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第一回戦SS・テーマパークその2


暴力。暴れる力。制御不能の力。

青空羽美は考える。私の魔法と暴力の違いは何だろう。
全力を込めて放てば3発で高層ビルを平らにし、全力を込めて殴れば小型ミサイルに匹敵する破壊を齎す。
それは個人の持つ腕力というより、国家が所有する兵力と同じ範疇に分類されるものであろう。
羽美は己の掌をじっと見つめた。

かつて、魔法の力が例えようも無く恐ろしく感じられた事があった。
世界の敵にも比肩し得る力が、何かの間違いで市井に向けられたら。
あり得ない事だとは思いつつも、その考えは呪いのように脳裏に絡みついた。

「魔法少女ってのはさ、夢と希望を叶える存在じゃなきゃいけないと思うんだよね」

いつの事だったか、赤髪の少女は私の葛藤に対してそんな風に言った。

「世界を終わらせようって連中は、当たり前だけどどいつもこいつもバカみたいに強くってさ、
 そんな奴等に対抗しようと思ったらこっちもバカみたいに強くならなきゃいけない。
 現実世界の戦争と同じいたちごっこだよね」

私は口を挟まず、珍しくシリアスな微笑を浮かべて喋る緋赤の唇を見つめていた。

「確かに、大きな力は大きな破壊を生む。力の振るう方向を間違ったら大変な事になる。
 でも、私達には『ある』でしょ。魔法少女としての、カッコたるプライドってヤツがさ」

緋赤は自らの薄い胸を拳でどんと叩いた。
瞳の奥で強く光る堅い意志が、私をまっすぐ貫いたような気がした。

「魔法少女は夢の担い手、希望の使者。皆の平和を、大切な願いを守る者。
 その想いを忘れなければ、羽美ちゃんが道を踏み外す事なんて絶対ないよ。
 それに何より――」

羽美ちゃんは努力を実らせる魔法少女だもん。
そう言って少しはにかんだように笑う緋赤の顔が、今も瞼の裏に焼き付いている。
快刀乱麻を断つがごとく、勝利を体現する魔法少女は私の悩みをあっという間に解きほぐしてしまった。

私は掌を強く握り締める。
そうすると、3年前のあの日、この手を握り締めていたあの少女の冷たい感触が
にわかに蘇るような気がした。柔らかくて優しい、拒絶の感触。
3年前に比べれば、青空羽美は格段に強くなった。
当時の緋赤やさつき、和子たちと比べても決して劣りはしない……寧ろ単体の戦力では上回っているだろう。
自惚れでなくそう確信する。それだけの力を付けたつもりだ。
それでも、まだ足りない。あの3人全員分の力には遠く及ばない。
――で、あるならば。
羽美は握った拳を胸に強く叩き付けた。かつて緋赤そうしてが己の意志を示したように。
この戦いの中で強くなろう。彼女達に追い付く為に。彼女達をぶん殴る為に。
歯が折れるぐらいのパンチを見舞ったら、窒息する程に抱き締めよう。
青色の魔法使いは拳を胸に当てたまま、静かに眼を閉じた。
転送の時間が、目前にまで迫っていた。










☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 









地上70メートル。
ボーダーTシャツに空色のパーカー、紺色のショートパンツというラフな服装に身を包んだキュア・エフォートが
立て膝を付いている大観覧車のコンドラの高度である。
テーマパークのほぼ中央に位置するそこからは、園内の全容が一望出来る。
彼女の持参した『大荷物』……頑丈なスーツケースは、ゴンドラ内の座席の上だ。
羽美はじっと眼下を見据え、敵となる人物の姿を探していた。
魔力を体の一部に集中させる『キュア・コレクト』の応用。今の羽美の視力は野生の隼すらをも上回る。
『キュア・サークル』でテーマパーク全体を覆い、体感的に索敵出来れば手っ取り早いのだが、
それを実行出来る程の魔力は彼女には無かった。
互いに持ち合わせた時計の性質が噛み合ったか、あるいは両者の思惑が偶々合致したか、園内に一般人の姿は無い。
好都合だと思った。これなら何に遠慮する事も無く魔力を行使出来る。

