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第二部隊その2


これは希望の物語である。

●PM11:50 生徒会室

僅か一分。招集に対し迅速すぎるともいえる鬼無瀬大観の登場。だが、それには伏線があった。

彼は事が起こるこの日、今回の首謀者、道明寺羅門と昼放課に廊下ですれ違っていた。
正確には同門の風紀委員、晴観と羅門が、今夜の待ち合わせの話を廊下でしているところに
通りがかったというのが正しい。

羅門は大観の視線に気が付くと話していた晴観にぼそりと何か囁き、話を切り上げた。
そして彼女から離れ、自分に対して意味ありげな笑いを浮かべながら横を通り過ぎて行った。

嫌な感じがした。
晴観は大観の姿を見ると酷く慌てたようで、今のは風紀委員の仕事の打ちあわせでねゲフゲフとか
聞いてもいない言い訳をかまして来た。とっさに彼はあえて興味のない風を装った。
羅門一人に対し風紀委員が7名も同伴すると聞いて拍子抜けしたのも確か、だが妙な胸騒ぎが収まらなかった
のも事実。ただそれを相手に言うもおこがましい。結果、彼は夜半までなんともなく校舎に居残っていた。
―我ながら心配症と言うか意気地なさが情けないというか―
そう大観は韜晦するが、もし二人の立場が逆であったなら、校舎に残って同じようにヤキモキしている
のは彼に代わり晴観側であっただろうから全く話にならなかった。
LOVE米。要は二人はそういう関係だったのだ。それが全ての発端だった。

あの二人を見ているといい加減、脳みその裏がムズ痒くなってくる。
これは結婚の報告に来た妹弟子に語った彼ら師範の言葉である。妹弟子は笑って茶を濁した。

††

紫煙がゆっくりとのぼり立つ。
彼が執務室に入室してから3分が立った。横合いの扉が開き、二人の人物が、新たに登場した。
開いたのは彼が入ってきた入口ではなく、応接室のほうからだった。

「だから”論より証拠””必殺技でハートキュン”ってわけよ。」
「”命の花咲かせて思いっきりモーストバリュバリュ論”ですか、なかなか興味深い推論ですね」

二人は横並びになって何かを言い合いながら歩を進めていたが、煙管の先、つまり大観を見ると
なにやら納得したようにお互い頷きあった。

「私の勝ちかしら」「ふむ、では指揮はお任せすることにしましょうか」

見た目から達振る舞いまで華のある二人であった。

「初めまして≪剣士殿≫。わたくしは遠藤之本格古笹ヶ菖蒲(えんどうのほんかく
ふるざさがあやめ)。「遠藤」謹製、探偵等級四位に位置します探偵です。
今回の火急の事態を受け、生徒会長殿に緑化防止委員会を提案させて頂きました。」

片方の華はコート姿の探偵、それも十代後半妙齢の美形探偵であった。委員会を提案というからには
生徒会の関係者なのだろうが希望崎の生徒には全く見えなかった。強いて言えば≪探偵≫に見える。

「それに便乗させてもらうことになった通りすがりの魔法少女アノツギ・キヨコよ。いきなり
Dライン発動しての密談。ごめんなさいね、生徒会長さん、まあお互いの為だけど。」

片方は魔法少女だった。今年入りたての大観よりかなり若く見える。別の意味でこちらも学生生徒に
見えない。Dライン?大観は聞き慣れない魔法少女の言葉に首をひねる。
これには生徒会長が注釈を加えてくれた。

「Dラインと言うのは探偵と治安組織、警察や軍などとの情報共有に関する取り決めだ。
国家レベルの難事件に関しては≪事件解決≫を条件に国家権力へある程度の便宜を要請できる。
見返りは自身の手に入れた情報の提供や推理力になる。≪探偵≫は捜査権はあるが逮捕権はないからな。」

「まあ厳密に言うと私は国家権力じゃなくて『現場』のほうだけど、その分臨機応変にいくわよ」
魔法少女は年齢に相応しくない/相応しい物騒な笑みを浮かべると親指を立てた。

どうやら敵だけでなく味方も一筋縄ではいかないようであった。

―5分後 説明終了―
「と言う訳で説明は以上。作戦は大観くんと私でまず追撃。さっき説明した通り今回は大観くん
メインでいく、能力発動、気合入れて行けよ。アヤメさんは別動と情報収集を。
生徒会長は、そこ白くなってないで!まだ早いわよ!居残り人員かき集めて各種バックアップよろしく。
追撃戦にならない前提でいくなら前衛1後方支援3が」
キヨコさんがぱんぱんと手を叩く。

「でわ」
音もなく本格探偵が席を立つ。
「…」
生徒会長は一度天を仰ぎ悪態をつくと
「」
剣士は生徒会長の様子に苦笑しながら届いた得物を背に括り付けると魔法少女の後を追った。

「さて≪種の加護≫どの程度のものかしら?」

●PM12:15 衝突
校門から出ようと階段を下りはじめた大観に対して、魔法少女は屋上に丁度いいものがあったから
ショトカットに使うわ。そういい階段を上に上がった。
彼が中庭に出たとき得物を背負い駆け抜ける自分を追いぬくように後方よりナニカが打ち上げられた。

