? この劇場は普通じゃない」

そりゃまあ、あんなモヒカンたちが暴れてる世紀末劇場は、普通ない。

「ありゃあ、お前の仕業じゃないってことか」
「寅流にあんな恰好の男たちは存在しない。それを操る術もない」
「寅流ってのは良く知らねえが……、まあでもあんたはさっき、俺たちを助けたし、悪いやつじゃあなさそうだ」

俺は自分の後ろに隠れてるすみれちゃんを見ながら言った。

「その判断は早計かもしれないけど。今戦うつもりじゃないのは確か」
「ふうん……。で、あんたじゃなかったら、これは一体誰の仕業なんだ?」
「さっきその娘も言ってたでしょう。『仮面の怪人』。それがこの現象を引き起こしたものの正体。
  おそらくはこの劇場にきた観客たちを変質させ、操ってしまう能力を持っている。
  このモヒカン達はその『仮面の怪人』の能力を受けた人たちの成れの果て」

俺はそこかしこに倒れているモヒカン雑魚達を見回す。
すみれちゃんが言ってたように、この人たちは元々ただの観客だったのか。
良かった。死ぬような怪我を負った奴はいなさそうだ。

「『仮面の怪人』……か。俺たち以外に戦闘向けの魔人がこの劇場にいるのか」
「魔人であることは確か。けど、ただの魔人じゃない」
「え……?」
「この劇場に漂う気配……。その怪人は『世界の敵』と呼ばれる類の奴」
「『世界の敵』だって……?」

なんてこった。迷宮時計の戦いで転送されてきたってのに、『世界の敵』と出会うことになるなんて。

「『世界の敵』を退治することは、寅流の使命の一つ。あれを打ち倒すまでは戦いを待ってもらいたい。
  あなたはここでその女の子と待っていて」
「オーケイ。了解だ。でも、『世界の敵』って聞いたからには俺も黙っているわけにはいかないな」
「……?」

俺は「バシッ」と胸の前で手を叩いて、影虎に声をかけた。

「俺もその仮面の怪人を退治するのを手伝わせてもらうぜ。影虎」
「いいの? あなたにとって、得のない話だと思うけど」
「そういう問題じゃないさ。曲がったことを許せねえってのは、母さんから受け継いだ俺の性分さ。
  それにその怪人はすみれちゃんを泣かせた。それだけでも俺にとっては戦う理由として十分だ」
「分かった。なら好きにしなさい」
「おうっ、よろしくな、影虎」

俺は影虎に向けて手を差し出した。

「何……?」
「握手だよ。一時的とはいえ、共闘するんだ。その証だ」
「……不思議な男ね」

俺は影虎の手をしっかりと握った。
影虎の顔は無表情で、その手は冷たかったけど、何となく彼女が冷たい人間でないことは俺には充分伝わってきた。

「で、その仮面の怪人ってのは何者なんだ?」
「詳細はまだ分からない。けど奴の名前は分かる」
「名前……?」
「ええ、劇場……オペラ座の怪人といえば」



「『ファントム』よ」



******


「曲者!!」「であえっ!!」「であえっ!!」

「うおっ、侍集団? 時代劇かよ!!」
「こういう相手は私の得意。寅流、虎手裏剣!!」


「グオオオオ……」「キシャ―!!」「グオオオオオオオオオ……」

「うおっゾンビにドラキュラに狼男!? ハロウィンかよ!?」
「一体一体昏倒させる。手伝いなさい」
「でえいっ!! 『スカッドストレイトバレット!!』」


「アイヤー!!」「アイヤー!!」

「おおっ、今度は何だ!!?」
「キョンシーね。中国のゾンビみたいなものよ」
「でえいっ、数が多いぞ!!」

「倒しても倒しても起きやがってきやがる! キリがねえ!!」
「仕方がない。寅流忍術、火遁の壱式……」
「……って、なんだその爆弾!!? まさかあいつら焼き払う気か!?」
「紅浮雲(べにうきぐも)っ!!」


「ゲホッ……ゲホッ……、ただの煙幕じゃねーか!!」
「こういう時は逃げるが勝ち」


俺と影虎は仮面の怪人……『ファントム』を追って劇場内をしらみ潰しに探したが、
奴を見つけることはまだできていなかった。
代わりに次々湧き出てくるのは『ファントム』によって変貌させられたと思われる劇場の一般客だった。

