2011年 総評案7

2011総評案7 大賞:学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~


クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 28本目
134 名前: 2011総評7 1/12 ◆PAP76nfaQs [sage] 投稿日: 2012/02/12(日) 13:02:59.59 ID:eGGt/Oj00
2010年はKOTYeにとって受難の年だった。
大作のガッカリ化、倫理的問題に寄り過ぎたハジけ足りないノミネート作、どうしても過去二作と比較されてしまう大賞作。
偉大なる先人の後塵を拝した宿命か、どこか満たされない思いを抱いたまま2011年は始まった。

一番槍を務めたのは前年末『熟処女』でスレを沸かせたばかりのHammerheadsの本元、ミュスカデの『令嬢の秘蜜』である。
本作はセレブ系インモラルADVを謳っているが、インモラル要素はあってないようなもの。
ヒロインの一人が義父との子という設定は最後まで活かされる事はなく、そもそも夫も義父も最後まで出てこない。
セレブさに関してはHシーンの導入がほぼ全て「媚薬入りの紅茶を飲むか飲ませる」というあたりに僅かにセレブを感じ取れるのみである。
まぁ、抜きゲーである為シナリオ上の問題はまだ目を瞑るとしよう。だが、だからこそエロの手抜きは許されない。
だというのに、『熟処女』で問題となったエロシーンでのミスを本作でもまたやってしまっているのである。
杜撰な誤字、文章とCGの状況が合わない、とあるシーンでほとんどのセリフの音声がNGかブツ切りの二種になる、
シーン転換バグにより3P中にいきなり相手が変わる、この為見られないシーンができてしまいCG達成率100%が不可、
そして極め付けが本番やフェラシーンでは最初から精液が飛び出しておりCG差分が一切なしという驚愕の「仕様」である。
このように低価格ソフトだからまだ許された事をフルプライスでやってしまった本作は、OHPのタイトル表記やBGMが全て
「令嬢の秘『密』」になっている等のやる気のなさと相まって、2011の先鋒として媚薬入り紅茶と共に住人達に迎え入れられた。

続いて春先には3Dの雄・TEATIMEから『修羅恋~SeeYouLover~』が現れる。
本作の売りはその名の通り「女の子が自分を取り合って罵り合い、多彩な技でリアルファイトするのを鑑賞する」という点にあり
もうコンセプトの時点からして火薬の匂いしかしない代物なのだが、その威力の程は想像を遥かに上回るものであった。
シナリオは冒頭でチャラ夫が二股したのがばれてフラれる様を見届けた後は何一つ語られることは無く、会話の内容も全くと言っていいほど中身がない。
システムはローポリゴンの街並みをスケート移動しているヒロイン達に話しかけて好感度を上げていくというナンパ系ADVなのだが
出会った直後から胸を触ってもキスをしても怒ることはなく、話しかけて別れて即また話しかけるを繰り返せば30秒足らずで好感度がカンストする。
お邪魔キャラのチャラ夫は接触しただけで会話テキストも無しに殴りかかってくる理不尽極まる真性のチンピラではあるが
街中で女の子に向けて紫色の精液を3秒/発でFPSばりに発射する主人公に比べればまだ正気と言えるだろう。
そして肝心の修羅場は敬語や無口なキャラまでもが「ドブで体洗ってる不潔女……近寄んな!」「ケツフリまくってるメスがぁっ、ミンチにでもなってろぉぉ!」等の
口汚い罵倒を全く噛み合わないままに吐きあった挙句、躍動感の無いヤクザキックやパチキ・サマーソルト等の応酬の末に負けたほうは路上で足蹴にされるといった
わかっちゃいたけど実際見ると想像以上にどうしようもない、百年の恋も一発で覚めるようなシュールな茶番となっている。
結論として攻略には2時間もあれば十分でそれ以前にまず飽きるというそこらの同人3Dゲーのほうがまだ遊べるレベルの適当極まる作品であり、
いくら見え透いた地雷とはいえ実際に踏んだら痛いものだという当たり前の事実を改めて教えてくれるクソゲーだった。