やがて東の方角、サーカステントの入り口から1人の人間が現れた。咄嗟に焦点を絞る。
それは大柄な男だった。学生服の上からでも見て取れる発達した筋肉。逆立てた髪。
はっきりと見開かれた猛禽類のような両眼。紅く渦巻く瞳。薄く笑む唇から覗く犬歯。
状況的に、この場に居るというだけで敵である事は明らか。
何よりも、この距離からでも解る昇り立つような殺気。
それでも羽美は遠距離からの狙撃という選択肢を一番初めに除いていた。
相手が誰であれ、その人間の性質も見極めぬ内に攻撃するような真似は彼女の信条に反していた。
結局殺し合う事になろうとも、せめて納得の行く形で戦いたい。後ろから不意を打つような事をしては
どちらが悪だか分かったものでは無い。
その信条は、言ってしまえば甘さである。
だがその甘さこそが、彼女を魔法使いたらしめる確固たる一因でもあった。
どんな事があっても揺れない精神力こそが魔法の源。その精神力を高める為の公平さなのだ。

故に羽美は懐から弾の無い拳銃を引き抜き、銃口を下に向けたまま魔力の充填を開始した。
いざ戦闘に突入した際、確実なる先手を取る為の準備を。
魔力は掌から放出する事も可能だ。拳銃を使うのは単純に気分の問題である。
魔法に限っては、その気分が威力に直結する。

同時に、男が――撫霧煉國が、ご馳走の匂いを嗅ぎ付けたかのように。
ゆっくりと観覧車の頂点へと顔を向けた。
赤と青の視線が交錯した。
男の表情が、薄い笑みからライオンが牙を向くかのようなそれへと。

「(気付かれた!この距離から!?)」

瞬間、男の姿が消えた。
否、突然の急加速で羽美の狭まった視界を振り切ったのだ。
降りるか、迎え撃つか。羽美は即断した。後者だ。
この立体的な環境を活かせれば、平地で正面衝突するより遥かに勝機は大きいだろう。
きっかり3秒後、影は観覧車の骨組みを峻烈な速度で駆け上がり、羽美の座すゴンドラへ支柱を軋ませながら着地した。
その鼻先に魔力を蓄えた銃口が向けられる。

「ハハッ!ハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハ!!!」

男は巨躯を捩(よじ)り軋ませ、真っ赤な双眼で羽美の蒼い瞳を覗き込みながら大笑した。
眼前に拳銃を突きつけられて些かの動揺も無し。羽美はその事実より、男の放つ尋常でない殺気に
全身の産毛が総毛立つような心地だった。これまで出会ったどんな人間よりも異質な男。
撫霧が着地すると同時、羽美の脳裏に雷のような衝撃が走った。魔人能力『闘神の庭』……発動。
不可視の障壁がゴンドラを食い止め、観覧車全体が派手な音を立てて停止した。

「なあ!お前魔法少女だろ!?使うんだろ魔法!魔法少女だろうお前!ハハハ!!」

互いに腕を一振りすれば首を刈れる距離である。
致命の間合いで、狂獣は心底楽しげに笑っていた。

「強ェんだろ!!」
「……私はもう魔法少女ではありません」

両の手で保持する拳銃は、撫霧に狂気に晒されてなお寸毫の振戦も見せない。
心中の動揺を露とする事は死に繋がる。実戦の最中、羽美が命を担保にして得た教訓である。
この時彼女は既に心中で強く命じる事により『闘神の庭』の能力の一つである脳内麻薬の多量分泌を停止させていた。
脳内物質の強力過ぎる作用は戦闘において判断を誤らせる一因となりかねないとの考えからである。

