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第二回戦SS・高速道路その1


 某世界長野県、某時間にて

 私は、作家。
 既にお気付きの方もいるでしょうが、新本格派に属する電気椅子探偵でもあります。
 この物語を進めていく上で進行役を務めさせてもらうことになりました。
 読者である諸姉諸兄らには短い間ですが、御付き合いいただけると幸いです。

 え? 三千字探偵と向き合う上でこんな無駄な口上に字面を割く余裕があるのかと?
 安心なされよ。これから追々明らかとなります。

 しかして、初めに断わっておきますが、これは探偵達の物語。読解には労力を有するでしょう。
 その意味で言えば、モニター越しに、網膜を挟んで脳のニューロンと電気信号をやり取りをしている
 あなた方にも探偵になっていただきたく思います。無論、断るのは自由ですが。
 ただ、退席されるその時は、躊躇なくこのスイッチを押させていただきます……。

 何のスイッチかはわかるでしょう?
 あえて言います。
 この物語は私からあなた達に叩きつけた挑戦状であると。
 謎を解いてください。


 推理の舞台は某世界・京都市内。
 古く、すめらみことを戴く洛陽に置いて、景観と防衛から近代以前の交通手段の乗り入れが
 禁じられて久しい。
 代わりは何か、馬車? 牛車? それとも駕籠とでも言うのだろうか?
 いいえ、市中を行き交うのは襲歩にして分速八〇〇mを優に越える人力車の群れでありました。
 おや、四条通を十分(じっぷん)で縦断するには十分(じゅうぶん)ですね。

 こう書くと、ただのリキシャにそれほどの速度が出せるものかとたじろぐ方も多いでしょう。
 では、車夫を見てみるとしましょう。おや、一つ目、一つ手、一つ足までいますね。
 おやおや、異相異形の者どもがたーくさん。

 これは北国を覆った大変革以後、日ノ本に馴染めない妖怪共に、政府が用意した職業安定策の名残なのです。
 そう言うと聞こえはいいですが、結局は硬軟を織り交ぜつつも、強面な帝國の功罪なのですね。

 かつて国外から押し寄せた「共産主義と言う名の妖怪」の猛威の前に、業を煮やした政府は
 同属のあやかしどもに、公民権の一部認可を餌に、前面に立つように命じました。
 それに応えた妖怪たちは勇敢に戦いました。
 が、旧ソ連の崩壊をして冷戦に一応の決着が付いた時、妖怪の個体数は激減していました。
 夷をもって夷を制すは、本邦の倣いと言えど、当事者にとっては哀れに見える末路でしょう。
 かつてのような回復は望めないでしょう。この世界のこの国において、妖怪と言う民族は消滅したのです。



 馴染おさなは青春派の探偵である。
 青春派とは大なり小なりれ公益を望む探偵として珍しく、私事の解決を専らとすると言う。
 少年期を追い続け、やがて追憶となり失われゆくそれを求める彼ら彼女らの寿命は、カゲロウのように儚い。
 目的を見失って他流派へ移籍が行えなかった青春派は遅くて二十で、早逝すると言う。

 馴染おさなは推理する。
 探偵たる者、推理をしなければならない。
 今まで戦いで、推理と言えるほどの思考をしてこなかったのは、己が探偵であることから逃げていたからだ。
 目先にある【迷宮時計】と言う希望に縋るあまり、本当の自分を取り戻すと言う目的を見失っていた。

 馴染おさなにとっての始まりの日、そして――にとって終わりの日は十七年前。
 彼女が魔人能力に目覚めたその日にまで遡るだろう。

 名は体を成すと言うが、彼女の場合は違う。正しくは、彼女、今は名も知れぬ少女は魔人能力によって、
 能力に見合うように存在を塗り替えられた。

 誰かの幼馴染になるよう記憶を割り込ませる能力の持ち主は、まず自分自身が誰かの幼馴染と言う
 無色透明の存在にならなければならない。

 最初の幼馴染「秘密 基地夫」を得た瞬間、彼女はかつていただろう親兄弟も、親しい友人も、
 もしかしたらいたかもしれない本当の幼馴染も、そして自分自身ですらすべてを失った。