「カタパルトか…」
グリフォン等の大型野鳥対策に学園校舎屋上に備えられている投石器だ。
恐らく通常、投擲用の大石を撃つところをスケードボードに乗って自分自身を打ち出したのだろう。
だが飛距離・高さとも投石の比ではない、同時にレンガが複数パラパラと落ちてきた。
影は校舎の壁を軽く越え、遥か闇のむこうに消えていった。

「?」
ついでパンと先を急ぐ彼の後ろで花火が上がる。二段噴射に使ったのだろうレンガはともかく花火の
意味が判らなかった。
ppp,キヨコ隊長からメールが入る。
そこには「羅門一味の位置情報」と≪ワレ半転して陽動、コウホウヨリ→→。挟み撃ちYORO≫の文があった。
探偵の能力は花火…それを照明弾代わりにして、地上の羅門一味の位置を視認したということだろうか。
普通に不可能だと思うのだが、平然とやってしまうところがそら恐ろしい。

到底追いつけるスピードではないが、あまりに遅れるわけにもいかなかった、大観は緩めた足を
締め直し再び走り出す
「しかし移動手段か…ワシもセグウェイくらい用意しておけばよかったかのう。」

††

道明寺羅門は前方から迫る気配に眉をひそめた。
まず校舎側から花火が上がった。
意図は不明だが、これでは襲撃を警戒してくださいといってるようなものだった。
ならば何か来るだろうと後方を苗床たちに警戒させ、待ち構えていたのだが、反対側から何かが近付いている。

やれやれと羅門は目を凝らす。
コシヒカリは夜行性ではないが、羅門自体は農作業に熟卓した園芸部部長なので夜目は相当に効く。
深夜とはいえ月の光もある。新月に行う人喰い沼に生えるマンドラコア採集などに比べれば格段好条件と言えた。
目を凝らすと魔法少女がスケボーかっとばしてこちらに向かってくるのが見えた。

「…スケボーとはなかなか風流だな。セグウェイでないのが残念だが」
何が残念なのか。
そして彼らの元、超高速で複数の『レンガ』が、突っ込んできた。隣の苗床の一体がまともに食らいぶっ飛ぶ。

「ほう。」
羅門は面白そうに”ひょいと”掴んだレンガを握りつぶすと横手に視線を向けた。
直前で急展開、路線変更した奴がいた。
レンガに紛れ、体当たりでも敢行しに来ていればゾンビ達総がかりの肉の壁に止められ、捕まり終わるはず
だったのに、その気配にギリギリ察したらしい。どう慣性を殺したのかについては羅門にも判らなかった。
魔法少女は彼らに向け水平にボードを向ける形で停止し、ゴーグル越しに眼を光らせると楽しげに腕を組んだ

「おいおいお兄さん、取り捲き全部コシヒカリBL種じゃないか、これは予想外。
こんな二級品種を人間界に広めて、生産者としてのプライドはないの。一体なにがしたいわけ?マッチョ兄さん」

―コシヒカリBLとは
コシヒカリBLとは、繁殖力重視で改良されたコシヒカリを親とする品種群のことだ。
BLとはBlast lesser Lines(ブラスト・レッサー・ラインズ)の略で、コシヒカリ以外にもササニシキBL等もある。
通常種と違い育成の手間もを取らないため、大量生産に向くが、味、知性、戦闘力など格段に落ちる。

道明寺羅門はくつくつと笑った。
「少しは知識があるのが出てきたな。私が世界をコシヒカリで覆い尽くすつもりだと誰かがいったのかね。
全ては≪種の意志≫、言い換えれば天啓、私はそれによって突き動かされているといえよう」
そういいつつも羅門は仕掛けてはこなかった。
キヨコも同じだ。腕を組んだまま動かなかった。お互い距離を置いたまま奇妙な均衡状態が続いた。

理由は羅門側に二つ。キヨコ側に一つ。

(こちらの射程を見切っているのか)
一つは道明寺羅門が慎重な性格だったため。
歴戦の経験から彼は相手の実力や魔人能力の傾向は直に接触してみると感触として感じとれた。
その彼の背の霜やけが疼く。
感性が目の前の相手に1年前に相手した奴と同じニオイを嗅ぎ取ったのだ。あのEFB級の力と同じ匂いを
二つ目、これはキヨコが手を出さないとの同じ理由だった。二人とも何某の到着ないし行動を待っていたためだ。
そして奇しくもそれは同じ存在であった。

「四」

その者の名は

「囲」

銃器すらをも上回る虐殺力を標榜する鬼無瀬時限流

「敷」

一撃虐殺の使い手

「応」
鬼無瀬大観―その横凪の一撃が周囲一帯を一閃した。その技の名は「鬼無瀬時限流中目録四囲敷応」

――――――――――――――
『鬼無瀬時限流 中目録 四囲敷応』
事前動作に隙が多いものの、鬼無瀬の技では屈指の範囲と威力を誇る時限流の
代名詞ともいえる業。その技名は「四方に囲いを敷かれても応じる事が出来る」ことに由来し、
敷かれた囲いを突破し、敵を余す事なく虐殺するために広範囲を一度に凪ぐ。
その有効範囲は、半径500m以上
その全てに対し万物を余すことなく切り裂く斬撃を飛ばすことが出来る。皆もやってみよう。


●PM1:30 慟哭
漣のように横凪の一撃が闇夜を伝播していく
コシヒカリ寄生者の胸元に一文字の華が咲く
魔法少女は発動と同時に後ろ向きにバックし回避していた。スケボーのアキカンシールは後ろ側を向いていた。