「魔法使いの青空羽美です。……戦う前に、一つお聞きしてよろしいですか」
「なんだ」

体内で暴れ狂う殺意を力ずくで押さえつけるように身を捩りながら、撫霧はかろうじて返答した。

「貴方がこの戦いを最後まで勝ち抜いたとして、その時何を願うおつもりですか?」
「闘争」

即答であった。

「果て無き闘争。強者との死合。俺の望みは未来永劫それッきりだ。納得したか?したな?
 じゃあ戦ろうぜ。なあ闘ろうぜ」
「ええ、十分に理解しました」

キュア・エフォートの眼差しが深く昏く沈んでいく。遥か水底を切り取ったような濃紺へ。

「――貴方を『世界の敵』と認識します」

勝たなければならない理由が一つ増えた。この男を放って置いてはいけない。

闘神の庭。老若男女の区別無く力を分け与える能力。
大量の脳内物質に闘争心を煽られながら、突然手にした強大な力を振るわずに居られる人間が
果たしてどれだけ存在するだろうか。
人は力を持つとそれを使わずにはいられない。それがどんな属性であれ、どんな種類であれ、試さずにはいられない。
もしもこの男が勝ち残れば、世界は狂気じみた闘争の渦に呑み込まれるだろう。
それは正しく彼女が倒してきた『世界の敵』と同じ行動原理だ。
意図的かそうでないかの違いこそあれど、この男もまた世界に仇為す暴力の権化。
あの娘達が守った日常と平和を破壊しかねない怪物。
それはキュア・エフォートが最も嫌悪する存在の一つだ。

「『キュア・エフォート ヴァルキリーモード』」
「それが『魔法』か」

凄絶な表情のまま、撫霧がぼそりと呟いた。視線は突きつけられた銃口に。
詠唱に対する咄嗟の反応?魔法の力は普通の人間には見えない。ブラフ。あり得るがやる意味は薄い。
一瞬の間に羽美の脳内で幾つもの疑問と答えが錯綜した。
撫霧は魔法が見えている訳ではない。彼に魔法の素養は無かった。
ただ、撫霧には視えていた。
羽美の重心位置、筋肉の緊張、腱の伸び具合、心拍数、呼吸のペース、視線の振れ方、その他無数の身体情報が。
そこから炙り出される事実。『闘神の庭』による肉体強化の影響を差し引いても不自然な力の流れ。
不完全なパズルを見て残りのピースを導き出すように、消去法的な選別の結果残った力の形が、撫霧には視えていたのだ。
羽美がその正解に辿り着くには瞬き一つ分の時間で十分だった。彼女の肉体もまた撫霧と同等の能力を獲得していたからだ。

答えを掴んだと同時に、彼女は躊躇い無く引き金を絞りつつ後ろへ跳んだ。
魔弾は溜め込んだ魔力と比して明らかに小さな出力で発射された。鋭く速い弾丸。
首を傾けて避わす撫霧。耳を掠めて魔法が障壁に弾ける。
ゴンドラを蹴りエフォートへ迫る。

「(恐ろしい程の反射速度)」

思わず溢れた思考とは裏腹に羽美は冷静だった。自分を追って跳んで来るのも想定通り。
神速で拳銃から体内に移動させた魔法力を解放。『エフォートモア』。ヴァルキリーモードの出力を上昇。
これ程の至近距離にあっては格闘戦に重点を置いたスタイルに移行した方が有利だ。
魔法の銃撃による消耗も無視は出来ない。それでも、魔法を感じ取っている撫霧に対しては
強大な魔力の宿った銃は牽制として有効と考えていたが、これは読まれていた。
だからこそ最小の動きで避わしつつ反撃に転じたのである。生死の際で躊躇無く己の思考に従う事の出来る胆力。
だが動きを読んでいたのは羽美も同じ。予測されても問題の無い行動を選んでいる。