 そう、いたかいないか、それさえわからないのだ。
 基地夫を泣きながら殺したあの日、そうすれば元に戻れると信じた。
 「馴染」と言う見覚えの無い表札の家に帰って、震えたあの日の夜、透ける掌を見た。
 もう自分が誰かの幼馴染でなければ生きられない身体になったと知った時から、
 もうここまでの道筋は決していたのかもしれない。 

 あれから何人の幼馴染を得ただろう?
 あれから何人の幼馴染を殺しただろう?
 その度に空っぽの私は満たされる気がして、それでも――!
 今の私は死ぬために生きているのかもしれない。
 今の馴染おさながそうあるように、かつての自分に食い潰されて。
 それでも、私は生きなければいけない。答えを見つけなければいけない。私は十七歳、もう時間が無い。

 ジュブナイルを号する探偵達と、この戦いの中で幾度かすれ違ったことがある。
 しかし、幸か不幸か彼らとの交戦に至る事はなかった。
 得意の闇討ちで始末するチャンスは、いくらでも、あったのにだ。
 怖かったからだ。私の浅ましさが暴かれ、糾弾されるのが。
 けれど、決断しなければならない。ここが勝負どころだ。私は探偵を破り、自分の正体を知る。

◆ 

 料金所を後背にした馴染おさなは定石通りに幼馴染を獲得する道を選ぶ。
 見れば、出待ちの俥(くるま)が出待ちをしているではないか。
 背後で逃げ惑う漢どもに押されるようにして、おさなは手近にいたモノの名札を見、選好まない。

 ここで立ち往生して、射抜かれては元も子もない。
 向こう側から本格派の推理光線がぴゅんぴゅんと放たれる。
 中央分離帯を挟んだ距離で、今は大した威力にならない。
 だが、段々と精度が上がっている。探偵に情報を与えてはならない。時間は探偵の味方だ。

 おあつらえ向きな予感があった。十分以内で勝負を付けなければ、とてもまずいことになるだろう。
 根拠はないけれど、確かに忍び寄る死の気配の感知――それは探偵と言う職業の特権と言っていい。
 その上で思い入れなく、打算で選んだ探偵と言う肩書だからこそ、同じ連中を出し抜ける。

 このハイウェイは一方通行だ。どこまでも追いかけてくるがいい。

 「指紋?」
 改めて呼んだら探偵が好みそうな名前だなと、おさなは思う。
 次が妖怪ハイウェイって聞いた時はどうしようと思ったけど、なぁんだ。
 結構メジャー言語じゃない。馴染おさなは語学に堪能であった。

千五百


 元始、探偵は実に太陽であつた。真正の人であつた。
 今、探偵は月である。 ――伊藤日車


 「ライラックの花言葉は『友情』」
 感情と共にぺたりと貼り付けられる押し花は借りものであります。
 本家本元には及ばず。されど、名も知らぬ車夫に一時の誼を通じる程度は問題なく。
 山禅寺様を呼び寄せます。待てず、冷たい座席にもたれ掛かり、押し付けた頬が気持ちよい……。

 通常の推理光線と比べ、射程と威力に勝る一方、冷却時間を置かなければならないのが難点でした。

 「山禅寺様、こちらです」
 言う間にも、連射する向日葵はフル稼働、眼を見開いて過熱状態です。
 「ギボウシの花言葉は『冷静』」
 自身に貼り付け、強制冷却を試みます。
 無意識下にストッパーがかかり、外輪の舌状花が折り畳まれ、向日葵を閉じてゆく。
 眠い……、努めて、自身は右目が半開きになる程度に抑えましたが、推理力は激減です。
 人口密集地帯からは追い払いましたが、ここからは戦車戦、ならぬ俥戦ですか。