「そうきたか、時限流。だが哀しいかな対魔人用剣術の限界、それでは殺しきれない」
羅門は振り返りもせず、ただ哂った。
目の前の敵から目を離す様な愚も犯さなかった。
彼が腕を一振り指令をだすと、胸を切り裂かれたはずの寄生者達が何事もなかったかのように立ちあがり、
攻撃の発着点に向かい、殺到する。
よく見れば彼の鬼の形相ともいえる霜やけ、その眼の部分に芽が生えているのが見えた。まさかそれで
”視ている”とでもいうのだろうか。

「らかああああああああああああああああああああん。」

大観は退かなかった、虎の様な咆哮をあげると彼らに向かい討たんと走った。そして跳ぶ。
― !! 鬼無瀬時限流中目録。毘伊弐重駆(びーにじゅうく)!!―
跳躍の後、天より撃ち落とされた雷がごとき斬撃の鉄槌は、対地用の鬼無瀬。
揮われた六尺の長干しより発せられた衝撃が、地に這うもの全てを叩きつぶさんとするかのように炸裂する、

その一撃を受け、まとめ吹き飛ぶ寄生者達。
大きく穿れる地面。
そこより現れる鬼の一門、大観はただ園芸の修羅を討たんとそれのみを見ていた。そして修羅は鬼の一門と
その手にある業物に”芽”を見やり …

(茶番だ。)
はぁぁぁと大きく落胆のため息をついた。まるで期待はずれだったとでもいうように。
そしてあっさりと大観側に身体を向ける。先ほどまであれ程、警戒していた前方の魔法少女さえ、もう
まるで気にならない様子だった

(さて、この顛末、どう落とし前をつけさればいいものか)
「らか・・・・・なっ!?」
さらに宿敵に近づこうと一歩踏み込んだ大観は今まで経験したことのない違和感のある重みに振り返ると
驚きの声を挙げる。亡者どもが……『物干竿』に群がっていた。
爆撃を受け四肢破損し肉抉れた亡者たちが我先としがみ付いている、その重みだったのだ。
大観は一呼吸整えると祈るように一礼し、剣を振るった。
「物干し竿」は亡者ごと天を仰ぎ、そして、あるべき形に振るわれた。地に叩きつけられ、今度こそ四散する亡者たち。

―自在剣―

それが彼の能力。いかなる時も剣に生き、剣を振るうことのできる能力。
彼が選んだ生き様そのもの。
いついかなる時でも、どの様な有様でも死のうが生きようが、ただ剣を望むままに振るうことができるという
彼らしいシンプルな能力。

「ああ、それは知っている。ただ、”振り下ろした直後”は別の話だろう。」
「ぐうぉ」

次の瞬間、振り下ろした剣に別の亡者どもが群がっていた。スクラム
まさに肉壁となり、剣の動きを食い止めにかかっていた。
コシヒカリ寄生者は動きこそ鈍いが力は強く、魔人のそれすら凌駕する。
それが物干しざおへのとんでもない重圧となって幾重へも幾重へも刀身に絡みついてきていた。

「『過程』と『結果』が終了してしまっているからだ。最終的には『過程』を飛ばし、必要な『結果だけ』を
残すこともできる恐るべき可能性を秘めた能力なんだが、未熟さゆえに十全に活かしきれてない。」
羅門は彼に近づく。魔法少女には別の寄生者を向かわせ、牽制をさせていた。
大観の汗が浮かぶ。万力のような力だった。コイツらを振りきれない。

「まあ、どうでもいい。選択を誤った。お前ではなく、こちらを選ぶべきだったのかもな。せめてもの手向けだ、
恋人に介錯されるがいい。」
「…晴観。」
目の前には苗に浸食された風紀委員の躯があった。抜き身となった刀が生き場所もなくふらふらとさ迷っていた。
大観の怒りが…怒気が…

――――――――――――――――――――――――――――
なにまた素振り?
ほっとけ。わしはお主の様な才はないからの、振っても振ってもまるで足らん
…そうなの?足りないのって別のモノなんじゃない。
一体何が
そうね、カンシャかな。
なんじゃい、そりゃ。
――――――――――――――――――――――――――

「…。」
虚ろな瞳が彼を見ていた。
大観の怒気が、急速に収束していった。
振りきれない。
振れない。
自分は何を焦っているのだろうか
当たり前の話だ、いつの間にか自分は振るうための準備を怠っているではないか。
男は戦いの場に赴いて初めて笑った。

感謝だ。

剣への感謝。出会いへの感謝。出会った人への感謝。別れにも感謝。

だから、
大観はするりと刀身を抜き放った。
そして想い人への別れを一撃で終わらせた。
お別れじゃ。ありがとう。


彼しか判らぬ≪時≫が、動いた瞬間だった。
物干竿の刀身という『鞘』に集中していた寄生者たちは勢い余ってどうと倒れこむ。宛ら
蜘蛛の糸に群がりすぎた地獄の亡者たちのように。
本人に向かったものも僅かいたが、瞬時に現れた刀身に身を振るわれ塵と化していく。
首魁はこの状況に反応できていない。