「くそっ。この劇場、結構広いな。まだ結構な小劇場や中劇場がある」
「一番中心の大劇場にもいなかったってことは、『ファントム』は既に劇場内をほぼ制圧し終えて、
  今はどこかに陣取ってると考えるのが妥当ね」

俺と影虎はエントランスの案内図の前で、あらためて今後の方針を考えていた。

「このまま全部探して俺たちの体力が持つか、だな」
「若干厳しいかもしれない。虎忍具(とらにんぐ)も、もう三分の一ぐらいしか残ってない」

一緒に戦って分かったことだけど、この紅井影虎はどうも忍術を使って戦うらしい。
それもかなりの腕前だ。見ている俺が惚れ惚れする。
あと戦ってるとき、飛び跳ねたりするんでスカートの中が見えそうになる時があり、ちょっとドキドキするぞ。

「このまま時間をかけすぎるのは危険。奴の目的を考えて、その居場所を探り当てないと」
「うーん、そういっても、『ファントム』の考えなんてなあ」

そもそも俺は『ファントム』の姿すら見ていない。
奴を知っているのは……そう思って、俺はすみれちゃんの方を見た。
心配そうな顔で俺の足元に掴まってる。

「ああ~、すみれちゃん。ごめんな、不安にさせちゃったかな」
「う、ううん……。お兄ちゃんも、お姉ちゃんも頑張ってるから」

健気な子だ。この子のためにも頑張らないといけないと思う。
本当は安全な場所に一度連れ出してやるのが一番良いんだけど、俺か影虎が劇場の外に出ると
その時点で戦闘の決着がついてしまう。
この子を連れ出すだけなら、どちらかがこの世界に残る覚悟を決めればいいが、流石にそこまでの問答をすることはできなかった。
俺は内心で申し訳なさを覚える。

「これ」

そんな俺とすみれちゃんに影虎が小さな包みを差し出した。
その包みには可愛い虎の顔が描かれている。

「えっと……これは?」
「お腹が減っていると力が出ない。食べるといい」

影虎はそう言って、すみれちゃんに包みを差し出す。

「ありがとう、お姉ちゃん」

すみれちゃんがケーキを頬張る。

「優しいんだな、影虎は。これ、見たことないけどなんのお菓子なんだ?」
「紅井印の虎ケーキ。美鳥が好きなお菓子」
「美鳥? 友達の名前か?」
「…………」

影虎が押し黙る。ん、なんか聞いてはいけないことを聞いたんだろうか。
俺も虎ケーキを口にする。意外に結構高級品だな、こりゃ。程よい甘みで美味しい。

「あ。あの……」
「ん……?」

お菓子を食べ終えたすみれちゃんが声をかけてきた。

「役に立つか分からないんだけど、私も少しだけあの仮面の怪人の光を見て……
  その時、映像と、言葉が頭の中に浮かんだの」
「映像と言葉?」
「はい、映像は、おかしな髪型の人たちが暴れまわっているもので、言葉は……『マッドマックス2』って……」
「『マッドマックス2』? なんだ、そりゃ。モヒカンって言ったら、『北斗の拳』だろ」
「北斗の……拳?」
「なんだ、すみれちゃん、知らないのか? ほら、『お前は既に死んでいる』」
「……?」

うーん、今時の女の子は知らないか。俺の時代じゃもう100年近く前の漫画だからな。
徹子母さんが好きだった漫画だから知ってるけど。
てか、ここが何時の時代かまだ良く分かってなかったな。そういや。

「知ってるわけがない。ここは1983年だもの」
「えっ、マジか」

そんな俺の疑問に影虎が答える。
ん、でもそれだとおかしくないか。

「じゃあ、なんでモヒカン雑魚がいるんだ? アレはあの漫画がきっかけでこの世界に溢れた連中だろう」
「確かにきっかけはあの漫画だけど、原型は違う。
  さっきその娘が言ってた言葉の通り、元々は1981年の……」