春先の大物といえばKLEINの『勇者と彼女に花束を』も忘れてはならない。
元よりここは絵と音楽だけはいいという地雷の枕詞を体現したようなメーカーで、何度開発してもシステム不良を起こす等学習能力の低さには定評がある。
本作も体験版からして極小の音量や誤字・エラー落ち等の硝煙の匂いを漂わせていたが、此度もそれは予想通りだった。
体験版の問題点が全く改善されていない上にセーブやバックログが右クリックメニューからしかできない不親切なシステム、
語彙が貧弱で文章になってない箇所も散見されるテキスト、設定を聞けば誰でも予想できる同人レベルの稚拙なストーリー、
どのルートもやたら短く要点とご都合主義だけで進む起伏も感動も伏線もない極薄のカルピスのようなシナリオ構成、
そしてBGMや音声の消失・テキストと音声の不一致・選択肢の無限ループ・イベントCGに立ち絵が被る・一部ルートが進行不可・EXTRA(鑑賞モード)が解放されない
といった膨大なバグ等々、ノベルゲーと聞いておよそ思いつく限りの難点を搭載したクソ要素のフルオープンアタックとでも言うべき地雷っぷりである。
……が、この時点では良く言えば本作もただの核地雷止まりであり、真の意味でスレを沸かせるのはパッチを当ててからであった。
アップデートするとあるヒロインの立ち絵が全面的に差し替えられるのだが、これが胸が萎んだり目が巨大化したり等身が変わったりと
原画が変わったのかと勘繰る程に絵柄が違い、正直劣化といって差し支えないレベルなのだ。
ならパッチを当てなければと思われるだろうが、そうすると今度は進行不可バグやEXTRA未開放バグが残ってしまうのである。
パッチありでも一部CGが登録されない等バグが完全に駆逐されるわけではなく、ユーザーはどっちに転んでも嫌な二者択一を迫られることとなる。
極め付けに、このパッチは体験版に当てるとなんとエンディングまでプレイできてしまうというバグまで存在する。
流石に一部CGは表示されないしEXTRAも見れない不完全版ではあるが、高い金を払った正規ユーザーにしてみれば憤懣やるかたない思いだろう。
このように本作は例え特徴のない地雷でも細かい積み重ねとひとつのチャンスさえあればクソゲーとして名を馳せることができる事を教えてくれ、
単純なノベルゲーとしては2011でも最高峰にあたるクソゲーとスレでは崇められることとなった。

2011序盤はこの通り一筋縄ではいかないクソゲーもあったものの、他の話題作はというと
プレイを妨げる要素こそ無いが700MB弱というCD並の容量・心理描写など投げ捨てたシナリオ・文章との整合性を無視したCG・
リアル学生ばりに素人くさい演技などあらゆる面が低クオリティの安心してプレイできる正統派クソゲー『コイ★カツ』、
ブラコンのはずの実妹のルートに入ると突如主人公が別の人物に変わり、エロゲ的ご都合主義をNTR側から味わえ
おまけシナリオでは「そんなに実妹がよけりゃヨスガにソラってろ」と煽られるねこねこソフトの『White -blanche comme la lune-』、
主題のはずの転校話はプロローグで取り消されるわパッチ無しだと一人しか攻略できないわCG数は前作以下の61枚だわ誤字やNG音声は多数だわ
朝~昼を「短針が四周」と表現するわと、どこを取っても手抜き感満載のパープルソフトウェアdelightの『PrimaryStep』など、
手抜きや宣伝詐欺や未完成商法といった良くも悪くもKOTYeらしい作品が多く、訓練された住人達にしてみれば若干食傷気味であった。
また、この時期は大手大作のガッカリゲーでスレが荒れたこともあり、住人達は昨年から続くこの悶々とした空気を吹き飛ばす一本を今か今かと待ち望んでいた。