大観は千載一遇の好機を活かすべく、悪鬼・道明寺羅門に切りかかった。
それは何者にも決して抜かれることのない鞘であった。刀匠の手により幾重にも鋼で
覆われ、中身が露出せぬよう封じられた偽りの刀身。
どのような技でどのような幻で剣を抜いたのか、本人にすらわかりえぬことだったが、
こうして抜けぬはずの刀は封を切られ、今宵、一本の刀の名が消えた。
長きにわたり隠匿されし伝説、その刀の名は、呪われし希望『福本剣』といった。

●PM2:00 敗走

『福本剣』
それは希望崎学園が過去、闇に閉ざされた時代、一人の刀匠が命がけで作り上げたと
される伝説の剣。
時代を切り開いたまさにその時代の象徴ともいえる
その一撃は凄まじく、話によれば≪転校生≫ですら一撃のもと屠ったという

―せめて安らかに眠れ
一撃を受けたコシヒカリ寄生者たちは、動きを止め、ゆっくりと塵と化し、崩れ地に伏していく。
晴観もまた、土に還っていく。
その流れのまま、大観は諸悪の根源たる悪鬼・道明寺羅門に切りかかった。
与えた一撃は左肩からの袈裟切りだった。

ダメ・ソレデハ・ダメナノ
彼は彼女の声を確かに聞いた気がした
福本剣は羅門の身体半ばにて動きを喰い止められ、進行を止めていた。刀身を握りしめるのは魚沼産コシヒカリ・羅門の手。

「未熟の極みじゃ。だが、だが…これは『福本剣』なのだぞ。効かぬのか!?」
流石の大観も驚愕を隠せない。いや事前に「ひょっとしたら通用しないかもね」と可能性は示唆されていたが
だが、この転校生ですら一撃のもと屠る即死剣が効かない存在があるとは、信じられなかった。

「フフフフフフフハハハハハハハ。素晴らしい。これがお前達の≪希望≫か、希望の≪光≫なのか
まさか、こんなところに隠してあったとは、どうりでどれだけ探しても見つからないはずだ。
木を隠すには森か。これは一本取られたよ。」

(ぴ、ぴくりとも動かない。こいつの力は寄生者全員合わせたより強い!?)

「そしてそれを使いこなすお前、見事だ。正に我らが探し求めた逸材よ。一目見た其の時から確信していたよ。

≪強き土≫ ≪清き水≫ ≪輝く光≫

種よ。おお、種よ。これで全て揃いました。」

感激のあまり羅門の目から白いコシヒカリが、ぽろぽろと零れ落ちた。
きしょいわ!そう叫びたかった大観だが、食いしばり力を緩めることすら叶わず言葉を放つ余裕すらない。

羅門の歓喜は続いていた。
「種よ。この巡り合わせに感謝いたします
これで人類は人類は!革新する。新たなる産地区割(サンチクワリ)を創造してフハハハハ…ブバッ!?」

らっしゃい。
音もなく身を跳ねあがらせたキヨコサンの全体重のせたままの姿勢でスケボごとキックが、
羅門の顔面にHITした。

「退避するわよ。…!」
 羅門は魔法少女の全体重アタックに顔面をメメタァと歪ませていたがダメ-ジを受けた様子はなかった。
身動き一つせずギロリと目を動かすと、ハエを払うがごとき仕草で魔法少女を手で払う。
 それだけで当たったスケーボーは真っ二つに折れ、乗り手のキヨコは猛烈な勢いで地面に
叩きつけられ、大きくバウンドして、大観の横にすべり転げた。

「効かぬのだわ。
生存適性。私の中のコシヒカリは今、この呪い剣が与える”生命の危機”を前に恐るべき
スピードで成長を遂げている。
この剣は学園の希望の象徴。それが力を与えている。フフ、希望は光なのだ。
強いて言えば君は私を袈裟切りするのでなく首をはねるべきだったな。それなら決着がついていただろう。」
大観はちらりとキヨコをみやる。ぴくりとも動かない。

―不味い、気を失ったのか。
だが、刀はぴくりとも動かない。退けといわれても退きようがなかった。

「考えているな。そう人間は考え、成長する。
そうだな。ここで、もし私が、≪君≫が己が身を我らに差し出せば、学園の皆の安全を保証しようと
言い出したら、君はどうするかな。」
自分の思い付きが気に入ったのが悦にいったように続けた。

「≪種≫にかけて約束は守ろう。さあ、お前はどうする?考えるんだ。」
大観に応える余裕などなかった。

その時、ぱんという短い発生音とともに今度は白いやわらかい光が闇夜を照らした。
ふわぁっと
おおおおおおおおおおおおお
歓喜が周囲を覆った
―力が緩んだ?いけるか
朝日に似た優しい光だった、コシヒカリ寄生者だけでなく羅門すらも、魅入られたよう光を見る。
太陽への憧憬と待望、それは植物としての反射行動だった。
気が付けば羅門の元から鬼無瀬の使い手と魔法少女は消え去っていた。

だが、手には福本剣が残っている。
「逃げられたか。まあいい、剣なき今、彼らに万が一の可能性もない。
今度はこちらから追いたてるとしよう。」

[ 補足:ミューティング会議の内容 ]
―時は遡りAM11:55 生徒会室―

魔法少女かく語りき。
―情報操作に踊らされているから、まず、大前提のちゃぶ台からひっくり返すわよ。

「はーい、学生の皆さま良い?
まず魚沼産コシヒカリに関してだけど間違った情報がかなり先行しているわね。その訂正から
五大災厄に数えられる≪魚沼産コシヒカリの脅威≫ってのは増殖とかゾンビ化ではないわ。
悪いけど、種の繁殖力がスゴイ・ツヨイってだけだと、認定災害レベルはBないしB+止まりなのよね。
そもそもコシヒカリ(とBL)は増殖だけでは海は越えれないから、滅びるのは日本だけでその間に
他国は対策が打てるしね。」