影虎は何かを思い立ったのか、案内図の方へと向かった。
俺はすぐその後を追う。

「おい、どうした?」
「分かった」
「え……?」
「モヒカンの暴走族、時代劇の侍、ゾンビ、ドラキュラ、狼男、それにキョンシー。この全てに共通するもの」

影虎は案内図の地下ホールを指差す。
そこには『銀幕座』という文字が書かれていた。

「映画よ」





第3章:銀幕の死闘


俺は影虎と二人で地下ホールへの階段を降りる。
その後ろにすみれちゃんがついてくる。
地下ホールのドアの前に立ち、俺は影虎と顔を見合わせ、扉を開けた。

「よく来た! 諸君!!」

地下ホールは数十メートル四方の空間に数十個の座席が並ぶ、シンプルな作りだった。
元々は演劇の舞台であったところを改修してスクリーンを貼りつけ、映画の上映をするようにしたらしい。
正面の高台の中央に佇む仮面の怪人――奴が『ファントム』
スクリーンには俺が良く知らない映画のシーンが流れている。
その映像の前に磔(はりつけ)にされているのは――。

「お、お母さんっ!!」


すみれちゃんが叫ぶ。
あれがすみれちゃんのお母さんか。コンサート用のドレスに身を包んだ、綺麗な女性だ。


「てめえっ、すみれちゃんのお母さんを離せ!!」

俺は『ファントム』に向かって叫んだ。
だが、奴は飄々とした体で俺の言葉を聞き流す。

「はっはっは! それはできない。彼女は儀式の為の贄(にえ)だ」
「儀式だと!?」
「そう、真の芸術がこの世界を覆うための!!」

奴は両手を広げて仰々しくポーズを取る。奴の羽織ったマントが大きく棚引く。
真の芸術? こいつ、何を言ってやがる。

「かつて、映画は夢に溢れていた……。人の心を弾ませ、希望を与え、生きる活力をくれる。
  映画を作る人々も、情熱と熱意を持って、真に愛のこもった作品を生み出していた」

ファントムは、力強く演説を始めた。
同時にスクリーンの映像が次々切り替わっていく。多分名作映画のシーンの数々なんだろう。

「だが今やどうだ!!? ろくに脚本も練られていない、演出に何の力もない駄作ばかりが次々生み出されている!!
  演技も何もないアイドルを主演に据えた内容も何もない作品!!
  金儲けしか考えてない連中のせいで、映画はどんどんと汚れて行っているのだ!!」

スクリーンの映像は目まぐるしく変わる。
今度は奴の言う駄作映画の数々なんだろう。

「あ~、要するにクソ映画ばっかり作ってんなよってことか」
「そうだ!! 繰り返される粗製濫造により私の心は絶望した!! そして私の手で一度全てを破壊して作り直すことを決めたのだ!!」

どうやらこの『ファントム』って男、クソ映画への憎しみで『世界の敵』になっちまったらしい。
どれだけ映画に対する愛があったのかは分からねえが、それだけで『世界の敵』になるだけの
恨み辛みが募ったんだとしたら、相当性格の歪んだ野郎だ。

「高説はそれで終わり? 要は自分のクソ映画への憎しみを発散したいだけね。
  みみっちい」

俺が心の中で思ったことを影虎が突っ込む。うわ、容赦ねえな。

「黙れっ!! 貴様ら若造に私の気持ちは分からん!!」
「ああ~~、まあ分からねえでもねえけどよ。でも映画を作ってる人だって、生活とか、仕事とか色々事情があるわけだし。
  もうちょっと寛容になってもいいんじゃねえか?」

俺は『ファントム』を何とかなだめようとする。

「黙れといったはずだ!! そのような下らん事情を生み出すこの世界こそが悪!!
  我が得た力によってこの世界を真の芸術のみで支配する!! この劇場はその第一歩だ!!
  この我が理想!! 貴様らに邪魔はさせん!!」

「だからって、他人を傷つけていい理由にはならねえっ!!!!」


俺は『ファントム』に向かって突進していった。
もはや問答は無用だった。奴を倒してすみれちゃんのお母さんを取り戻す。
劇場の人たちも元に戻す。

「ふんっ! ファントム・ミラージュ!!」

だが、俺の体は『ファントム』を捉えることなく、その体をすり抜けた。
ファントムの体は十数体に分裂し、空中に浮いていた。

「何っ!!?」
「ふはははははははは!! これが映像を自由に操る我が力!!
  貴様ら如きの力では我を捉えられまい!!」

複数の『ファントム』達の哄笑が木霊する。

「貴様も絶望に染まるがよい!! 食らえ、ファントム・フラアアアッッシュ!!」


『ファントム』達の手から眩い光が放たれる。
まずいっ! 俺は咄嗟に【シールドマント】でガードしようとするが、無機物でない光はマントを透過する。

俺の脳内に、ある映画の映像と言葉がたちどころに流れ込んでくる。
『幻の湖』……なんだこりゃ。
俺に芸術や映画を理解する感性がどれだけあるのか分からねえが、それでも恐ろしくつまらねえってことは分かるぞ。
これは……確かに……絶望する……。

