【メモ】Shade PBRハンドブック

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Shade PBRハンドブック

もくじ

  • 表面材質
    • 光と物体表面の相互作用
      • 屈折(Reflaction)
        • 屈折率
          • 複素屈折率
          • アッベ数
      • 鏡面反射(Specular Reflection)
        • フレネル反射
        • 荒さ
        • (コラム)NDF
    • 光と媒質の相互作用
      • 吸収(Absorption)
      • 散乱(Scattering)
        • シングルスキャッタリング
        • サブサーフェススキャッタリング
        • 拡散反射
    • 反射特性のモデル化
      • Shadeにおける反射率の取り扱い
      • 金属表面における反射
      • 非金属表面における反射
      • 透明な境界面
      • 関与媒質
      • 例題
  • リニアワークフロー
    • 色空間
      • sRGB色空間
        • ガンマ補正
      • XYZ色空間
    • 資料写真
      • 撮影環境
      • Linear RAW
      • (コラム)スペキュラーの除去
  • カメラエフェクト
    • EV(Exposure Value)
      • 写真の明るさの3要素
        • ISO感度
        • F値
        • 露光時間
      • Shadeにおける照度とピクセル輝度
    • ボケ(Defocus Blur)
      • カメラの構造とボケ
      • Shadeにおける分散とF値
    • 光量落ち(Peripheral Vision Loss)
      • 光量落ち
      • 光量落ちシミュレーション
    • 回折(Aperture Diffraction)
      • 回折光の物理
      • 回折シミュレーション
    • トーンマッピング(Tone Mapping)
      • トーンマッピング
        • Liner
        • Exposure
        • Reinhard
      • Exposureシミュレーション
      • Reinhardオペレータ
    • ホワイトバランス(White Balance)
      • ホワイトバランス
      • ホワイトバランス変換
  • レンダリングアルゴリズム
    • パストレーシング
      • イラディアンスキャッシュ
    • フォトンマッピング
  • 参考文献

表面材質

  • 表面材質はオブジェクトの質感を表現するプロパティである.
  • 表面材質は物体に入射した光がどの方向にどれだけ反射されるかという物体の反射特性(コンピュータグラフィックスの世界ではBRDFと呼ばれる)を表している.
  • この章では反射特性に関する物理と,Shade上でのモデル化について述べる.

光と物体表面の相互作用

  • 表面とは何ぞや?…なんだろ?

屈折(Reflaction)
  • ある境界面に光が入射するとき,光は屈折する.
  • 入射角と屈折角は,入射側の屈折率n_\mathrm{A}と屈折側の屈折率n_\mathrm{B}を用いて以下の式で表される.
  • \frac{\sin \theta_\mathrm{A}}{\sin \theta_\mathrm{B}} = \frac{n_\mathrm{B}}{n_\mathrm{A}}
  • これをスネルの法則と言う.
  • n_\mathrm{A}n_\mathrm{B}を媒質の絶対屈折率と呼ぶ.
  • n_\mathrm{B}/n_\mathrm{A}を媒質Bの,媒質Aに対する相対屈折率と呼ぶ.
  • 通常,媒質Aとは空気である.
  • 空気の屈折率はn_\mathrm{A}=1とみなせるため,n_\mathrm{B}n_\mathrm{B}/n_\mathrm{A}はあまり区別せずに論じられることがある.
  • 相対屈折率が1未満のときは,スネルの法則を満たす屈折角\theta_\mathrm{B}が存在しない領域がある.
  • この領域では,屈折光は存在しない.
  • 屈折できなかった光は反射光になる.
  • \theta_\mathrm{B}が存在しない領域で,入射した光が全て反射される現象を全反射と言う.

複素屈折率
  • 媒質は多かれ少なかれ光を吸収する性質を持つ.
  • 屈折率nに吸収特性を表す虚部kを加えた量を複素屈折率と呼ぶ.
  • 複素屈折率m = n - ik
  • 屈折率の虚部とはすなわち「光は虚数空間に向かって屈折したので見えなくなりました」という項である.
  • 多くの物質では複素屈折率の虚部は非常に小さいため,無視しても見た目に影響しない.
  • ところが,金属は例外的に大きな虚部を持つため,複素屈折率は専ら金属の反射特性を表すために用いられる.