「魚沼産コシヒカリの問題は【特殊栽培作物】だってこと。
この種は特定の栽培方法に成功した場合、環境に適合した新たなコシヒカリとして生まれ変わるわ。
意味わからん?産地直送なプチ新潟が人間界にできるのよ。
成功例ないけど中途半端な失敗作でも、たいてい人類滅ぶからそこんとこよろしく。」

「次。繁殖。人間界の魚沼産コシヒカリは人体を介して繁殖するわ。それ以外は交配種のいわばパチもんよ。
太陽光とかエネルギーは必要だけど、重要素は三要素は
土=健全な肉体
水=潔白なる精神
最後の太陽の光は、≪希望≫っていわれてるけど、これが明確に何を指すのかまだよくわかってないわね。」

「夜明けがタイムリミットの追撃戦という設定は今回、道明寺羅門が生徒会にしかけた心理戦、
ようは本当の目的を達するためのプラグと考えられるわ。噂に振り回されちゃ駄目よ」

本格探偵が続きを引き受ける。

―話しあってたのはこのことなんですよ。

「間違った情報が予め道明寺羅門の手による流布と捉え、学園生徒会をはめるために仕組んだ罠
という前提に立つと道明寺羅門が引き起こした不自然な行動のおおまかな部分が説明つくんです。
―まず何故、開かずの間への深夜という時間を選んだのか。これは昼ないし夜明けでもよかった。
そうすれば6時間と言う猶予は発生しなかったはずですし、拡散も容易かったでしょう
―何故初期段階、校舎ルートを選び時間をかけ校門を出たのか、そして今もゆっくりとした進行している理由は
―そして開かずの間でのやり取り。全滅も可能だったのに何故彼は晴観の時間稼ぎにつきあい、風紀委員を見逃したのか
―そして最後、鬼無瀬の使い手が何故、生徒会の招集に即、応えられる位置にいたのか?
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
なにか身に覚えはありませんか大観さん?

そして、この緊急事態に生徒会は貴方に何を持たせようとするでしょう。生徒会の一存でできる最善手とは?」
「ここまでくると、考えられる結論は一つしかないわよね、
彼が求めているのは生徒会が長年隠匿し、隠し持っている伝説の剣「福本剣」であると。
かつて学園の暗雲を振り払った≪学園の希望≫の象徴。そしてそれを振るうのに相応しい使い手だってね。」
そして≪ソレ≫が生徒会室に運ばれてきた。

††

かくて羅門は来た道を舞い戻る。

彼の胸は躍っていた。
見つけた理想をこの手で実現させる。誰もがなしえなかった五大災厄の攻略が目の前にあるのだ。
そして生まれるのだ。我が手によって

健全なる肉体
清き精神
純然たる希望を備えた、新しき人類の革新的存在。

この地に”産地区割(サンチクワリ)”希望崎産コシヒカリの聖地が!

その胸の高ぶりに比例するように、やがて彼の歩は、自然と

腰はつきあげんばかりに左右に躍動していくのであった。

===================
噂を信じちゃいけないよ

私の心は純なのさ

ああ、霊長(ちょう)になる。ああ、花になる。

人類の未来は貴方次第なの

ああ、今夜だけ ああ、ここでだけ

もう

どうにも止まらない。

=====================
道明寺羅門、絶頂の時であった。

●PM2:30 窮鼠

大観は大股で地をかける。
手には剣はなく代わりに小柄な少女を抱えていた。
「こら、そこは剣を手放しちゃ駄目じゃない。」

「ああ悪い、タヌキ寝入りで隙うかがっていたんか。こりゃ、よけいなことしたの」
抱えた感触から気が付いていたのか、大観に驚きはなかった。
恐らく衝突寸前にタイツに付着した粒子を爆発させ衝撃を殺していたのだろう。

「・・・・いや私のミスね。貴方なら例え判っててもそうするだろうから。
そこは事前に打ち合わせで釘刺さなかった私が悪いわ。
どうも全体的に状況を甘く見すぎてたみたい。これであとの頼みの綱はアヤメちゃん
だけだけだけど、白の信号弾は『至急戻れ』の合図。羅門くんの周到さから考えるにどうにも
ハードなことになりそうね。」