「しっかりなさいっ!!」

俺の頬に衝撃が走る。
俺はたちどころに正気に戻った。
どうやら影虎が俺を平手打ちしてくれたらしい。

「すまねえ、影虎。助かった」
「馬鹿なっ!! あれを受けて正気でいられるだと!!」

『ファントム』が驚愕する。
どうやらあの光が劇場の観客たちを変貌させたものの正体らしい。
俺も下手すればああなっていたわけか。

「残念だけど、クソ映画を見て皆が変わるわけじゃない」
「くそおっ!! おのれ……おのれ、おのれ、おのれ!!」

影虎はそういって挑発したが、俺にはあれがそんな理屈だけで防げるものでないことを感じていた。
俺を守ったのは多分、このマントの力。こいつがあの『ファントム』の絶望の光を和らげてくれたんだ。
ありがとう、花恋母さん。

「こうなれば何発でも浴びせるのみ!! くらえ!!」
「そうはいかない、火遁壱式、紅浮雲」

影虎が煙幕を張る。
これで奴の光は拡散できるって寸法か。
だが、奴の本体が分からないことには、煙が晴れた時にまたあの光を受けてしまう。

俺はマントを翻らせて煙を払う。
マントから発生する斥力で俺の視界は良好になる。
これで奴の本体を先に探すことができれば……ん?

俺はあることに気づく。ああ、そういうことか。
だとしたら、後は俺の本分だ。『そこ』まで真っ直ぐに突き進むだけだ。
だが問題はその前にある……。

「それは私が何とかする」

気が付くと影虎が隣にいた。
どうやら同じものが見えたらしい。
やることは決まった。俺たちは顔を見合わせる。
煙が、晴れる。


「覚悟を決めるのだな。今度こそ、絶望に染めてくれる!!」

俺の前に無数の分裂した『ファントム』が浮かび上がっている。

「覚悟を決めるのは……てめえだ! 『ファントム』!」


俺は全力で拳を握り、構えを取る。



「スカッド…………」



両脚をしっかりと踏みしめる。
そして……飛び込む!!



「ストレイトバレット!!」



神速の踏み込み。
俺は音速を超える速度で飛翔し、一直線に劇場の中を突き進んでいく。
発生したソニックブームが、周囲の『ファントム』を吹き飛ばす。


「ふははははは!!! 無駄だ!!無駄だ!! …………うおっ!!」

俺の手が、『ファントム』を確実に貫いた。


「な、何故……私の場所が分かった」
「ああ~~、そりゃ、スクリーンに思いっきり影が写ってたし?」

煙幕で暗くなった時、映写機の光はまだスクリーンを照らしてた。
既に映像が流れてないにも関わらず、その背後にいるであろう大きな人影をそこに写していた。
間抜けにも程がある。

「う……あ、あの女は……?」
「勿論、とっくに助けたさ」

俺が振り返ると、影虎がすみれちゃんのお母さんを抱えていた。
流石だ。あれも忍術の賜物(たまもの)って奴か。

「さて……観念しな、『ファントム』」
「ぐ……まだ……まだ……だ」

『ファントム』を貫いた俺の手が震えだす。

「我が悲しみ……憎しみ……絶望は……こんなものでは……」


……なんだ? くっ、手を刺したままにできねえ。


「うおおおおおおおおおーーーーーー!!!!」


俺が手を離すと。『ファントム』の姿がみるみる大きくなっていった。
やがて10メートル以上はある巨大ファントムへ、その姿を変える。
仮面は般若の形相に変わり、頭には角まで生えていた。