アッベ数
  • アッベ数は媒質の屈折率の波長依存性の指標である.
  • 多くの媒質の屈折率の波長依存性は小さく,通常は無視できる.
  • 虹やカメラの色収差など時に大きな影響を及ぼす.
  • アッベ数\nu_\mathrm{d}は以下の式で定義される.
  • \nu_\mathrm{d} = \frac{n_\mathrm{d} - 1}{n_\mathrm{F} - n_\mathrm{c}}
  • ここに,n_\mathrm{d}: 波長587.56nmの光に対する屈折率,n_\mathrm{F}: 波長486.1nmの光に対する屈折率,n_\mathrm{C}: 波長656.3nmの光に対する屈折率.
  • まったく色分散のない材料は分母が0になる.しなわち,アッベ数が大きいほど色分散が小さいことを示している.
  • 媒質の屈折特性はReflactive Index.infoによくまとめられている.

鏡面反射(Reflection)
  • 境界面に光が進入するとき,屈折して媒質に進入しなかった光は反射の法則に従って反射される.
  • 反射の法則は単純で,入射角と反射角は常に等しい.
  • スネルの法則は屈折光がどちらへ向かうかを説明しているが,入射光の何割が屈折光になるか(=何割が反射光になるか)は説明していない.
フレネル反射
  • 物体表面での光の反射率はフレネルの法則にまとめられている.
  • r = \frac{1}{2} \left[ \left( \frac{n \cos \theta - \cos \varphi}{n \cos \theta + \cos \varphi} \right)^2 + \left( \frac{\cos \theta - n \cos \varphi}{\cos \theta + n \cos \varphi} \right)^2 \right]
  • t = n \frac{1}{2} \frac{\cos \varphi}{\cos \theta} \left[ \left( \frac{2 \cos \theta}{n \cos \theta + \cos \varphi} \right)^2 + \left( \frac{2 \cos \theta}{\cos \theta + n \cos \varphi} \right)^2 \right]
  • とても複雑である.
  • 2項を足して2で割る形式になっているのは,偏光成分の垂直偏光と水平偏光を別々に計算して,影響を平均しているためである.
  • もう一つ,tの方だけn \cos \varphi / \cos \thetaなる係数がかかっているのは,屈折すると光が狭い範囲に集められたり(n > 1のとき),広い範囲に分散したり(n < 1のとき)するので,ある入射角と屈折角の関係だけを見ると,屈折によって光が増えた(減った)ように見えることがあるためである.
  • 偏光のない光に対するフレネル反射率rはシュリックの式で近似できる.
  • r(\theta) = r_0 + (1 - r_0) (1 - \cos \theta )^5
  • ここにr_0 = \left( \frac{n-1}{n+1} \right)^2
  • フレネルの式とシュリックの式のプロットを示す.シュリックの式がフレネルの式の良い近似であることが解ると思う.
  • 境界面に垂直入射する光の透過率t_0は,屈折率が虚部を持たないときはt_0 = 1 - r_0である.
  • 屈折率が虚部を持つ場合まで含めれば,透過率は同様にフレネルの式からt_0 = n \left( \frac{1}{n + 1} \right)^2

粗さ
  • 一般に物体表面は平滑ではなく,入射した光の反射・屈折方向には乱れが生じる.
  • ミクロに見れば,やはり光はスネルの法則に従って反射と屈折を起こす.
  • コンピュータグラフィックスではこれを,反射光が正反射の向きを中心とした所定の範囲に分散されるというモデルで表す.

(コラム)NDF
  • 表面の粗さによる光の分散を記述するために,マイクロファセットモデルというモデルが研究されている.
  • マイクロファセットの肝は表面の粗さによる法線のばらつきを,法線分布関数(NDF)と呼ばれる関数でモデル化することにある.
  • NDFは
  • Blinn-Phong
  • Beckmann
  • GGX
  • などが有名である[Hoffman].
  • Shadeの粗さモデルはBlinn-Phongモデルに近い.

参考文献

タグ:

Shade
最終更新:2015年04月12日 10:54