獣じみた俊敏さで繰り出された隙の無い左ストレートを紙一重で回避しつつ更に後ろへ仰け反り、
続いて放たれた閃光のような右フックの狙いを外しつつ宙返りをうつようにして顎を目掛け蹴り上げる。
右腕で防がれたが、そのままガードごと吹き飛ばす。
魔法力での強化に加えて魔人として最高峰の肉体を得た今の羽美は、単純な膂力であれば撫霧を上回る。
逆さまに落下しながら照準を定める。空中では回避行動にも限界がある。
拳銃の持ち主……和子の冷徹な意志を体現するように、羽美は引き金を引いた。
射撃。回避。射撃。回避。射撃。右肩に命中。射撃。脇腹を掠める。射撃。回避。
射撃。右腕で弾かれる。射撃。左耳を裂く。射撃。回避。射撃。左太腿に命中。

空中で体操選手のように巨体を捻り、折り曲げ、あるいは広げ、
重力を最大限に利用しながら回避を続けた撫霧が受けたダメージはその実深刻である。
被弾した箇所は骨まで響く衝撃が走り、右肩は罅が入った可能性がある。
初めに喰った蹴りの影響も大きい。打撃に得体の知れない重さがある。

これが、魔法。

「ッ!?」

支柱に足を引っ掛けて天地逆さの状態になっていた羽美は、落下してくる撫霧を見て戦慄した。
急所に当たればそのまま墜落死しかねない弾丸の雨の中、彼は心から歓喜の笑みを浮かべていたのだ。
反射的に、真紅のベルトを引き抜いていた。最早それが届く程の位置に両者は居る。
居合い抜きのようにベルトを振る。魔力で強化されたそれは、鉄骨すらバターのように切り裂く恐るべき刃物と化す。

そのベルトを。撫霧はあろう事か、素手でいなした。
手の甲で滑らせるように、流麗かつ繊細な超精密作業。
完全に予想外の行動に、この一手で決めるつもりだった羽美の行動が一瞬遅れる。
銃撃は不可。致命にはなるまい。足を離して落下する?支柱を蹴って追い付かれる。
撫霧が空中で蹴りの体勢を取った。顎を踏み抜くように蹴り飛ばすつもりか。
ならばそれを避わしつつ起き上がって体勢を立て直す。
羽美は体を捻りつつ腹筋の要領で起き上がろうとした。出来なかった。

「(髪――)」

長い髪の先端が撫霧の節くれだった手に握られていた。自覚した時には既に遅かった。
蹴りの動作をキャンセルした撫霧が支柱に片足を乗せ、左手も同じく支柱を掴む。
存分に力を奮う為の体勢。撫霧の豪腕が閃き、キュア・エフォートの体が凄まじい勢いでゴンドラに叩き付けられた。
戦闘開始から数秒で、羽美は元の位置に戻って来た事になる。

普通の人間ならこれで即死してもおかしくは無いが、今のキュア・エフォートに取ってはかすり傷程度のダメージだろう。
撫霧は追撃すべく髪の毛を掴んだまま支柱を蹴った。赤い閃光。手に一束の髪が残る。
ベルトの一閃によって髪の先端を切断したキュア・エフォートが立て膝を着いていた。
返す刀で未だ空中に居る撫霧に切りかかる。いなされる。想定内。
撫霧が破壊されたゴンドラ内に着地する寸前。その瞬間を狙っていた。
ベルトを振った腕と交差するように拳銃が撫霧に狙いを付けた。
銃弾を避ければベルトがその身を両断する。王手詰み。

違和感に気付いた。視界の端、膝のすぐ前に何かある。
羽美はそれに気付くべきでは無かった。
でなければ今度こそ撫霧の急所を撃ち抜くか、ベルトで切断して勝利を収めていただろう。
身体強化によって鋭敏化した感覚がそれを許さなかった。