「百の怨念と……千の恨みで……わが身は羅刹と化す……」


ファントムの姿が徐々に浮遊していく。
くそっ、なんだか禍々しいオーラまで見えるぞ。


「そして破壊する!! この世界を……映画を……芸術を汚す者達を!!」


そして巨大ファントムは天井をぶち破り、劇場の上空へと突きぬけていった。


「まずいっ! 劇場の外に出ちまった!! このままじゃ……」

外の人たちまでが危ないだけじゃない。
俺たちは劇場の外側に出れない。
奴を追うことが出来ない。どうすれば。

「好都合」
「……え?」

焦る俺に、影虎は上を見上げながら呟く。

「劇場の外なら、遠慮なく使える」



「寅流の奥義を」



そういって、影虎は跳躍しながら軽快な動きで巨大ファントムが空けた穴を通って劇場の上へ昇っていった。


「ちょ、ちょっと待てよ!! 俺はそんな風には飛べないって!!」

仕方なく、俺は階段を使って登っていった。



*******



「追ってきたか。だが、無駄な足掻きだ」


俺が階段を通って天井へ登った時、ちょうど影虎と巨大ファントムが対峙していた。


「我が恨みの最大の力……見せてやろう!!」


巨大ファントムが手を天に掲げる。
すると夜空の彼方から、とてつもなく巨大な岩の塊……隕石が出現し、地上めがけて落ちてきた。


「な……嘘だろ!!?」

おいおい、今度は『アルマゲドン』かよ、洒落にならねえ。
これが『世界の敵』になったものの真の力なのか。
俺がこれまで何度か戦った奴はまだまだ小物だったらしい。母さんはこんなのとも戦っていたのか。
てか、『アルマゲドン』ってもっと10年以上先の映画じゃなかったか!!? 時代が早すぎないか!?


「来たれ!! 妖星ゴラス!!!!」


俺の疑問に答えるかのように巨大ファントムがその隕石の名を呼ぶ。
どうやら俺が知らないだけで、そういう映画はあるらしい。不勉強で悪かったな! わからねえ奴はググってくれっ!!


「この破壊をきっかけに、世界中に絶望を撒き散らす!! そして真の芸術を!!」
「……そのお題目はもう聞き飽きた」

巨大ファントムが高らかに己の力を誇示する中、影虎は極めて冷静に呟く。
なんだ? 影虎には一体、何の余裕があるってんだ?


「悪いけど、あなたの演劇はここで終幕――」

そう言って、影虎は手を素早く動かして印を結んだ。





第4章:幻影虎陣形


「悪いけど――」


影虎は、手を素早く動かして印を結んだ。


「あなたの演劇はここで終幕」

その印は、やがて影虎の前に一つの形を作り出す、

俺の目には影虎の結んだその印が――。

はっきりと『虎の顔』を浮かび上がらせたのが見えた。



「口寄せ――――」



影虎がその言葉を呟く。







       「幻影虎陣形!!!!!! (ファントムタイガーフォーメーション!!!!!!) 」








『紅井影虎が印を結び、天にその祈りを捧げた――』




その時、世界が震えた。

俺の耳に、不思議な言葉が聞こえてきた。




『その時、天を超え――――!!』




木星、衛星ガニメデとエウロパの中間。

時空の分け目が割け、巨大な翼を生やした巨大な機械虎、『天虎』が姿を現す。





『地を超え――――!!』




アラビア、ナフード砂漠。

猛烈な砂塵を巻き起こし、大地を踏みしめて巨大な機械虎、『陸虎』が姿を現す。




『海を超え――――!!』




北極、シベリア海。

海と氷を割り、大渦を巻き起こしながら巨大な機械虎、『海虎』が姿を現す。




『次元を超え――――!!』




三つの『虎』は空間を跳躍し、たちどころに俺たちがいる劇場の上空へと出現した。

虎達が空中でトライアングルを描く。

虎達を頂点に、眩い光の環、そして輝く虎の顔が夜空に浮かんだ。




『幻影虎陣形(ファントムタイガーフォーメーション) は完成する――――』




三つ虎達がたちどころにその形を変える。
翼を生やした虎、『天虎』が顔に、最も大きな虎、『陸虎』が胴体に、甲殻類を思わせる肉体(ボディ)を持つ虎、『海虎』が両脚に。
それぞれが一つの部品(パーツ)となり、一つの巨大な『虎』へと、合体してゆく――――。