そんな中、5月の終わりに季節外れの台風と共にスレに現れたのがTEATIME二本目となる『恋愛+H』である。
これは予想に違わず某国民的GFを模した3Dゲーで、日常パートで攻略したヒロインと「熱愛モード」で色々なHが楽しめるというものだが、セーブができない。
攻略がノーヒントで、一部環境ではじゃんけんに負けると即フリーズというカイジも真っ青なシステムでありながら、セーブ機能が存在しないのである。
日常パートは長くてもせいぜい3時間程度、一度クリアさえしてしまえば最初から熱愛モードに入れるとはいえ、
この大容量化の時代にセーブなしという仕様にスレ住人のことごとくが度肝を抜かれた事は言うまでもない。
しかも肝心のエロシーンの出来も惨憺たるものである。毎回細かいエディットを設定しなければならず、カメラワークの悪さやピストンロックが無い等
3Dエロゲーとしての出来は悪く、特に通常シーンではぷるんぷるん揺れていたおっぱいがエロシーンになると石膏のように微動だにしなくなるのは誰もが突っ込んだ。
更にフィールドには自室やラブホテル等が存在するのになぜかHは屋外でしかできず、体位やプレイ内容は選択の余地なくランダムで決定される。
そのせいで『初体験でいきなり青姦で足コキされた』『さっきまで清純だった彼女がエロシーンでいきなりチンポを連呼するドSに』等、
いともたやすく行われる変態行為の報告が続出し、何とかここまで辿り着いた強者ユーザーをも唖然とさせた。
これは元々性格によって反応が変わるというシステムだったのが実装できなくなったためという説が有力であり、
発売当時OHP上に乱舞していた「開発の都合上できなくなりました。ごめんね。」という一文がそれを裏付ける。
実際にOHPとげっちゅ屋の紹介ページを見比べるとどれだけの仕様が削られたのかがよく理解できるようになっており、
これらの問題の前では音声バグやシナリオの破綻について作品スレにライターが降臨したことなど大した問題として扱われないほどであった。
後に出たパッチで一枠のみながらセーブ機能が追加・石膏おっぱいの改善など多少はマシになったものの、それでもその爆発力は傑出しており
抜群に可愛いモデリングに惹かれ『修羅恋』でクソを出した後だから今度は大丈夫だと油断して誘われた信者を余す事無く焼き尽くした誘蛾灯の如き化け物である。
TEATIMEは年末に別ブランドから出した『肉体契約書』も「ボリュームは少なくロードは膨大」と不評で結局一年を通じて汚名を撒き散らす事となってしまい、
一方で3Dの片翼・イリュージョンの『ジンコウガクエン』が素材の出来やインターフェースは最悪なのにユーザーの遊び心次第で18禁ガンパレとして弄り倒せることで
一部の層から絶賛されたという対照的な事例と相まって、「3Dエロゲーにとって大切なものは何か」ということを考えさせられることになった。

そして恐ろしいことに、魔物は一匹ではなかった。同日にコンプリーツの『まままーじゃん』が二年以上の延期を経て発売されていたのである。
これは一見するとただの熟女三人との四人打ち脱衣麻雀である。ルールは半荘一回で最下位になった人が一枚脱ぎ、四枚で全裸。
Hシーンを見るにはまず全員を脱がしきる必要があり、更に二回最下位にすると本番となりゲームクリアという仕様である。
……賢明な読者諸氏は既にお気付きだろう。つまり本番までは最低でも半荘14回、全員見るには42回必要なのである。
麻雀を知らない方に簡単に説明すると、半荘一回は原則8ゲーム1セット。ゲームの場合時間にして平均15~20分くらいだろうか。
14回というのも勿論理論値であり、実際は一人見るのに20回程度はかかるだろう。全員脱がしたとしても狙い通りの相手を負かせるとも限らない。
しかも本作には中断セーブやコンティニュー機能が存在せず、CGモードはあるが回想モードは存在しない。
すなわちエロシーンが見たければいちいち数時間をかけて勝ち抜く必要があり、下手に負けることも許されないのである。
また、麻雀ゲーとしての出来も悪い意味で決して見逃せない。
まず脱衣麻雀にはお馴染みの積み込み等のイカサマは存在せず、昨今珍しいチョンボ(ルールを間違えた時のペナルティ)ありなど完全な初心者お断り仕様。
そのくせ清一が数え役満になるなど点数計算が明らかにおかしいうえ、システムも不安定なため常にフリーズの危険が付きまとう。
バグも豊富でかの七英雄が一人『ジャンライン』が誇る「亜空カン」までもが確認された時には流石に驚きを禁じ得なかった。
同じ麻雀でも年始に出た『雀極姫』が「不満は多数あるが麻雀ってゲームは偉大だなってことに全て救われてる」と評されたの対し、
本作のこの賽の河原の石積みのような苦行っぷりは「超えてはならない一線<ジャンライン>を無造作に踏みつけていく」とまでうたわれた。
流石にこの仕様は大不評だったために発売後一週間でセーブ・コンティニュー・回想モード追加パッチは出たものの、
一瞬ながら嵐の如く大暴れしたこの魔物は住人達に忘れ難い印象を与えたのだった。