スーツケースが開いていた。中にあったものが散らばっている。
羽美の前のサッカーボール大の球体。ぐるぐるに巻かれた真新しい包帯の隙間から、
赤い短髪がいくらか飛び出ている。

勝利の魔法少女、キュア・ビクトリーこと御剣緋赤。
その頭部が転がっていた。










☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 









3年前。戦いの場に半日遅れて駆けつけた羽美の前に、3人の魔法少女の残骸が転がっていた。
敵と思しき死体もある。恐らくは相打ち。しかし羽美にはそんな事はどうでも良かった。
半ば茫然自失の状態で仲間の死骸を集めた。泣き喚く余裕などありはしなかった。
緋赤は首だけ。さつきは上半身を袈裟掛けに断ち割られた状態で。和子は右足だけだった。
羽美はそれらを上着に包んで家に持ち帰ると、全魔力を振り絞って魔法による保存を試みた。
正義感と倫理観に秀でた魔法少女たる彼女がそのような行動に及んだ心情を正確に理解する事は難しい。
少なくとも言える事は、彼女はそうしなければならない程に3人を敬っていた。愛していた。依存していた。
彼女達は羽美の目標であり憧れであった。それがこのような形で消失した事実を真正面から受け止めれば、
羽美の精神は二度と修復不可能な形で砕け散るだろう。彼女は無意識でそれを理解していたのかもしれない。

ともかく彼女は遺体の保存に成功した。「また私達に会える」。
緋赤の遺したその言葉だけが彼女の希望であり、願いであった。
そして羽美は生死をかけた戦いに赴く際には必ず頑丈なスーツケースを持参した。
それが一体どれ程の愚行であるかは自覚しているつもりだった。
多大なリスクは承知の上で、彼女の精神の支えとする為に。勝利の為に、約束の為に。
彼女は戦場にかつての友を連れて回った。
そして、守る物がある時のキュア・エフォートは、鬼神のように強かった。










☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 










一瞬。刹那。寸毫。どれを以て正解とするのかは撫霧には分からない。
つまりは凄く短い時間だ。それだけの時間を掴めれば、永劫を手にしたも同然だった。
キュア・エフォートの視線が下にそれたその隙は、撫霧の指先が少女の喉元を貫くには十分であり。
更に頚椎を直に掴んで捻り折る事も容易だった。

魔法の力は、精神力に大きく左右される。

「……ート、…ア゛……ィメ、ト、ゴッド……」

声帯を失った――どころでは無く、最早指先一つ動かす事すらままならぬ筈の少女が詠唱らしき言葉を呟き、
魔法の光を放った事も。
それに見合うだけの精神力を振り絞れば、また不可能では無い。

彼女を突き動かす願いが、祈りが、呪いと呼ばれるそれに近しいものである事に、彼女自身は気付いていただろうか。
捻じ折れた頚椎をバースト寸前の魔法で治癒しながら立ち上がろうとするその姿が、
希望の象徴とはかけ離れた存在である事に気付いていただろうか。

今となっては、もう分からない。

撫霧の足刀が魔法使いの首を斬り飛ばした。
青髪が宙に弧を描いて舞い、どんと鈍い音を立ててゴンドラに転がった。
少女の体が前のめりに倒れ、僅かに床を掻いた。
撫霧は心臓を貫こうとして、止めた。
羽美の懐からバシンと弾けるような音がして、撫霧の右手に何かが吸い込まれた。
掌を見ると、丸時計にベルが付いていた。時計の欠片が吸収され、進化したのだ。
彼は改めて少女を見下ろした。
遺された首の無い少女は、3人分に満たぬ死体を庇うようにして倒れていた。
首。上半身の一部。右足。

撫霧はそれらを一瞥すると、特に何の感慨も無く両手をポケットに突っ込んでゴンドラから飛び降りた。
頭の中は次に対戦する相手についての好奇心に満ちていた。





彼は死体には興味が無かった。