††

生徒会室に二人が戻ると園芸部が秘蔵する『アンチ・コシヒカリ・ウイルス』の確保に向かった
遠藤アヤメと生き残りの生徒らに迎撃指示を飛ばしている生徒会長が彼らを出迎えた。
「結論から言います。アンチ・コシヒカリ・ウイルスは既に道明寺によってアンプル含め培養物は
全て破棄されていました。短期の復元は不可能です。
 反道明寺派の誰かが密かに隠匿している可能性も考えられましたが園芸部員は全員子苗を
埋め込まれコシヒカリ化していましたのでこの線も完全に消えました。
 日中の間に、部員全員を呼び出し閉じ込めておいたそうで、そして夜に子苗を埋め込みに
戻り彼らを苗床化をしたそうです。
これで真夜中に校内の進行ルートをとった説明も付きましたね。
そして彼らは伏兵として部室に潜み、道明寺から『訪れた人間を襲え』と命令されていたそうです。
私の様にウイルスを求める人間を想定してのことでしょうね。
コシヒカリにとって親の命令は絶対、故に彼らも従うしかなかった。そういうルールらしいです。」
大観が唸った。
羅門による計画的犯行が改めて浮き彫りになった瞬間だった。
その一方、生徒会長と魔法少女が訝しげな顔になる。待て、いまどこか妙なこと言わなかったかと…。
二人の様子に探偵が頷く。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「ええそうなんです。変なことをいいました。そのおかげで無事帰ってこれたんですけどね
そことキヨコさん達のお話と合わせると今回の事件の全貌は見えてきます。
酷く儚く惨い希望ではありますが…僅かながら事件解決の糸口見えてまいりました。
あとは、貴方次第です。」
探偵は彼を見やった。その時、生徒会室に見張りの生徒が血相を変え、駆けこんできた。
「大変です会長!校舎が、校舎全体がコシヒカリにぴっちり囲まれています。
そして敵首魁・羅門より通達。
要求は鬼無瀬大観の身柄を渡すこと。タイムリミットは夜明けまで。
人質は全人類。わたさなければ全人類を滅ぼすとのことです。」

●AM3:00 やっぱりコシヒカリには勝てなかったよ

羅門は生徒会室の応接室に足を踏み入れたのはそれから暫くたってからだった。
場には既に2名、椅子に腰かけていた。
部屋の主たる生徒会長の顔が緊張の為、強張る横で、魔法少女が、やほー羅門ちゃんと
手を振って出迎えた。
羅門は尊大な態度を崩さず、鼻を鳴らした。
「座談をしたいとの話だったが、≪種≫はいらっしゃらないのか?」
「いたらアンタ2秒でひっさらうか押し倒すでしょ。あとリミット迄に2時間ちょっとなんだし
気持ち整理する時間与えなさいよ。」
「それもそうか、会長殿は徹底抗戦するかと思ったが、意外とあっけなかったな」
大観の件はそれで納得したらしい。あるいはどうせ何もできないと見くびっているんか…。
羅門は会長に水を向ける。生徒会長ジョン・雪成が何ともいえぬ表情で答えた。
「我々は八方塞の上に四面楚歌だ。無駄な犠牲が少なくなるというのなら降伏するのは。
ただ大観を人身御供に差し出すとなれば話は別だ。
 特に一人、色々納得がいかないところがあるので、疑問点をすっきり≪解決≫しておきたい
というのがでてきた、」
「構わんよ。今の私ならこの区域一人残さず5秒で殺せる。気に入らなければ全員殺す
ああ、あと茶菓子には生徒会が部連に内緒で買い込んでる『虎屋の栗ようかん』でよろしくな。
それ以外は認めん。それ以外なら全員殺す。」
「くっ、貴様何故その存在を」
「ふっ≪種の加護≫(じぜんちょうさというなのすとーきんぐのけっか)とだけ言って置こう」
「(話に乗ったの茶菓子目当てなのね…)」

††

羅門の巨体がソファーに沈み、場は3人となる。
そして最後の一人、お約束で探偵が現れた。遠藤本格なんとかさんだった。
探偵美麗的な動作で優雅にお辞儀を行う。
「皆さんお待たせしました。それでは今回の事件に関して、今だ見えざる隠されている真相を
解き明かしていきたいと思います。」ハイ、ハクシュオネガイシマス
この時点でコイツの首飛んでおかしくないよなと思いつつ二人は手を叩いた。
だが、羅門は唖然としたように探偵の顔をみつめるだけだった。
「…なんだお前は」
遠藤アヤメがにっこりと笑って答えた。
「≪探偵≫です。」
「…いやそうじゃない。生物学上の分類とか性別とか色々あるだろう。”お前”はなんなんだ。」
「分類は探偵で性別も探偵です。」
「・・・・。」
みしりソファにより深く沈みこむ音がした
流石の羅門も初見で遠藤のキャラシートを見た読者のような顔で沈黙するしかなかった。
キヨコが、合いの手を入れる、
「私も知らなかったけど人造探偵っての製法が植物由来で、しかもササニシキ使ってるそうよ。
探偵連中の頭のイカレ具合考えるとこれくらいが丁度いいってきもするけどね。」
「ちなみに私は山廃仕込みです。杜氏さんの腕で差が出るのが目下の課題でして
あの…羅門さん、羅門さん聞いてますか?」
「ああ。」
アヤメの存在が、よほど衝撃だったのか、製法まで確定しているのか…とか
ササニシキだとと呟いていた。
「それでですね、大観さんの今後を決めるにあたりまして、私、どうにも納得できない
ことがありまして一席設けさせて頂きました。それは貴方の動機のことなんですよ。」

