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*裏第二回戦SS・温泉旅館その1 #divid(ss_area){{{  「……夢、か」 四畳半の和室に敷かれた布団の上で菊池一文字は眼を覚ました。 夢にしてはリアルだった……ような気がする。 時逆順、迷宮時計、この世界の仕組み、虎の少女。 現実感がなさすぎる。だが、きっとそれは夢ではないのだろう。 そしてこの先には……母さんたちも関わっている。 (しかし、どうすりゃあいいんだろうな。 このまま終わらない戦いを続けるわけにもいかねえし) ごろんと布団の上で仰向けになる。 右腕の時計を眺めると、戦闘開始時刻はとうに過ぎている。 (……ところで、どこだ、ここ。) そう考えたところで、右腕の時計の向こうに狐面の少女が現れる。 少女は軽く腕を振る。 そして、和室はバラバラに崩れ落ちた。 &nowiki(){---------------------------------------------------} (……今のが菊池一文字?まさか今ので終わりじゃないよね) 『刻訪』の情報網を駆使しても「菊池一文字」などという人間を探し出すことはできなかった。 迷宮時計所持者の中に「菊池徹子」という人物がいるということまでは突き止めたが、 「菊池」などよくある姓だ。関係者かどうかすらも疑わしい。 ……だが、相手が未知の存在であっても。やることは変わらない。 「あはッ」 当然、この程度で終わってしまっては困る。狐面の奥で少女が嗤う。 『操絶糸術』が室内を蹂躙する直前、標的が天井に向かって跳ぶのが見えた。 そうだ、そうでなくては。 「……へえ、天井を突き破ったんだぁ。すごーい」 無感情な声でそうつぶやき、刻訪結は糸を使って天井に登った。 &nowiki(){---------------------------------------------------} 「……っぶねェ!あの娘が次の対戦相手か」 虎の次は狐か、と心中でひとりごちつつ、追撃に備える。 とっさに『スカッドストレイトバレット』を使ってしまった。 再使用までには少し時間が必要だ。さてどうする。 (しかし、糸使いとはな) 迷宮時計を手に入れる前、母の墓前で戦った相手を思い出す。 ウラギール・オン・シラーズ。彼も糸使いであったが―― 今天井から顔を出した少女は、その数段上の使い手と見ていいだろう。 「見ぃつけたァ」 狐面で表情は窺い知れないが、幼さを残した声で少女が嗤う。 まるで遊んでいるかのような無邪気な声。 それがかえって不気味に感じた。 「一応聞くけどさ、降参するつもりはねーよな」 ダメ元で問いかける。当然、回答に期待してはいない。 近接戦闘の構えのまま、じりじりと近づく。 間合いにはまだ遠い。が、マントを翻し少女に向けてダッシュする。 直後、先程までいた場所の屋根瓦が弾け飛んだ。 「ああ、まだ返事聞いてないのに向かってくるなんて。怖ァい」 少女は声色を変えずにそう言うと、左右の手を交差して振りぬく。 「『操絶糸術・蛟龍』(キリングストリングス・サーペント)」 温泉旅館の屋根を喰らいながら迫り来る龍の如く、糸の奔流が一文字を追う。 飲み込まれぬよう屋根を駆け抜ける。能力はまだ使用できない。 追いつかれる直前、少女に向かって跳躍、飛び蹴りを放つ。 「く、ら、え!」 「『玄武』(アダマンタイトシールド)、『虎爪』(ファントムブレイド)」 幾重もの糸の盾が蹴りを防ぎ、糸の爪が身を裂く。 『シールドマント』により致命傷は防ぐが、糸による斬撃を受けてしまう。 「……っ痛ぅ!」 「捕まえたァ」 少女が血に染まった糸をたぐり寄せる。 そして制服の袖をたくしあげ、凄惨な傷跡の残る腕に糸を縫いつけ始めた。 「お、おい!何やってんだ!」 「大丈夫ですよォ、ちょっと痛ァいだけですからぁ……  お兄さん、面白い能力持ってますねぇ。それで出会い頭の攻撃を避けたんですかぁ」 少女が自分の腕に刺繍をしながら呟く。 「へえ、加速度によって次の使用可能時間が伸びるんですねぇ。不便だなぁ」 「……!」 自分しか知らないはずの能力の特性を言い当てられる。 成程、そういう能力か。しかし。 「じゃあ、次のことを考えなければ無限に加速できるってことなのかなぁ」 「や、やめろ!そんなことしたら……」 「やめなーい。一瞬で終わらせてあげる」 次の瞬間には、 「『スカッドストレイトバレット』」 &nowiki(){---------------------------------------------------} ――瞼を開けると、私のよく知っている天井が広がっていた。 ソファから起き上がって周りを見渡す。 テーブルは昨夜のままだった。 上毛早百合ちゃんを斃して闘技場から戻ってきた私を、パパとママはぎゅっと抱きしめてくれた。 それで気が緩んだ私は、そのあと泥のように眠った。 そして一夜が明け、昨日は祝勝会をしたのだ。 ……あれ。 おかしいな。 なんで、こんな これは、昨日、の 時間、が、 戻っ て … … 「いち、に! さーん、し!」 「ここでまわって~」 「せーのっ」 「はいハイ!」 放課後、学園の屋上。 まだ陽射しは強く、踊り始めてから30分程でけっこう汗をかいてしまった。 『シスター』である真実が会長権限でゲットした鍵を使い、私たちは誰もいない屋上でダンスの練習をしている。 再来週に開かれる文化祭で披露するのだ。 なんでこうなっちゃったのかはよくわかんないけど、気がついたらそういうことになっていた。 ダンスなんてやったことないから大変……変な所が筋肉痛になるし。 でも、4人で踊っているときは、最高に楽しいのだ! 「さて、休憩にしましょうか」 「そうだねー」 「ノドが渇いたのだ」 「あっ、ボクのお茶飲む?」 モデルみたいに手足が長くて美人なのは、糸音ちゃん。 切れ長の目も凛としててかっこいい。 小麦色の肌が健康的な印象を与えているのは、早百合ちゃん。 ちっちゃくて元気がよくてかわいい。 見た目によらず気がきくボクっ娘は、真実。 私の幼なじみで、親友だ。 そうか、これが、走馬灯っていうやつなのね。 でも、なんで、あたし、 ああ、だけど、みんなに会えて、 よ かっ  …  … &nowiki(){---------------------------------------------------} 「……だから、やめろって言ったろ……」 目の前で弾け飛んだ少女の残骸を見ながら、悲しそうに一文字は呟く。 「『シールドマント』もないのに、生身で光速移動できるわけねーだろ……」 彼女にまだ理性が残っていれば、そのような手段には出なかったのかもしれない。 だが、その結果を知るものは、もういない。 [[このページのトップに戻る>#atwiki-jp-bg2]]|&spanclass(backlink){[[トップページに戻る>http://www49.atwiki.jp/dangerousss4/]]}}}} #javascript(){{ <!-- $(document).ready(function(){ $("#contents").css("width","900px"); $("#menubar").css("display","none"); $(".backlink a").text("前のページに戻る"); $(".backlink").click(function(e){ e.preventDefault(); history.back(); }); }); // --> }}
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