この二匹の魔物に加え、発売日である5/27には時を同じくして
序盤の厳しすぎるゲームバランスとマウス非対応・遅すぎる移動等の劣悪な操作性でユーザーを苦しめた
ソフトハウスsealの『変態勇者の中出し英雄記』
一見新規ブランドのデビュー作だがその正体はアーベルの別ブランドで中身はお察しといった感じである
FIANCEEの『美衣菜△です!-Loveイチャ同居生活のススメ-』
出来は良いもののHシーンの4割強がうんこまみれという事が隠されていた超級者以外お断りの臭い立つ糞ゲー
Empressの『STARLESS』が一度に世に出ており、
これらは総称して「五惨家」と呼ばれ住人達から絶大な支持を受けた。

五惨家の登場によりスレでは並の地雷では歯牙にもかけられなくなったものの、しかしそれを易々と踏み越えてこその常連。
お馴染アーベルソフトウェアの『ゾンビの同級生はプリンセス -不死人ディテクティブ-』の登場である。
「謎の殺人鬼に殺された主人公が魔界の王女のネクロマンシーでゾンビとして蘇り犯人を捜すため怪事件を追う」という
物凄くどこかで聞いた覚えのあるあらすじの本作だが、その程度はアーベルだから今更驚くことでもない。
問題なのは「探偵ハイパーリンク・システム」である。これは作中で表示された重要ワードをクリックすることで
Tipや視点移動が発生し進行するというシステムなのだが、バックログが適応されないという致命的な欠陥がある。
もしジャンプ点を読み飛ばしたりクリックの際にカーソルがずれたりでもしようものならその地点までやり直さなければならず、
加えてスキップ時に自動で止まるという気の利いた機能も無い為、一度読んだ文章を一回一回注意深くクリックし続けなければならないという
地味ながらノベルゲーで一番勘弁してほしい類の不毛なストレスを強いられるのである。
視点が飛ぶ先もメインキャラも把握しきっていない序盤から端役から端役へと移るため話を無駄にややこしくしており、
その一方で戦闘シーンは敵の台詞が「チッ」×三回のみの14クリックで終了と力を割くべきところを明らかに間違えていると言わざるを得ない。
実際に二話からは完全一本道になってしまっている上、なんと本編はその特に長いわけでもない二話で終了。
恒例のアドオンを当てても三話で完結と、『デュアル・エム』すら下回りアーベル史上最短記録を更新してしまった。
総じて見るといつものアーベルの範疇を逸脱しない出来ではあり、話の出来そのものも比較的マシな部類でありながら
歴代最小のボリュームと最大のストレスを併せ持つクソゲーメーカーアーベルの集大成とも言える作品になってしまった。
また、余談ではあるが本作の開発中にアーベル社長の菅野氏が突然意識を失い、気付いたら病院のベッドの上で一ヶ月が経っていたという不幸があり
それが本作の開発に暗い影を落としたことは疑いようもなかったという事も述べておく。

この通り本年は現時点で既に昨年が嘘のような豊作ぶりであり、この後は
「蜘蛛娘とチュッチュしようとしたら茶筒とセックスしていた」というPoison@Berryの『プリンセスX~僕の許嫁はモンスターっ娘!?~』が
賛否分かれて荒れるような騒ぎはあったものの、大方の住人はもう今年一年分は騒げたから良しとそれなりに満足していた。


……故に、これらを易々と乗り越える超特大の化物の登場など一体誰が予想し得ただろうか。
年末より一足早く、ソフトハウスsealが『変態勇者』に次ぎ世に送り出した低価格RPG第二弾。
『学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~』が現れた。

今度の作品はダンジョンRPGなのだが、パッケージ版はまずダンジョンに潜ろうとするとバグでゲームが止まると掴みは上々。
……この製品失格レベルのバグが「掴み」に過ぎないという事をまず最初に承知して頂いてから順に問題点を挙げていこう。

まず第一に素材。OHPのサンプル画像と見比べてみるとわかるのだが、画面内情報が激減しているのがわかる。
探索画面では所持金・場所名・ちびキャラが、戦闘画面では背景・スキルと必殺技の種類・スキル消費EP・ウインドウ内での敵の名称・
行動順バーがそれに当たり、特に何も表示されない行動順バーが画面右側を大きく占拠しウインドウを突き破った文字がはみ出ているという様は
納期が足りなければ他の全てが削られてゆくという現実を我々にまざまざと見せつけてくれた。