††

羅門は薄く笑った。
「≪種の大いなる意志≫以外にあるのか?全てはそれによるのだ。」
探偵は首を振った。
「あると思います。ところで先ほどから私のこと気にされているようですが、
貴方にとって私は”どのように見えています”?」
羅門は再び沈黙した
「…。」
「貴方の部の副部長はこういいましたよ。『人間には見えない。どちらかといえば
我々に近い気がする』私がアンチウィルスを求め、園芸部の部室に忍びこんだときのことです。
彼はこうもいいました。『我々は部長にここに来た人間を襲えと言われている。
子にとって親の命令は絶対だ。逆らうことが出来ない。…ただ…』
ただし彼には私が人間には見えなかった。おかげで襲われずに助かりました。彼には彼自身の
主観があったのですね。」
そこで私は意識のある…本当に辛うじてでしたが…部員たちとコンタクトを取り、
貴方に関する情報を仕入れることにしました。
「彼らは一応に貴方に対し高い評価を下しています。惜しむらくは人一倍自尊心が高く孤高の
壁を作ってしまうことと名誉欲を求める傾向が強いこと。
今回の件に関しても彼らは――――
もっと自分達が
「嘘だな。
奴らがそんなことを言うはずがない。奴らは俺のことを疎んでいたはずだ。」
「そうでしょうか。
身を呈して園芸部の『植物園』を守ったことにより、部長の座を射とめた貴方を
本当に誰も評価してなかったのでしょうか
貴方は強く勇敢な農夫で有り、計算高く賢明な研究者であった。自尊心の高さと自己顕示欲
壁を作ってきた。
「なら何故あんなアンチウィルスなどと」
「諌めるため、だったんじゃないでしょうか? 貴方にその存在を知らせたのでしょう、彼らは。
止めてほしかった。一緒に自分達と同じ道を歩んでほしかった、そういうことなんじゃないでしょうか」
―孤独な種であろう。これを封じ込めたのは、その存在を恐れたからか?
―人間が駆逐され、コシヒカリが繁栄する未来を恐れたか?
―なぜだ? だが、ああ、そうだな――わかる
道明寺は、天井を仰いだ。
―お前は、私だ。

「終わったことだよ、今となってわな」

「会長、このとらようかんの御代わりってある?」
いや、そこ空気読んで!

「終わってませんよ、続きがある。綺麗事では終われない続きが」
探偵の言葉に力がこもった。

「親の意志に子が逆らえない―だが、貴方が初代部長の意志に背いて騒乱の種を捲いている。
明らかに親の意志に反してますね。それは親株が”死んでいる”からじゃないですか、
逆に存在し続ければ親は子を制御し続けれる。」

「そうともいえるな。」
羅門は認めた。
「ならば今回の一件、≪種の意志≫などといった超存在的な意志によるものではなく
貴方のただの個人的な思惑とに基づいた犯罪行為

「貴方は本当に人類を滅ぼす気があるのか、寧ろ逆ではないか、貴方はその存在を人類に知らしめるが
ためのデモンストレーションだったのではないか、そういう風に思えるのです」
「ふ。」
彼の水が揺らぎ、はじめて淀んだ。
「いや御見事その通り。全部、君の指摘している通りだよ。
コシヒカリは偉大だ。人類に革新を催す聖なる火種。第4の果実。だが一番重要なのは『私』だよ。
米世界の最先端を行く先靴者は『私』でなくてはならない
新潟の五大災厄を攻略ー世界初の快挙をなしたのは『私』でなくてはいけない
新たなる≪産地区割≫希望崎産コシヒカリを創造し人類に新たなる詠歌を齎すという偉業を達成するのは『私』でなくてはいけない。
種を褒め称え、崇める愚かな民を導く法王として君臨する存在として名を刻むのは『私』でなくてはいけない。」

「貴方自身が希望崎産コシヒカリという存在になったら≪道明寺羅門≫という存在がかき消されてしまう。
名を知らめ歴史に名を刻むためには、どうしたって人は必要だ。」
「初めからそのつもりだ。
希望崎産の聖地と手を結べば、安定したコシヒカリが手に入る。そう知れば人類、国家や権力者はどう考えるか。」
人類を滅ぼすほどの災禍を持つ、だが、同時に多大な恩賜も与える。
「考えるまでもありませんね。誰もが貴方にすり寄りひれ伏すでしょう。」
「結局、終始戯言だったな。あと2時間、夜明けと共に世界を滅ぼす力を手に入れることもまた事実なのだ。
まあ面白い余興だったよ。最後に残す言葉はあるか?」
「ええと、では最後の抵抗として、貴方の自尊心を満足させれるよう
貴方を讃える美辞麗句を時間まで並べ立てさせて頂きます。本当に貴方は素晴らしい。貴方を」
其の時、

ごうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううん

何かが猛烈な勢いで噴き出していた。これは霊圧、いや神威だ。
「貴方を信じて良かった。・・・・あっ失礼。もう時間来ちゃいましたね」

「なななな、なんだ これは」
羅漢が吠える。

「こんな全人類を革新へと導くイデオン級の物件など
心当たりが・・・・あ・る。い・や・あ・る・が、だが、ど・う・い・う・ことだ・・・・・

「簡単なことですよ。コシヒカリにおいて『親』の命令は絶対。それなのに分類上、初代部長の『子』であるはずの貴方が
初代部長の意志を翻し自由意思で動けるのか。それは『親』が死んでいるから、さっき確認したことじゃありませんか」

「ま、まさか」
次の瞬間、彼は周囲に配した彼の苗が全て刈り取られるのを感じた。

「賭けではあったんですよ。ただ全員一致で私達は賛成しました。彼のその勇気ある或いは無茶な決断に」
「ば、馬鹿な自ら手で災厄を解き放っただと。制御も予備知識もなく、何を根拠にそんな暴挙を、馬鹿者どもめぇ」
部屋にいる3人は顔を見合わせると異口同音にこう答えた。