 青春派探偵にして連続殺人者――、馴染おさな(仮)。
 探偵の網にかかり、仔細を割り出せたのにこれ以上の理由があるでしょうか。

 つ、お二人の話に混じるにはまだ放熱が――。
 「時計草、木君も協力を」
 努め意識を保ちながら、髪に呼びかける。外縁に位置する銀糸が大きく膨らみ、熱を外部に逃がす。
 続き、上半身の露出面積を増やして体温を下げる。

 やはり、次期人工探偵は髪をもっと重視するように献策せねば。
 探偵人が顔色一つ変えず、撃ち抜く推理光線に比べ、日車はあまりに危険であります。

 「ねぇ、向日葵ちゃん。やっぱり馴染おさなは――」
 「貴女も……その名前で日車を呼ぶのですね……。およしくださいませぬか?」
 かくりと、日車の首が倒れます。どうか、わかってくださいまし。

 日車の名は伊藤日車です。
 姓を賜っておきながら迷路様から逃げ回るのは単なる我儘でありましょう。
 本来なら、本格派一丸となり挑むべき事件に、これは裏切に等しく、けれど心奮いました。

 日車は真実の光を受ける衛星でなく、自ら真実の光を放つ恒星を目指すと、誓っています。
 故に、誇るべき探偵の御方の隣に、安穏といるを望まないのです。

 矛盾でしょうか? されど【迷宮時計】の正体を思えば、この事件は日車単独で解決に導くが得策。
 余分な日の粉が本流たる花鶏(あとり)様、我等すべての姉様(あねさま)に降りかかる、
 そのような事があってはならないと、日車はただ、ただ信ずるのです。



 「たぶん、馴染おさなの正体は【幼馴染】のイデアだね」
 『ショウ子、どういうことだ?』
 「ふっくんに合わせて時間を取って言うけどさ【馴染おさな】と言う人間は最初から存在しないんだ。
 戸籍も親族も、何もかも、十七年前に今の十七歳の姿のままで何も変わってない」

 『そうは言うが、イデアがそんな簡単に人の形を取って現われるものなのか?」
 「例は少ないけど、皆無ってわけじゃないよ。【幼馴染】なんて中二力の高い案件は稀だけどね。
 作為を感じるのは確かだけどね……。で! 
 合わせて考えるとこの戦いは探偵を葬り去るための妖怪の罠!?」

 『待て、色々すっ飛ばしてはいないか? まだ決まったわけでない。
 けれど、同じ探偵として凶行を繰り返す彼女のことは「『眠らせて』あげないと」『やらなくては』!」
 唱和するその声は、どこか自分達に言い聞かせているような、そんな響があった。

 ここで冷却が終わった人工探偵が話に加わる。 
 「馴染おさなが本当に【幼馴染】のイデアだとするなら、彼女が幼馴染を求めるのは最早本能のようなもの。
 概念が脳や心臓を潰した程度で止まるとは思えませぬな」
 「それは違うわ! 人の姿をしているからこそ、付け入るスキがあるのよ!」
 むむ……、同じ探偵同士、互いの推理を一歩も譲らない。
 思えば、この俥は呉越同舟、同床異夢。打倒馴染おさなの目的が一致した一時の協力関係に過ぎない。

 互いの性格上、殺し合いにまで発展するとは思えないが、この三千字と言う短いハイウェイの途上で
 どちらかが棄権するとも思えなかった。危機が迫っている。
 【山禅寺ショウ子に三千字以内で事件を解決させないと亜空間を含むすべての多次元並行宇宙が消滅する】
 この事実に!
 これは探偵達誰しもが意識の深層で理解していた事実。
 「「「何があっても三・千・字!絶対詰めるぞ三・千・字!!」」」
 だから、三者三様の探偵の声がハモったとしてもなんら不思議なことはないのである。

 合わせて、この場唯一の良心が呟いた一言が掻き消されたのも必然である。
 『おかしい。誰かに見られている気がしないか?』
 今は娘のマスコットに身をやつしたメフィスト派探偵の残滓、かつて名探偵として名を馳せた
 山禅寺梟奇(キョウキ)の面目躍如であったのかもしれない。

 ここで言う見られているとは視線とのことではない。枠外からの視点である。
 『これは、新本格派? それもかなりの大物……?」
 しかし、次に掻き消すのは射線、銃声が響く――。