第二にシステム。『変態勇者』の反省からか、今回はマウスで「しか」操作できない。移動もコマンドやターゲットの選択も全部マウスである。
これを初めとして、戦闘では最初から習得スキルが全部表示されているのに肝心の効果や消費EPがわからない・状態異常が表示されず戦闘後回復もしない、
探索では階段が表示されない・階段のある通路を通ると勝手に階を移動してしまう・もちろんオートマップ機能やワープゾーンなんてない、
メニューでは回復時にHPやEPが表示されない・装備変更時に現在の装備や持っている数やステータスの変動が見れない、
店では装備品の効果がわからない・ワンクリックで確認なしで買ってしまう・アイテムのまとめ買いができない、
などなど全編通してかゆいところに手が届かなくなっており、最初から最後まで地味に苛んでくれる。

第三にバランス。本作はレベル上昇による成長がHPとSP以外見込めず、攻撃スキルは全て無属性+ダメージ固定で序盤以外は力不足となるため
キャラの強化は装備による依存度が極めて高く、ワンランク上の武器を装備しただけでダメージが数倍に跳ね上がる。
スキルも序盤の全体攻撃等はまだ使い出があるものの、最初の回復技が単体300回復で次に覚えるスキルが全体2500回復、
同じレベルで覚える攻撃技が片や単体600ダメージで片や全体3000ダメージだったりとバランスというものをブン投げている節がある。
また戦闘では素早さの重要性がむやみに高く、鈍足の先輩に行動順が回るまでに俊足の妹が2回行動するなんてことはザラ。
加えて5階にある最初の店から買える最強武器は妹のものに限り素早さに強烈な補正がかかり、攻撃力も全武器中最強のため
少し頑張って稼げば戦闘開始即3回行動で瞬殺という無双プレイが可能となり、先輩に行動順が巡ってくる事は殆どなくなる。
……というより、終盤になると敵が全体大ダメージ+麻痺攻撃などを連発してくるためそれ以外の戦術が通用しなくなるといったほうが正しい。
このようなドンブリにも程がある調整と身も蓋もない戦術性から、本作の攻略は先人に倣って「お金を貯めて装備で殴れ」の一言で片づけられてしまっている。

そして最後にバグ。最初の強制終了もさることながら、本作では「表示と実際の効果が一致しない」という状況がとにかく多い。
HPバーと実際の数値が連動しない、マップの地形と進める方向が一致しない、状態異常無効など装備品の効果が現れない、敵の名前がスキル使用時に変わっている、
メニュー画面だと蘇生アイテムを使っても回復せずに数だけ減る、同様に状態異常回復アイテムを使うと蘇生アイテムが減る、
全体守備力アップスキルのバリアシールドを使うと守備力ではなく全員のEPが回復し、しかも上限値を超えて増え続ける等々。
またそれ以外にも、戦闘中にタイトルに戻るとロード時にゲーム終了時に戦っていた敵といきなり戦闘になるというバグも存在する。
これはボスも例外ではなく、全データに適用されるためロードと同時に中ボスが現れ詰んだという七英雄やウィーグラフの悪夢が蘇った者もいた。
……これらの要素が複合した結果、「野生で」「瀕死のラスボスが現れ」「逃げたらゲームクリアになった」というあまりにも面白すぎる状況が生まれてしまった。
流石に最後のバグはパッチで修正されたものの、ゲーム史上でも屈指の珍妙なバグとして末代まで語り継がれるのは間違いないだろう。

しかしこれだけの数々の問題点を抱えていながら、メーカースレでは悲鳴こそ絶えないものの皆どこか楽しげだったのが印象深い。
エロに関しては従来の水準を守っており攻略自体も不可能ではないため本質的な不満は出なかった事に加え、
プレイする度に新しい珍現象が発見されることから「完成度1%のロマサガをやってるみたい」との声まで上がったくらいである。
sealはこれから年末までのわずか一月の間に、RPG要素が『学園迷宮』より単純なのにより面倒くさいシステムと攻略不可バグを搭載し
不満点が「なぜ RPGに したし」の三語で語られてしまった『淫刻の虜姫 ~囚われた没落の姫姉妹、淫教の果てに~ 』、
探索要素が異常なまでに難しい『世にも気持ちいい学園の快談~オバケになってあの娘に仕返し!~』を立て続けに発売している。
この一挙加勢の前では、従来の素材流用やアペンドに加え黒背景・テキスト流用・イベントCG流用という他社の大技まで吸収した
アーベルの『魔法少女と恋+』ですら霞んでしまったのも無理からぬ事であり、一躍KOTYeのスターダムへとのし上がったsealとの世代交代を感じさせた。


