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第一回戦SS・教会その1


ここは荒廃した古教会、かつては信仰篤き人々が集い祈りを奉げた聖地であり、そこへ軍靴が響き渡る。

「随分と待たせるじゃないかね剣士よ?」
優に2mを超す大男は少し不満気な顔をして檀上に佇んでいた。

「やれやれ、私の(迷宮)時計は気まぐれでね、持ち主の意志を無視して時間を標示するから困っているんだ」
懐から取り出してみせた時計はチッ、チッと無機質な音を奏で時を刻んでいく。
時刻は深夜0時丁度、餓えた狂狼が獲物を狩り出す頃――――――――――

「まあ何だ、私は立ち話をしに来たわけではないのでね」
帯刀する斎藤一女の愛刀『摂州住池田鬼神丸国重』、鞘から抜かれ怪しく光るソレを、独自の型に構え臨戦態勢に入る。
この構えは、彼女が得意とする「左片手一本突き」を繰り出すのに適した型なのだ。

今にも飛び掛らんばかりの女剣士を前に、大男は「ちょっと待て!!」と慌てふためく。
「少しは我輩の話しも聴いては貰えないか?」
「・・・・・・・・・・・・良いだろう、話しくらいは聴いてやろう」
斎藤が愛刀を鞘に収めるのを見て、大男は話しを始めた―――――――――

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「我輩の名はチャンプ、人は敬意を払い我輩を『ミスター・チャンプ』と呼んでいる!!」
「ほう、そのチャンプとやらが私に何の用かな?」

大男、ミスター・チャンプ(以降チャンプ)はこう告げた、「我輩に勝ち星を譲っては貰えぬか?」と。
その一言で場が一気に緊迫感に包まれた、斎藤は腰の刀を抜こうとするがチャンプは「最後まで話しを聴いてくれ(汗)」と制止する。

「我輩が所属する、『代々木ドワーフ採掘団』と言う組織が有ってな、そこには優秀なメディカルスタッフやイタコ、介錯人が揃っている」
チャンプが言うには、勝負の敗者は介錯人の手に掛かるものの、勝者に『迷宮時計』が譲渡された後、蘇生施術を行い敗者を『この世界』に留められると言う物だった。
もしチャンプの発言が事実だとしても、例えチャンプの行いが正しくても、はっきりしてるのはチャンプを『勝たせる』と言う事。
だが、例え危機的状況に陥ろうと斎藤は己の信念を枉げない。

「言いたいことはそれだけか?」
「なっ!ちゃんと話しを聴かなかったのか剣士!?」
「聴いてたさ、様は貴様を『勝たせる』んだろ?」
「そうだ!そうすればお主も『この世界』に留まれるんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・やれやれ」

斎藤は溜め息をつくと再び刀を抜き出した、そして―――――――――
「お前は何も解ってないな」
斎藤が剣士たる所以、それは『悪・即・殺』と言うたった一つの信念。
彼女からすれば、相手が悪人だろうと善人だろうとどうでも良いこと、自分の前に立ちはだかる存在が『悪』なのだから。
「お前は私との死合が決まった時点でアウト(悪)なんだよ」
「剣士よ、我輩は無益な殺生を望まん!!何故お主はそうも闘おうとする!?」
「そんな単純な事も解らないとはな、なら冥途の土産に教えてやろう」
斎藤はその独特な体制から身体中の撥條を撓らせ疾走した。
「それは私が『剣士』だからさ」
「っ!!」

その速さは常人なら瞬間移動と錯覚するほどで、魔人とて例外ではなく『並』の魔人なら見失ってしまっただろう。
だが、百戦錬磨と謳われるチャンプはその屈強な肉体美で斎藤の一太刀を防いだのだ。
「一瞬姿が消えて焦ったぞ」
丸太のような豪腕が刃を通さずにいた、するとチャンプは返す刀で豪腕ラリアットを繰り出すではないか―――――――――

しかし、斎藤は俊敏な動作でこれを避けると、そのまま後方に下がり距離を取った。
「やはり通常の剣撃は通用しないか」
「当たり前だ、我輩の肉体をそこらの魔人と一緒にするでない!!」
「確かにな、私も貴様の力量を過小評価していたようだ」
それならと、斎藤は先と同様の構えを取り、三度攻撃態勢に入る。

「何度も言うが、我輩に降伏しろ!!お主の刀では我輩の肉体を貫くことは出来んぞ!!」
「ふっ、それはどうかな?私を甘く見るなよ!!」
言うが早く斎藤は駆け出した、スピードは先程より速く正に神速に近い動作で左片手一本突きを繰り出した。

「だから言っただろう、私を甘く見るなと!!」
「何ぃっ!!」
斎藤の刀から冷気による白煙が発生し、みるみると刀が凍結してゆき、それは宛ら鋭利な氷柱の様な形へと変わっていた。
これが彼女、斎藤一女の魔人能力『氷狼(フェンリル)』の効果だった。

「がっ!!」
「だから言っただろう阿呆が、純度の高い氷は不純物の混ざった氷とは硬度が段違いなんだよ」
能力によって硬度の増した刀は、あれだけ刃が通らなかったチャンプのガードを意図も容易く貫通したのだった。
巨大な氷柱と化した刀は、チャンプの豪腕を貫き、彼の心臓をも射抜いており即死していた。

「やはりな、筋肉馬鹿は脳の中も筋肉だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
既に事切れた相手に蔑みの言葉を投げつける斎藤であった。

「まあ何だ、貴様の『時計』は私が有効活用しておくよ」
こうして一回戦目の第一試合は幕を閉じた―――――――――――――――(完)









「『時計』の能力を試せる相手はいないものか・・・・・・・・・・・・・・・」