 ご名答。推理の至らぬ、勘であってもよくぞ私の存在に至りました。
 ご察しの通り、私は新本格派人工探偵のまとめ役、遠藤花鶏と同じ「四季士(しきし)」の一人
 「工藤之新本格月宮ヶ雷花(くどうのしんほんかくつきみやがらいか)」です。

 月面で作られたはじまりの人工探偵の四分の一にして、第一等級探偵。
 誇る事ではないでしょう。あなた方は知らないのですから。
 むしろ、私の場合は百を越える変名で世を惑わしてきたその事実の方が有名かもしれませんね。
 同じ県にいると言うのに、監禁されて会いに行くことも叶わない私の著作(こども)達、人の間に
 子の為せない私の代償行為と言えば聞こえはいいですが、結局は自己満足なのですね。

 そう、たとえば私の花冠「ヒガンバナ」、その緋色を冠した映画の脚本。
 去年後悔されたそれなどは――。

 おや、なんでしょうね。その顔はうんざりしている。
 作家の自慰行為を見せられて、早くスイッチを押したい顔をしている。
 ふふ、そうですね。秘すればこそ花、秘所はみだりに明らかにするものではないのですから。

 さて、三千字探偵への対処方法はもうおわかりになられたことでしょう。
 神の視点の導入です。こうすれば、同じ三千字(=十分)と言う時間の中、焦点人物三人を別々に
 書き、同時進行させる。加えてそれを俯瞰する私の三千字を加えれば――どうです?

 確かに三千字でありながら、最大で一万二千字のSSが出来上がると思いませんか?

 まぁ、上(かみ)の視点と言っても、あの世界が仮に三次元だとすれば、私がいるのは精々三.一次元程度
 なのかもしれませんけどね。そんなに上等なものではありません。
 探偵達にあなたたちが創作上の人物であると教えてあげるくらいのことは楽勝ですが。
 それは別の機会に取っておきましょう。

 さて、謎が一つ解決したところで私からの頼みなのですが、聞いてくださいますか?
 聞いてくださらないでも結構です。あなたは読んでいるのですから。
 ふふふ、日本語とはこういう時便利ですね。
 頼みとは幕間で投稿された暗号を解いて頂くことなのです。
 おや、お前も探偵なのだから自分で解けばいいだろうと?

 残念。
 それが出来れば良かったのですが、流石の私も暗号本文がわからないことには解きようがないのですよ。
 ご丁寧にも「引用しない幕間SS」と書かれてしまっては、ね。
 ヒントは「いろは歌」です。それと「た抜き」などと言う安易な考えは捨ててください。
 では、最後に。

二千


 馴染おさなが高速道路で志向した戦闘とはすなわち銃撃戦である。
 鉄の塊が疾走する中で近接戦を挑むのは無謀を通り越して、愚行だろう。
 その目論見は迷宮時計が案外良心的であったことを差し引いても変わらない。

 忘れてはいないだろうか、この俥の動力は生き物であると言うことに。
 BANG! BANG! BANG! 
 ここはいかしたカーチェイス、ワイルドな幼馴染もまた正道である。
 毛むくじゃらの手に汗握る、白い肌は赤みを増す。青年「シモン」はその光景に胸高鳴らせていた。
 たとえ、自分がしがない車引きだとしても今は白馬の騎士のように思える。
 吊り橋効果も合わさって、健気な幼馴染が鉄火場で見せた姿は、演技込みで彼を魅了する。
 馴染おさなの幼馴染の腕は一流である。

 「指紋! 前! (※日本語訳)」
 だが、銃の腕は三流もいいところのへたっぴいだ。前から飛んでくる探偵達を撃ち落すことも出来ない。

 ところで彼女の見通しの甘さを指摘するのは早計だろう。
 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、その格言は当たっていたのだから。
 何発目か、二人の探偵が乗る俥の車夫、その額を見事、撃ち抜いていた。
 身の丈2mを越す丈夫はどうと斃れる。探偵と同じ赤い血であった。