『一人の魔人の想いと、三つの虎達の魂が一つとなるとき』





そして、俺の上空にその『虎』は姿を現した。
全長100メートルを超えようかという、雄大なる機械の『虎』。
その『虎』の名は―――。






『大宇宙の意思をも覆す宇宙最強の『『虎』』。幻影虎王(ファントムタイガー)は誕生するのだ――――!!!!』






******



それは一体どれだけの時間の出来事だったのか。
一瞬か刹那か寸豪か。
とにかく俺の感じた時間とは裏腹に、実際にはほんのとてもわずかな時間でその『虎』は出現した。
そのシルエットは、俺が今日夢で見たものに似ている――。

「ハッ!!」


影虎が跳躍した。
数十メートル以上上空にいる『虎』の顔に瞬く間に飛び移る。
凄いジャンプ力だ。てか、あの『虎』にはそういう機能があるのか。


「ここからが本当の勝負。真にファントムの名にふさわしい者を決める戦いの」


『虎』の顔に飛び乗った影虎が呟く。
なんで遥か地面にいる俺にも聞こえるのかは分からない。まあそういう機能があるんだろう。
ああ、便宜上、こっからはあのでっかい『虎』のことを「虎のファントム」って呼ぶことにする。


「吼えろ、ファントム」
「ガアアアアアアアアアアウッッッ!!!!」


影虎の指示と共に虎のファントムの口が大きく開き、そこからとてつもない咆哮が放たれた。
凄まじいヴォルテックスが巻き起こり、夜空に浮かんだ雲達を吹き飛ばしていく。
その空気流はそのまま空から降ってきた隕石、『妖星ゴラス』にぶち当たり、木っ端微塵に消滅させた。

凄え威力だ。俺の『スカッドストレイトバレット』の何倍だ?


「これで真っ向勝負あるのみ。さあ来なさい、巨大ファントム」


10メートルぐらいの巨大ファントムを見下ろし、100メートルの虎のファントムを駆る影虎が勝負を宣言する。


「ふ……ふざけるなあーーーー!! うおおーーーーーーー!!」


巨大ファントムはそれでも果敢に向かっていく。
勇ましい奴だ。それとも単なる開き直りか、はたまた現実を直視することができなかったのか。


「やれ、ファントム」
「ガアウッッッ!!」


虎のファントムが高速の掌底を繰り出した。
その瞬間、巨大ファントムは宇宙の彼方へぶっ飛び、流星となった。





キラッ☆☆





遠い夜空に輝く巨大ファントム。
その美しさは世界中の人々の眼に一瞬だけど写り、希望を抱かせたことだろう。
巨大ファントムの望みが、彼の想いとは全く逆の形で成就されたのだ――――。





戦いは終わった。





「……で、あなたはどうする? 戦う?」


いつの間にか虎のファントムの顔と、その上に乗る影虎の姿が近くにあった。
わざわざ降りてきてくれたのか。


「……いや、俺の負けだ。まいった」


俺は降参を宣言し、こうして俺が持つ迷宮時計を守るための戦いも終わった。





第5章:冒険の始まり


「これでこの世界に取り残される……か」

まあ、でもそれも悪くねえかと俺は思う。
元々身一つで旅に出たわけだし、母さんたちがしたように、この世界で自分ができることをするのも……。

「その心配は無用」

そう思った時、影虎が声をかけた。

「……え?」
「あなたも聞いていたでしょう? こいつは『次元を超える』」

ああ、そりゃ確かになんか野太い声のナレーションがそう言ってたが……。

「ファントム」
「ガウッ」

影虎が声をかけると、ファントムの眼から空中へ光が放たれた。
そこにはサポートデバイスの『ツカサ』が部屋の掃除をする光景が映っていた
間違いなく俺の世界の、俺が所属していた組織、『ガーベラ・ストレート』の司令室だった。

「あそこがあなたの世界ね」
「ああ、確かに……。なんで俺の世界が分かるんだ?」
「迷宮時計がこの世界とあなたの世界を結んだ時の道筋を辿った。
  あなたにとって特に思い出深い場所に繋がったみたい」
「ああ。けどあそこに戻るのは無理だろ。迷宮時計を手にした時にそれは伝えられた。
  戦いに敗北したら絶対に元の世界には戻れないって」
「確かに戦いが終わった今、この世界とあなたの世界とは断絶している。
  迷宮時計の意思は余程強いみたい。
  あなたの世界との間には29層にもわたる隔壁次元断層が貼られている。
  ……でも、それが何?」


