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実録!実家出産のススメ!


 ――本日のお相手は青森にお住まいの子沢山 食兵さんです。よろしくお願いします。
「よ、よろしくお願いします」
 ――緊張していらっしゃる?
「ええ、そりゃね。家内ならともかく、私がインタビューを受けるなんて初めてですから」
 ――難しい話はしませんので、リラックスしてください。ありのままで大丈夫です。
「それが難しいんですけどね(笑)」
 ――それではまず、奥さまの実家出産に賛成した理由をお教えいただけますか?
「はい。やはり、出産にあたっては家内がのびのびとリラックスできる環境が良いと思いまして。
 ですが、当時の私は人骨芸術家の卵。北海道ヒヨコの雌雄鑑定で弾かれた雄ヒヨコを確実に焼殺するアルバイトでどうにか生計は立てていましたが……それでも余裕はありません。
 殺人事件があればすぐに材料拾いに行ったりしないといけません。それで家を空ける事も多いし、アルバイトでもサボリ扱いで減給を食らったりして(笑)」
 ――やはり奥さまのために?
「ええ。……って言い切れれば良いんですけどね(笑)あ、もちろんそれもちゃんとした理由ですよ(笑)
 私は昔から家内には頭が上がらないんです。妊娠で色々と不自由をさせて、イライラをこちらにぶつけられたりしたら、たまりません」
 ――奥さまもこのインタビューをお読みになるかもしれませんよ?
「あ、それはまずいな(笑)今のはオフレコで(笑)
 そういう訳で、お互いの利害が一致したから、家内には一時的に網走の実家に帰ってもらったんです。あそこなら運動相手にも事欠きませんしね」
 ――奥さまがいない間は大変ではなかった?
「もちろん、大変でしたよ。家内のやっていたこと全部、私がやんなきゃいけませんからね。
 特に料理が辛かった。家内は北海道産の米でご飯を炊いてくれるんですが」
 ――北海道産の米?
「ええ。コシヒカリを」
 ――北海道産のコシヒカリ!?
「ああ、しっかりしてください。そんな、白目にならないでも。大丈夫です。ここに北海道産コシヒカリはありませんよ」
 ――取り乱してしまいました。すみません。
「やっぱりみんなびっくりしますよね。この前も同業者にこの話をしたら心停止しちゃって(笑)今では材料争いが起こった時の切り札ですよ(笑)
 ともかく北海道産コシヒカリが食べられないのが一番つらかったんです。私じゃあ北海道産コシヒカリに触る事すらできないでしょうからね。男は胃袋かタマを掴めって、本当ですね(笑)あ、下品だったかな。今のもオフレコで(笑)」
 ――やはり大変なのでは?
「ええ。それでもね、家内が元気な子供を元気に産んでくれるためと思えば、普段よりマズいメシを食べるくらいどうってことないですよ。
 娘たちの顔を見た時それを確信しました。だからね。男なら、男だからこそ、変な見栄や意地を張らずにパートナーと腹の中を明かして、実家にも頼って、義父さんにも頭を下げて。そういう事をするべきなんじゃないですかね。
 実際、もし無理をしていたら、家内も娘たちもこの世にいなかったと思いますよ。あんな事、網走の義祖母さんじゃなきゃ対応できなかったんじゃないかな」
 ――最後に一言いただいても?
「家内と娘の満腹のために生きるのも悪くないですよ(笑)」
 ――本日はためになるお話、ありがとうございました。

・追記
 子沢山 食兵…青森県在住の人骨芸術家。代表作に『春野原』『はじける命』『色盲画家に捧ぐ桜吹雪』など。『娘に身体強化能力を持たせる異能』を持つ魔人。
 妻の子沢山 鎌江は『出産前後の三日間カマキリになる異能』を持つ魔人であり、生み出したタマゴから生まれたカマキリは彼女の能力が切れると同時に人間となった。なお、子供が全員女子なのは、身体強化能力を持たない男子はみな食われたからと思われる。
 食兵の娘たちは『身体強化百姉妹』と呼ばれ、現在東京の小さな女子校を姉妹のみで自治している。

―――――
「ってことで、ボクらの子どもを作るのに大丈夫な環境か知るためにキミの実家をお邪魔したグエーーッ!」
 私はつい現在の幼馴染、子作 太陽が買ってきた『大丈夫? ファミ2のEGG CLUBだよ?』を丸めて口に突っ込んだ。太陽は死んだ。こいつは基本的に完全無敵だが喉が弱点なのだ(例えば喉うがいで溺死しかける)。
「あ、やっちゃった」
 まあ、仕方ない。ここまでキモい奴だとは思わなかった。金持ちだし一人暮らしだし、居心地は良さそうだったのに、残念だ。馴染 おさなはため息をつく。
(……それにしても)
 おさなは太陽を殺した『大丈夫? ファミ2のEGG CLUBだよ?』のページを開きなおす。
 身体強化百姉妹。東京の小さな女子校を自治している。
 百人の姉妹という事は、趣味嗜好も似通っているのではないか。
「調べる価値はありそうかな……」
 呟きながら、おさなはちゃっちゃと荷物をまとめ始めた。