二千


 対する探偵達が志向したのは近接戦である。
 推理光線の射程が通常1mと言う近距離型であるのも推理戦闘術(バリツ)との併用が前提であるからに
 他ならない。探偵は正面からの戦いを好む。狙撃などもってのほかである。

 探偵は横転した俥を横目に二手に分かれて跳躍する。義経の八艘飛びの如く、狙うは走る俥である。
 その身は驚くほど軽い。
 ショウ子は攻撃力と防御力に15Pずつ振り分け、優れた身体能力と銃弾を跳ね返す防御力を実現!
 人工探偵は元々がイネ科の植物を原料としているだけあって、比重が軽く、水に浮く位である。
 加えて『オリカミ』の身体強化、寡黙な探偵も今は仕事をした。

 俥から俥へ、目指すは前へ、前へ!
 射撃姿勢の問題から常に前方を志向するおさなは、何を思ったのか。
 幼馴染に引かれて歩く自分への憤り? 自分を追い求める幼馴染への怒り?

 その思いを推理することは容易い。
 なぜなら、馴染おさなはここまで自分を引っ張ってきた幼馴染を後ろから撃ったからだ。
 「ターニャ……」
 青年が末期に遺したその言葉は、母親か恋人か、それとも本当の幼馴染のものだったのかも知れない。
 妖怪の青年――、いや児戯はよそう。
 ロシア革命を機に帝国に亡命した白系ロシア人の末裔はこうして、静かに息絶えた。
 妖怪と言うのは大方、性格の悪い探偵の高官が付けた蔑称だろう。


 さて――。
 ここからが真実の照覧です。
 誰が言うわけでなく、彼女達はその存在をもって照明する。
 真実、今睨み合っている中に探偵以外の生き物はいないのだから。

 本来、音の速さでしか伝わらない真実を文書と同じく光の速さで伝える術。それが推理光線である。
 最早、「高速」なんて遅い表現をショウ子は使っていられなかった。
 そう、ここは「光速」道路、光の速さで進む真実のロードの中では、今まで走り回っていた車夫達は停止し、
 乗っていた観光客たちも下車して探偵達の推理仕合を固唾を飲んで見守らざるを得ない。
 これこそが解決編に入った探偵の舞台構築力と言う物である。

 人力車のスプリングによって、ぽーんと弾き出された馴染おさなは宙を舞う。
 探偵達も軽やかだが、それを越えて、まるで質量が零であるかのように、ふうわりとした放物線だった。

 着地と共にスカートの裾を摘まんで一礼。
 「青春派探偵、馴染おさな」
 答礼するのは探偵三者。
 「メフィスト派、山禅寺ショウ子」
 「本格派、伊藤日車」
 「法廷、派。千葉時計草」
 「「「「参ります!」」」」

二千・二千 


 「「「「何があっても三・千・字!絶対詰めるぞ三・千・字!!」」」」
 五人の探偵が唱和した。勿論、一番大きな声はショウ子だ。
 宇宙なんて知らない。自分達の世界を守りたいその一心が叫ばせたと推理できる。
 そう、誰にだって譲れない想いがある。

 第一声は本格派探偵だった。
 「馴染おさな、貴女は【幼馴染】のイデアですね!」
 確信を突いた一言は極太の推理光線となり、おさなの上半身を通過する!
 『やったか!?』
 「ふっくん、それフラグ!?」

 漫談は置いといて、戦場の霧が晴れた時、立っていたのは無傷……、いや。
 多少輪郭がぼやけているが、五体満足な馴染おさなだった。
 「推理を外した? いや、ならばなぜ命中しない! 今のは必殺の一撃だったはず。
 それが減衰されたということは、まさか――!」
 『自身で推理に至っていたか、既に周知の事実だったか、もしくは――」
 「その両方だね。く、こんな……」

 あの姿を見ればわかる。形而上の存在となったおさなには攻撃にポイントを全振りしたとしても
 届かないッ! 推理光線の要である向日葵は頭を垂れ、本体は必死に意識を失うまいと耐えている。
 加えて。