それでは、紹介を終えたところで今年の受賞作を発表する。
次点には

『勇者と彼女に花束を』
『恋愛+H』
『ゾンビの同級生はプリンセス -不死人ディテクティブ-』

そして大賞は

『学園迷宮エロはぷにんぐ! ~イクぜ!性技のダンジョン攻略~』

とする。

今回は過去に類を見ないほどの大豊作であり、次点以上は昨年であれば確実に大賞をさらっていたであろう逸材揃いである。
だが、そんな中でも『学園迷宮』の存在感は群を抜いていたと言わざるを得ない。
そもそもsealは玉石混合の数打ちながらエロに関しては一定の評価があるブランドであり、『学園迷宮』も普通のノベルゲーとして出していれば
それなりの評価は得られたであろうにも関わらず、低価格帯でRPGという無茶に挑戦して見事爆砕した本作の
「やる気だけはあるけど他の全てが足りなかった」という姿勢はかつて我々を楽しませてくれた伝説のクソゲー達を思い出させる。
加えて溢れ出る数々のネタ、エロゲとして大切な一線は越えない矜持、何よりプレイヤー達が苦笑いながらも皆笑っているという
愛されるクソゲーが押さえるべき点を本作は全て押さえており、クソゲーの鑑と呼ぶに相応しい代物であるとして晴れて今回の受賞と相成った。
クソゲー界隈には「クソゲーはやるのは最高につまらないが語るのは最高に面白い」という言葉があるのだが、
アイ惨が「最悪のクソゲー」だとするのなら、本作は正に「最高のクソゲー」と称するに値するだろう。

2011年は数多の強豪が鎬を削ったKOTYe史上に残る群雄割拠の年となった。
五惨家の存在や超新星ソフトハウスsealの登場は言わずもがな、古豪は素材流用や未完成商法などの従来のクソ要素の集大成を、
新参達は体験版製品化やセーブ不可などの新しい切り口から瑞々しいクソ要素を見せてくれた。
また、アーベルやミュスカデ・パープルソフトウェアdelight等が汚名を挽回する一方で
昨年の覇者ういんどみるは『Hyper→Highspeed→Genius』で名誉を挽回しており、
かつて次点を輩出したLeafやフロントウイングも『White Album2』『グリザイアの果実』といった極めて評価の高い作品を出している。
また本家パープルの『未来ノスタルジア』やきゃんでぃそふとの『つよきす三学期』が大方の予想に反して良作評価を受けたり、
更にはシリーズを経る毎に内容を少しずつ改善してゆき、今回ついに「大帝国よりも面白い」という声さえも挙がった『戦極姫3』の存在などもあって、
来る者も去る者も大きく動いたKOTYeにとってひとつの節目の年と言えるだろう。

……そして、この場を借りてある人物のことを語ることをお許し頂きたい。
去るクリスマスの夜、アーベルソフトウェアの社長でありシナリオライターでもある管野ひろゆき氏の訃報が伝えられた。
アーベルといえば昨今ではKOTYeの看板として知られ、最近は住人の間でも「ただ不誠実なだけの唾棄すべきクソゲー」と言われていた。
だが、かつて氏が手掛けた作品達ははまぎれもなくエロゲ史上にその名を刻む傑作であり、中でも『この世の果てで恋を歌う少女YU-NO』は
ADVの一つの完成系として名高く、今でもエロゲの最高傑作を挙げようといえば必ず『YU-NO』の名前は出てくるのである。
たとえその晩節が綺麗なものでなかったとしても、数多の名作を残しゲームというものを確実に進化させ、
何だかんだでこのスレも幾度となく盛り上げてくれた偉大なクリエイターが居たこと我々は決して忘れてはならない。
KOTYe住人として、そして一介のゲーマーとして、今までの感謝を込めて心よりご冥福をお祈り致します。

最後に、氏の代表作のひとつである『EVE burst errer』より名言をお借りすることで、2011クソゲーオブザイヤーinエロゲー板を締めくくろうと思う。

「クソゲーっていうのは勢いと苦笑いに裏付けられた立派な娯楽なんだぜ」

※2/14 誤字脱字等を修正しました。----
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最終更新:2014年08月02日 22:18