「「「なんとなく」」」
「!?」
「「「あの人/彼/なら大ジョブだろうって思えたから」」」

「なんだか酷い言われようじゃのう。」
扉をあけ、ひょっこり彼が帰ってきた。なんだか難しそうな顔をしている。
「おかえりなさい。大観さん、とらやのようかん食べますか」
「いや、おんしに貰った遠藤特製の高カロリビスケットの御蔭で腹いっぱいじゃ。まあ喰わせたのは土のほうにだがな」
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「馬鹿な、希望は我が手にある。どこにそんな、そんな、そんあものを形成する光が」
魔法少女が答えた。
「えーと羅漢ちゃん、さっきさ君、冗談半分(半分本気)とはいえ人類滅ぼすって宣言してたじゃない。
少なくともギリギリまで学園は追い詰めた。その理論で行くとそれに対抗できる唯一の存在の”彼”ってある種『全人類の希望』ってことになるんじゃないかな」

神威を身に纏った希望崎コシヒカリが頷いた。
「うむ、そういう訳でぬしを討たねばならん。
ただ最後にアヤツと同じ存在になれた。そのことに少しだけ救われた。
終わったら人類の迷惑のかからんよう寝るとしよう」
羅門が歯ぎしりをする
「眠られるですと!なんという罰あたりな
おお種よ、種よ、一体どこにいかれるというのですか?」
「お前の罪も背負っていく
「ならば磔刑だ」
種と言えど同じコシヒカリ、この手にある≪福本剣≫ならば羅門は隠し持った剣を振りあげる。
「遅い。」
振りあげたはず剣はいつの間にか彼の側、手元にあった。
「いや早すぎるというべきかの。人類にはコシヒカリはまだ早すぎる。」
―敵の攻撃すら自在に、なんという規格外。
そして彼の一撃で、七たび切られ八つに切り裂かれた。
―我が目に狂いなし。
「羅門、死亡確認。」
探偵は羅門に駆けよりその生死を確認すると事態とこの事件の終息宣言を行った。

††

最後に茶を飲み干し、キヨコサンがいう。
「アヤメちゃん、あのさ」
「ハイなんでしょう」
「名探偵ならここで真犯人は!とかそういう展開に持っていくべきなんじゃないの」
その問いに探偵は少し照れくさそうに、はにかむとこう答えた。
「お恥かしげながらその通りです。なのでわたくし、今だ探偵4級なのですよ。」


●PM6:00 顛末
そして何事もなかったように学園に朝が来る。
朝日を受けながら
生徒会長ジョン・雪成が大観―希望崎産コシヒカリ―を見やる。
「大観。やはりの『開かずの闇花壇』に戻るのか」
「うむ、わしも初代園芸部長と同じ結論じゃ。まだ人類にコシヒカリは早すぎる。
ただワシは部長と違い、惰眠をむさぼっとるだけじゃ。ちょと期間が長い休眠よのお」
言葉と裏腹にそこには果てしない憂いが感じられた。やはり、この男をしても新潟の
脅威は御しがたい危険な存在なのだ、と。
まあ、その割にさっきから魔法少女は希望崎産コシヒカリの背中に飛び乗って頭ぺしぺし
叩いているし、探偵はちょっとサンプル採取していいですかとかピンセット取り出してるし
全然緊張感がなかった。
こ、こいつら五大災厄なんだと思ってやがる…。今更過ぎる感想だった。
ちなみに二人の生徒会への報酬は
  • のもじが今後やらかしたフルソンブリンクに関しては直接被害がでない限り不問にする。
  • 以降の希望崎学園内の活動許可
だった。無論、快諾した。屁でもない。
生徒会長は希望崎産コシヒカリに改め向きなおった。
「約束通り、晴観、お前を始め”今回の殉職者達”の葬儀は盛大に弔う。ただし晴観の
遺体は秘密裏に闇花壇の隣に埋葬する、それでいいな」
「すまんな最後まで感傷じみた真似をして。こっちは本当に捨て置いてもらって構わんじゃきぃ」
生徒会長は五大災厄の手を取るとあらん限りの力で強く握りしめた。
「いいかよく聞け、この植物野郎!
お前は俺達をよほど恩知らずにしたいようだな
我々と貴様はずっ友だ。次の、次の次の、次の次の次の生徒会長も…未来永劫ずっとだ。
そうやってな、お前のことを語り続けてやるぞ。」
「まあ、今回の恩忘れるような薄情もんなら人類滅んじゃったほうがいいかもね。」
「キヨコどの、お前さんに関しては100年後に顔出しても、平然とそのまんまの姿でいそうじゃがの」
全員が珍妙な顔で見つめ合い、誰かがぷっと吹き出した
それは大きな笑いとなって、風に流れて行った。
そんな中、名探偵アヤメは、立ちあがり慇懃に挨拶を行う。
「それではみなさん、どうやら今が、良き旅立ちの日のようです。
わたくしはこれにてお別れとさせていただきます。
それぞれの旅立ちの先に良き稔がありますよう祈っております。」
そういい彼女、名探偵アヤメは、現れたときのように颯爽と旅立って行った。
次の目的地に向け。
                          (SSRエピローグ『遠藤アヤメの人間迷宮』へと続く)