「やって、ファントム」
「ガアアウウウ……」


虎のファントムの眼が輝いた。
その瞬間、29層にわたる隔壁次元断層がパリーンと音を立てて壊れていくのが俺にも見えた。

「次元を渡り、大宇宙の意思を覆すファントムなら、このぐらいはできる」
「マジかよ」

じゃあ、これで俺は帰れるのか。
何か釈然としねえな。
母さんたちの苦労は何だったんだ。


「負けたら戻れないとか。終わりとか。無理矢理に自由を奪って戦わせる。強大な力で人を釣って。
  そんなルール、私は壊す。
  ……あの娘のために」

影虎の瞳には強い決意が宿っている。
どうやらこいつには俺より大きな戦う理由があるみてえだ。
ファントム云々以前に、その強い想いに俺は負けたのかもな。

「送っていく。乗って」
「……いや、悪いが、それは必要ねえな」
「……え?」
「俺も影虎についていくぜ。だから影虎が住む世界に連れて行ってくれ」

俺の申し出に影虎はきょとんとした表情で俺を見る。

「俺もこの戦いを最後まで見届けてえんだ。
  この迷宮時計の戦いの先にはあの仮面のファントムと同じか、それ以上の『世界の敵』がいる。
  それを放っておくことはできねえ」
「いいの? せっかく自分の世界に戻れるのに。
  このファントムの力も絶対じゃない。この先何が起こるかは分からない。
  そうなったら本当に戻れなくなるかもしれない」
「そのぐらいの覚悟は決めてきたさ」

俺の強い決意に影虎は「ふうっ」とため息をつき。

「分かった。なら好きにすればいい」
「おうっ。 あらためてよろしくな、影虎」

俺は影虎に手を差し出す。
影虎はふっと微笑んで、その手を差し出した。
あ、こいつが笑っているところ、初めて見た。

「ならそろそろ行く。言っておくけど、私の目的はただこの戦いに勝つこと、じゃあない。
  そこまで言ったからにはあなたにもそれなりに協力してもらう」
「ああ。けど俺も言っとくけど、もし影虎が曲がったことをするようだったら、その時は俺が全力で止めさせてもらうからな」
「……肝に銘じておく」



******



こうして、俺は元の世界に戻らず、この世界にも留まらず、この迷宮時計の戦いをもう少し続けることになった。

そうそう、最後にこの世界の顛末について少し触れておくと、劇場にいた人達は皆、無事元に戻れた。
あの女の子、すみれちゃんはお母さんと再会し、その後駆けつけた魔人公安のお父さんと泣きながら無事を喜び合った。
今度、家族で映画を見に行くらしい。きっと幸せな未来が待っているだろう。

事件を引き起こしたあの怪人、仮面のファントムは宇宙に飛んで行った後、
たまたまスペースコロニー、北海道に衝突して、そこの住人に拾われた。
すっかり憑き物が落ちたのか、今は現地生物に囲まれながら農作業に従事しているそうだ。

今、俺は虎のファントムに乗りながら、時空間を飛んでいる。
この更に先には何が待つのか。もしかしたら、いつか母さんに会える時があるかもしれない。



これが俺、菊池一文字と、この不思議な少女、紅井影虎――――。

そしてこの迷宮時計の戦いを経て出会う様々な人達との――――。

青春と、冒険の物語の始まりだった――――――。



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まだ間に合う!! ダンゲロスSS4と並行して開催されている青春冒険譚!!
青春冒険学園ダンゲロス!! キャラクターエントリーは11月30日(日) 23:59まで!!
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初心者の人でも大丈夫!! GK陣があなたの青春と冒険を実現すべく、投稿された能力を計算、調整します!!

特設wiki URL:http://www62.atwiki.jp/dngjuvenile/
キャラクターエントリーフォーム URL:http://ws.formzu.net/fgen/S82254053/

普段のダンゲロスと違い、キャラクターが死ぬことは基本的に一切なし!!
さあ、君も青春と冒険の物語へ一歩踏み出そう!!

最終更新:2014年11月28日 18:31