 「ねぇ、遠藤之本格中梅ヶ日車(えんどうのほんかくなかうめがひぐるま)さん、久しぶり、元気してた?」
 極限まで精神を削られた日車が、これに抗することが出来るわけがなく――。
 「くそっ、醸造時の名前まで当てられた!?」

 繰り返した夏の日の向こう、日々(デイズ)を送ってきた少女。
 そろそろ、青い果実を捨てて円熟した収穫の秋を迎えてもいいんじゃないかな? 
 病気になりそうなほど眩しい日差しの中、日車は陽炎の声を脳の中で聞いた気がした。

 『あれは――探偵光線! まさか、完成していたのか!?』
 「ふっくん、どうしたの!? あれが――」
 『逃げろ、ショウ子! 殺されるぞ!」 

 日車の右眼、光が集まっていた。
 理解する。あれが放たれたら自分は命はないと。
 「……、ふっくん」
 「ショウ子?」
 山禅寺ショウ子は、沈黙を好まない。その分、終わりが近づくからだ。
 けれど……、沈黙から、無から生まれるものも、ある。






























 空間(スペース)を浪費して推理を生み出す! メフィスト派の秘奥「 」。
 「迷宮時計は願いを叶えないよ! なぜなら だから!」

 その真実は今度こそ、おさなを貫く。陽炎のように消えてゆく。
 その光線はショウ子の、肩を貫いた。激痛の余り意識を手放す。
 その高熱は日車の、脳を焼き切った。死んでいることは明白だ。

三千・三千・三千


 ご愛読ありがとうございました。
 目障りな私を抜きにすれば、立派な探偵小説でしたね。
 え、探偵光線って何? ショウ子の推理は? 結局、誰が勝ったのかって?

 質問が多いですね。
 でも、ひとつずつお答えしますか。

 Q.探偵光線って?
 A.人間誰でも体内に存在する探偵粒子を収束加速して打ち出す光線です。探偵には特効になりますね。
 探偵粒子が何かと言えば、ビタミンD。つまりはビタミン・Detective(ディテクティブ)のことです。

 Q.ショウ子の推理は?
 A.本文に書かれている以上のことがあると?
 私が想定する馴染おさなの倒し方としては、おそらく暗号の解読結果と大体同じだと思いますよ。
 あれは所詮、誰にでも思いつくようなことですから。それでも、私から隠そうとした誰かさんには
 ご愁傷様と言っておきましょう。反時計に順ぐり回る性悪女「時逆順」とかね。

 Q.結局、誰が勝ったの?
 A.それが、私からあなた方への挑戦状です。
 コメントに誰が勝者であるかを記入してください。
 もし、このSSが何かの間違いで最多得票となり、次の戦いに歩を進めたとして。
 作者はコメントで最多となったキャラクターを主人公にSSを書くとお約束します。
 一応、誰が勝ったのかについて、作者の中では明確な答えが決まっており、理由も一言で説明できます。
 なお、万が一キャラクターが同数となった場合は、それが三人だろうが全員を起用します。

 さて、今度こそお別れの時間が来たようです。
 何しろ三千字制約が課せられたのは私も同じ。これを一文字でもオーバーしてしまっては
 亜空間を含むすべての多次元並行宇宙が消滅してしまいます。

 それでは、お手元のスイッチをどうぞ。
 それで、私の座っているこの電気椅子に電流が流れる仕組みになっています。
 ここまで御静聴頂いた読者の方には名残惜しいようですが、それで終いといたしましょう。





























 ふふふ、いつからあなたが目を離した時も私達の世界が変わりなく続いていると思いました?
 お手元のスイッチを押せば、私は忘れ去られる。つまりは、この三.一次元世界も……。
 なーんて、私もまだまだですね。フィクションの中の登場人物は面白ければいつでも蘇るのですよ。

 あ、ところで表現は正確を期さなければいけませんね。
 本当はお手元のスイッチを押すと、私の座っている電気椅子の電流が遮断される仕組みになっています。
 それでは、次回作――、遅ければ六年後、早ければ来月にはお会いしましょう。

三千